忍者の使った道具

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忍者は実に多様な忍具を駆使して、忍者は任務にあたっていたのです。取り上げてきた有名な忍具以外にも知恵と工夫の詰まった忍具がたくさんあります。忍者が使用したまだ紹介していない忍具についてご紹介します。

情報伝達に用いた忍具

忍者は味方同士の情報伝達のために様々な忍具を使用していました。

遠方の味方に連絡する際に使用したのが「狼煙」(のろし)です。狼煙は、藁に煙の起きやすい狼の糞と松葉を混ぜた火薬を燃やし、煙を上げ情報を伝えます。

煙が遠くからでも見やすいように、節をくり抜いた竹を、火薬の上に設置することで、煙突のように真上に高く煙が上がるように工夫していました。あらかじめ煙が上がることを暗号として共有しておくことで、遠方にいてもひと目で情報を伝達することができたのです。

1988年(昭和63年)に狼煙の情報伝達能力を測るために、大阪城から尾道(広島県)まで狼煙によるリレーと新幹線を競争させる実験が行なわれました。

結果としては新幹線に勝つことはできませんでしたが、29ヵ所を中継した狼煙は1時間58分で尾道まで到着。新幹線の到着時間と僅か10分しか差がないほどの伝達スピードを持っていることが証明されました。忍者の情報伝達はスピードが必要とされていましたが、機密性を高くすることも求められます。

諜報活動によって得た情報を記した書物や味方に宛てた手紙が、万が一敵の手に渡ってしまっても問題のないように、当たり障りのない情報しか書いていないようにカモフラージュする必要がありました。

その際に使われていたのが「あぶり出し」と呼ばれる、書類や手紙の一見なにも書いてない箇所を火であぶると文字が浮かび上がる仕掛けです。あぶり出しには、ミカンや大豆を搾った汁や、酒が用いられます。それらで書かれた文字は乾燥させると文字が消え、熱を加えると再び文字が浮かび上がってきました。

そのため、あぶり出しの方法を知っている忍者同士にしか、その文字は読むことができず機密性の高いやり取りが可能となります。

暗号性の高いやり取りとしては「五色米」(ごしきまい)があります。五色米は赤、青、黄、黒、紫(文献によっては白)に染められたお米を使用。あらかじめ色の組み合わせや米の個数による暗号を仲間で共有しておき、通り道などにメッセージとして五色米を残して情報を伝達しました。

また、筆や紙がない、その上、五色米も使えないそんな状態で情報伝達に用いられたのが縄を用いた「結繩」(けつじょう)です。縄の結び方や形状で暗号文字を作り、それを怪しまれないように農家の軒先や木などにぶら下げて情報を伝達しました。

