「古物商」は、「古物営業法」に定められた「古物」の買取・販売、交換、レンタルを商売として行なう業者・個人のことです。この古物営業を行なうには、「古物商許可証」が必要となります。「日本刀」を専門に取り扱う「刀剣商」(刀剣店・刀剣ショップ・刀屋)も古物商です。 古物商とは、具体的にはどのような店舗で、どんな種類があるのでしょうか。古物商に欠かせない資格の申請・許可の流れも含めて見ていきましょう。また、日本刀を売却・購入するときに、古物商の中でも特に刀剣商(刀剣店・刀剣ショップ・刀屋)を利用するべき理由についても解説していきます。
「古物」とは、「1度でも使用された物品」、「新品でも使用するために取引された物品」、「これらに少し手入れをした物品」のこと。
「古物営業法 第2条第1項」で下記のように定義されています。
一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類[船舶、航空機、工作機械その他これらに類する物をいう。]で政令で定めるものを除く。以下同じ。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。
つまり、一般の消費者が使うために店舗などから購入した物や、他の人から譲り受けた物は、実際に使用したかどうかにかかわらず、原則として「古物営業法」の古物にあたるのです。「祖父母から受け継いだ日本刀」、「家の蔵に保管されていた日本刀」なども古物になります。
ただし、航空機や鉄道車両、20t以上の船舶、5tを超える機械、固定されて取り外しできない1t以上の機械などは例外です。また、投機目的の金、銀、プラチナなどのインゴットや、化粧品、医薬品、お酒、金属原材料、洋服をバッグに作り直すなどしたリメイク品等も古物営業法の古物には当てはまりません。
古物商に必要な資格である「古物商許可」の中には13種類の「品目」があり、古物商許可を申請する際に、扱う商品に合わせて選択します。品目の種類は次の通りです。
古物商許可の品物 | ||
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1 | 美術品類 | 絵画、書、彫刻、工芸品、 登録日本刀、登録火縄銃 |
2 | 衣類 | 洋服、着物、その他衣料品、 敷物類、布団、旗 |
3 | 時計・宝飾品 | 腕時計、宝石類、貴金属類、眼鏡 |
4 | 自動車 | 自動車とその部品類、 タイヤ、カーナビなど |
5 | 自動二輪車・原動機付自転車 | オートバイ・原付とその部品類、 タイヤ、サイドミラーなど |
6 | 自転車類 | 自転車とその部品類、 空気入れ、かごなど |
7 | 写真機類 | カメラ、レンズ、ビデオカメラ、 望遠鏡、双眼鏡、光学機器 |
8 | 事務機器類 | パソコン、コピー機、ファックス、 シュレッダー、レジスター、計算機 |
9 | 機械工具類 | 家庭電化製品、家庭用ゲーム機、 電話機、工作機械、土木機械 |
10 | 道具類 | 家具、楽器、CD、DVD、運動用具、 ゲームソフト、玩具類、日用雑貨 |
11 | 皮革・ゴム製品 | バッグ、靴、毛皮類 |
12 | 書籍 | 古書 |
13 | 金券類 | 商品券、郵便切手、乗車券、 航空券、各種入場券 |
この中から、1種類または複数の品目を選んで申請することができます。あとから品目を追加することも可能ですが、13種類すべてを選ぶことはできません。1の美術品類は、美術的価値を持つ物品のことを指し、日本刀や刀装具、火縄銃などもこの品目に入ります。それらの日本刀・火縄銃は、「銃砲刀剣類登録証」が付いていることが必須です。
美術品類を扱う古物商としては、刀剣ショップ・刀屋の他に、古美術商や骨董店、リサイクルショップ、古書店なども含まれます。もし刀剣ショップが、日本刀や歴史に関する古書も扱うのなら、12の書籍も申請しなければなりません。
一方、個人が自分の物を他人に譲ったり、オークションサイトに出品したりする場合、古物商許可は不要です。商店から新品を購入して他の人に売る場合も必要ありません。例えば、刀剣ショップから購入した日本刀を、買い替えなどのために刀剣ショップへ売却する際、古物商許可は必要ないのです。
ただし、メーカーや小売店、卸売店以外の消費者や転売業者から買い取った品物を転売する場合は、古物商許可が必要となりますので、注意しましょう。
古物商許可が必要な取引・不要な取引の例
古物商許可の申請をするのは、営業所のある所在地を管轄する警察署の「生活安全課防犯係」です。申請書類は警察署へ出向いて受け取り、その際に「古物商担当者」に申請方法などを相談すると良いとされています。
事前相談で必要な書類を確認し、担当者の方とコミュニケーションを取っておくことで、申請がスムーズに進むからです。
申請者が法人の場合は、「定款」(ていかん)のコピー(赤字で奥書きをした物)と「登記事項証明書」も必要になります。
申請時に必要な「身分証明書」とは、運転免許証や健康保険証といった本人確認のための書類ではなく、破産手続開始決定の通知を受けていないことを証明する書類です。
また、「誓約書」では、「古物営業法第4条」に定める「欠格事由」に当てはまらないことを誓約します。欠格事由には、「禁錮以上の刑に処せられた者」、「住所の定まらない者」など、10項目が挙げられているため、警察署のホームページで確認しましょう。
この他、警察署から求められた場合は、下記の書類も提出します。
営業を行なう店舗が賃貸物件の場合は、「賃貸契約書のコピー」、賃貸人や管理会社からの「使用承諾書」も必要です。
都道府県によって違いがありますが、提出する申請書類は、「正本」(原本)と「副本」(コピー)の2部となっています。古物商許可申請書の一式が揃ったら、申請者の控用にもう1部コピーを取っておくのが通例です。
古物商許可申請は、事前に電話で予約し、決まった日時に管轄警察署の生活安全課防犯係へ出向きます。申請書の受付は平日の日中のみです。申請書に添付する書類は、作成日が申請日から3ヵ月以内と規定があるため、なるべく早めに提出するようにします。
申請時に持参する身分証は、運転免許証や健康保険証など、本人確認ができる書類です。申請者本人以外の代理人が行なう場合や、法人代表者が申請する場合は、「委任状」が必要となります。
古物商許可証
審査期間は、申請書が受理された翌日から起算して、土日を除く40日前後。審査が終了し、許可証の交付準備ができると、警察署から電話連絡が入ります。管轄警察署の生活安全課防犯係へ足を運ぶと、「古物商許可証」が交付されます。
交付の際に持参する物は下記の通りです。
法人の代表者が行く場合は、「法人代表者印」が必要。また、法人の代表者以外が行く場合は、委任状も必要となります。
交付された古物商許可証には、「古物商許可番号」が記載されていますので、この番号と屋号、取り扱い品目が記された標識(プレート)を営業所の目立つ位置に掲示しなければなりません。この標識は許可証交付の際に警察署で購入することも可能です。
また、ホームページ上や通販サイトのアカウントページで取引を行なう古物商の場合は、トップページに古物商許可番号を載せます。
物品を手放したい人から欲しい人へ、円滑に橋渡しすることは、古物商の大きな役割のひとつ。刀剣ショップ・刀屋であれば、日本刀の価値を正しく見極めて流通させることで、日本刀を蔵の奥に眠らせたままにしたり、保管できなくなった人が警察へ処分を依頼したりすることを防ぎ、日本刀という伝統文化を守って後世へと引き継いでいるのです。
そして古物商には、もうひとつ重要な役割があります。それは、盗難品を早期発見し、人手に渡ってしまうのを防止することです。「古物営業法 第1条」には、この法律の目的が下記のように定義されています。
この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もって、窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。