攻撃のために用いた忍具

忍び刀や手裏剣などのメジャーな武器以外に忍者が使用していた物として、コンパクトで携帯しやすさに特化した「隠し武器」があります。

隠し武器は一見何も持っていない無防備な状態に見せかけて隙を突くことに秀でており、隠密行動を基本とする忍者に一番向いている武器であったと言えます。

代表的な隠し武器としては「手甲鉤」(てっこうかぎ)、「角手」(かくし)、「鉄拳」(てっけん)、「猫手」(ねこて)などです。

手甲鉤

手甲鉤

手甲鉤

手甲鉤は手の甲の部分に爪のような鋭利な刃物を装着する武器。爪の部分で切り付けて攻撃したり、相手の刀による攻撃を手の甲で受け止めたりする防具としても使用しました。

また武器としての用途以外にも、壁や樹木などに鉤の部分を打ち込んで高所に登る、地面に穴を掘るなどの敵陣への潜入時にも使用されていたと言われています。

角手

角手

角手

角手は指輪のように指に付ける武器です。

手のひら側に鋭利な刃が付いており、接近戦時に相手の体を掴み刃を刺します。

武器を持っているようには見えないため、相手の油断を誘い隙を突いて攻撃したり、刃に毒を塗り込んで致命傷を与えたりすることが可能です。

鉄拳

鉄拳

鉄拳

鉄拳はメリケンサックのような武器で、手で握りこんで装着します。

こぶしの外側を金属でカバーすることによって殴打によるダメージを格段に向上させることが可能でした。

猫手

猫手

猫手

指先に鋭利な爪のようなキャップを装着するのが猫手です。

武器としてはサイズが小さいため、引っかき傷程度のダメージしか与えることができません。

しかし、爪先に毒物などを塗り込んで使用することで、攻撃力を補っていたと考えられています。

逃走のために使用された忍具

菱の実

菱の実

忍者は諜報活動や隠密活動を主として行なっていたため敵との遭遇時、可能であれば戦闘よりも逃走することを優先します。

そして、少しでも逃走の可能性を上げるために忍具を用いていました。逃走時に使用していた忍具としては「撒き菱」(まきびし)と「目潰し」があります。撒き菱は菱と呼ばれる水草を乾燥させた物を使用していました。菱はとても固い植物で、さらに四方に鋭利なトゲを有しています。

逃走時に地面に撒き、追跡してくる敵が踏み抜くことで負傷を狙い、足止めして逃げる時間を稼ぐ忍具です。撒き菱は相手に与えるダメージを高めるために天然の菱を使った物から、トゲを木製で作った「木菱」(もくびし)、鉄製でより鋭利なトゲを作った「鉄菱」(てつびし)へと改良されていきました。

忍者はこれらの撒き菱を逃走しながら後方にばら撒いた他、あらかじめ逃走用のルートに撒いておき、自分は踏み抜かないようにすり足で走り抜け、それに気づかない追手は何も落ちていないと安心させ踏ませるという使い方もありました。

目潰しは、相手の顔面に刺激物や煙幕をぶつけ逃走の隙を生み出す忍具。破けやすい小袋や玉子の殻の中に唐辛子、石灰、こしょうなどを詰めて顔面に投げ付けます。

破裂した袋から煙幕が飛び散り相手の視界を奪ったり、刺激物によって涙やくしゃみを誘発させて隙を生み出したりしました。絶体絶命な状態でも生き抜き逃げ延びるために工夫した忍具を駆使して、忍者は任務にあたっていたのです。

任務中の携帯食「兵糧丸」

兵糧丸

兵糧丸

忍者は携帯食として、携帯性と栄養価に優れた「兵糧丸」(ひょうろうがん)と呼ばれる物を持ち歩いていたと言われています。

兵糧丸はもち米やうるち米などの穀物と数種類の生薬を混ぜ合わせて作成。エネルギーの補給だけでなく、漢方薬の知識を活かして生薬も配合していました。

主に使用された生薬は「蓮肉」(れんにく:蓮の実の乾物)、桂心(けいしん:シナモン)、朝鮮人参が使われ、滋養強壮(じようきょうそう)、疲労回復、緊張緩和、鎮静、下痢止めなどの効果があります。兵糧丸には大量の砂糖が使われていました。

砂糖を使うことで防腐効果が期待でき利便性を高めるだけでなく、糖分は体に入れば脳を動かす栄養素となるため思考能力を素早く回復させる効果も狙えました。現代科学にて脳には糖分がほぼ唯一のエネルギーであると解明されています。忍者は経験的にこのことを学び、効果的なエネルギー補給のために兵糧丸に砂糖を使っていたのかもしれません。

またその他の携帯食として、腹持ちを良くして空腹を紛らわすことを目的とした、そば粉や米粉で作られた「飢渇丸」(きかつがん)や梅干しを用いて、唾液の分泌を促すことで喉の渇きを抑える「水喝丸」(すいかつがん)が記録に残っています。

忍者は任務の種類や(任務)遂行時間、または任務地の立地を加味して必要となる栄養素を考慮し携帯食を選択していたのかもしれません。忍者は任務のために実に多様な忍具を生み出してきました。そのどれもが実によく考えられており、時には現代科学に迫るような知恵が見受けられることもあります。

知識の発展には何よりも、失敗体験や成功体験、遭遇した場面やそのきり抜け方などの情報の蓄積が欠かせません。生き抜き逃げきることで情報を持ち帰ることを最も重要視してきた忍者の心構えこそが、優れた忍具を生み出してきた礎になっているのかもしれません。

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