古物商は、業務である古物取引において、盗難品がないかどうか留意しなければなりません。古物商に対して許可制度を設けている理由は、盗難品の売買をしようとする者が参入するのを阻止し、また犯罪を発見しやすくするためなのです。
日本刀は、古物営業法で定められた「古物」に該当し、刀剣商(刀剣店・刀剣ショップ・刀屋)は古物商許可証を取得した古物商にあたります。古物商許可証を持つ骨董店や古美術商でも日本刀の買取・販売は可能ですが、「日本刀が欲しい」と思う方は、やはり専門店である刀剣ショップ・刀屋で購入するのがおすすめです。
刀剣ショップ・刀屋ではない骨董店などでは、日本刀専門のスタッフがいないことがほとんど。そのため、日本刀の価値を見誤ったり、偽銘(ぎめい:有名な刀工の銘を別の人が作った日本刀に入れること)を見抜けなかったりすることがあり、損のない買い物ができるとは限りません。
また、ネットオークションや通信販売など、現物を直接見ないで購入する場合は要注意。こちらも偽銘の日本刀や、傷やサビなどの欠点が記載されていない日本刀が販売されることがあるからです。その点、日本刀を専門とする刀剣商の実店舗であれば、スタッフと会話しながら、日本刀を実際に手に持ってみて購入できるので心強いでしょう。
刀剣ショップ・刀屋の中でも、とりわけ詳しい知識を持つ「刀剣評価鑑定士」がいる店舗なら、なお安心して購入することができます。
刀剣評価鑑定士とは、日本刀の専門家であることを証明する民間資格です。全国の刀剣商によって組織されている「全国刀剣商業協同組合」が創設しました。この制度の趣旨は、日本刀の価値を正確に査定・評価し、美術品としての価値も正しく判断できるだけの十分な知識と経験を有する刀剣商(刀剣店・刀剣ショップ・刀屋)に資格を付与することで、刀剣商の社会的信用を担保するという点にあります。
刀剣評価鑑定士になるためには、刀剣評価鑑定士試験に合格しなければなりません。その受験資格は、全国刀剣商業協同組合の組合員または賛助会員(さんじょかいいん:組織の活動はできないが趣旨に賛同して入会した会員)で、10年以上の組合加入歴があること、かつ古物商許可証取得後10年以上が経過していることです。例外として、資格認定委員会に申請し、承認された場合は受験可能となります。
刀剣評価鑑定士試験の出題範囲は、日本刀・刀装具の知識、甲冑(鎧兜)・武具の知識、作刀の知識などの他、「銃砲刀剣類所持等取締法」、古物営業法、「特定商取引法」、「消費者契約法」等の法律にまで及び、試験時間1時間の間に、全100問中80問以上に正解することが合格基準です。
費用はテキスト代を含む受験料10,000円。なお、資格取得時の認定料が30,000円、5年ごとの更新手数料は20,000円となっています。
「刀剣の正しい運搬方法」では、銃砲刀剣類所持等取締法についてご紹介しております。
「刀剣ショップや刀屋を訪れるのはハードルが高いので、個人で取引したい」。そう思う方もいるかもしれませんが、おすすめはできません。
日本刀は決して安価ではない美術品であり、正しく評価するためには専門知識が必要となるからです。さらに、個人の取引では、思わぬトラブルに見舞われることもあります。また、1振2振ではなく、数多くの日本刀を所持している方が、商売にする場合には古物商許可証が必要となりますので、注意が必要です。
刀剣商(刀剣店・刀剣ショップ・刀屋)では、日本刀ファンの方はもちろん、「家から日本刀が出てきたけれど、どうして良いのか分からない」という初心者の方も大歓迎しています。初心者の方が、刀剣ショップ・刀屋のスタッフとの会話を通して、日本刀の魅力を知ってくれたとしたら、それはショップにとってたいへん喜ばしいことなのです。
日本刀に詳しい方も、そうでもないと自認する方も、信頼できる刀剣商・古物商での買い物を気軽に楽しんでみましょう。