甲冑の部位

縅毛の種類

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日本式甲冑は、膨大な数の部品で構成されていますが、それらのパーツをつなぎ合わせているのが「縅毛」(おどしげ)です。縅毛の種類や色、さらには縅毛によって作り出される模様などについてご紹介します。

個性と芸術性が試される縅毛

小札」(こざね)を使った甲冑を作る際は、小札を横方向につなぎ合わせた「小札板」(こざねいた)を作り、それを縦方向につなぎ合わせていく必要があります。

小札の組み立て方

小札の組み立て方

このように縦方向につなぎ合わせることを「縅す」(おどす)と言い、縅すために使われる緒を縅毛と呼ぶのです。

縅毛には、組紐やなめした革(韋紐:かわひも)が使われることが一般的。こうした縅毛は、ただ小札板を縦方向につなぎ合わせるだけではなく、縅毛の色や材質などによって、甲冑を装飾する役割も果たしていました。

縅毛に使われた素材

縅毛

縅毛

縅毛には様々な色や素材が使われており、これらの色や素材がそのまま縅毛の名前として名付けられます。

例えば、絹の組紐を萌黄色に染めた縅毛であれば、「萌黄絹糸縅」(もえぎきぬいとおどし)など。

では、縅毛の基本的な素材である組紐(糸)、韋(かわ)、綾(あや)について見ていきましょう。

組紐
組紐を使う「糸縅」(いとおどし)です。材料は絹、麻、木綿などが使用され、これらの繊維をより合わせて糸状にした物を、さらにより合わせて組紐状にしています。
鹿や馬の革などをなめして、縅毛として使って行なうのが、「韋縅」(かわおどし)です。やわらかさがありながら強靭さもかね備えている動物の革を用います。
織物を切って細かくたたみ、芯材として麻を入れた物で縅す方法を、「綾縅」(あやおどし)と言います。綾は当時の織物の総称で、麻布や絹織物、錦などが使われました。

縅毛の色

縅毛には、赤、萌黄/萌葱、紺など、様々な色が使われており、それぞれに意味や願いが込められています。現代の五月人形にも通ずる主な縅毛の色が持つ意味を見ていきましょう。

縅毛の色(赤・白・紺・浅葱・萌葱・紫)

縅毛の色(赤・白・紺・浅葱・萌葱・紫)

赤は、活力や命の代表となる太陽の色を表しています。また、神社の鳥居などにも用いられる魔除けの色でもあるのです。赤く染めるための染料として、茜(あかね)、または蘇芳(すおう)を用いました。
白は「他の色に染まってない」というところから、自分の意志を強靭に貫くという意味を持っています。染めて作ることができなかったため、植物性の糸や生糸のなかから色の白い物を厳選して使用していました。
紺は、藍染めを繰り返すことで作られる、深く黒に近い青のこと。藍染めには殺菌防虫効果があるため、魔除けの意味も持っていました。藍は世界各地で採れる染料して知られ、現代においてもジーンズなど幅広く用いられています。
浅葱
浅葱は、やや低めの官位を示す色として平安時代に登場。汚れが目立ちにくいことから、染物が民衆の間に広がっていくにしたがって、庶民のなかで一般的な染め色となりました。

浅葱色は日本で特徴的に見られる色で、日本の伝統色のひとつとされています。

萌黄/萌葱
萌黄糸、または萌葱糸は、藍染した物を、さらに上から刈安(かりやす)や黄檗(きはだ)などの黄色系染料で染めることで美しい緑色に染め上げます。萌黄は、その意味の通り若々しさ、強い生命力の象徴的な色ということもあり、若武者の初陣などで使われました。
冠位十二階で定められた最も高貴な色です。染料は「ムラサキ」。ムラサキの根を使って染色すると、きれいに紫根染(しこんぞめ)され、発色の良い紫色の染物ができます。

縅の模様

縅の本来の目的は、小札や小札板をつなぎ合わせて甲冑を成形すること。しかし、数種類の縅毛を組み合わせることにより、大きな1領の甲冑を仕上げたときに、美しい文様を浮かび上がらせることもできるのです。代表的な縅の模様について見ていきましょう。

沢瀉縅(おもだかおどし)
沢瀉縅

沢瀉縅

沢瀉縅は、上を狭く、下を裾開きに縅す方法で、鎧に浮かび上がる大きな色違いの三角形が特徴。

地の色が紫だった場合、地の色に合わせて「紫地沢瀉縅」(むらさきじおもだかおどし)というような呼び方をします。

愛媛県今治市の「大山祇神社」(おおやまづみじんじゃ)は、現存最古と言われている大鎧国宝「沢潟縅鎧」(おもだかおどしよろい)が現存していますが、甲冑の形ではなく「残欠」(ざんけつ:一部が欠けて不完全なこと)の状態となっています。

逆沢瀉縅(さかおもだかおどし)
逆沢瀉縅は、沢瀉縅を上下反転させたような、上を広く、下を三角形の頂点に据えた形の物。「東京国立博物館」(東京都台東区)に所蔵されている「紫糸逆沢瀉縅鎧」(むらさきいとさかおもだかおどしよろい)などが典型例です。
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褄取縅(つまどりおどし)
褄取縅

褄取縅

草摺(くさずり)の一端を斜めに、地の色とは別の色で縅した物を指します。

国宝「白糸縅褄取鎧」(しろいとおどしつまどりよろい)は、南北朝時代の代表的な大鎧。

現在は青森県八戸市の「櫛引八幡宮」が所蔵しています。

匂縅(においおどし)
匂縅

匂縅

一方を薄く、他方を濃くする縅し方です。

柏原美術館」(山口県岩国市)に所蔵されている「萌葱糸匂縅鎧」(もえぎいとにおいおどしよろい)には、現在でも美しいグラデーションを観ることができます。

裾濃縅(すそごおどし)
裾濃縅

裾濃縅

匂縅の一種で、上方を淡くし、下方を濃くする縅し方です。

兵庫県立歴史博物館」(兵庫県姫路市)に所蔵されている「紺裾濃縅本小札胴丸」(こんすそごおどしほんこざねどうまる)は、江戸時代後期に作られました。

裾濃縅の特徴を今に伝える重要な史料です。

群濃縅(むらごおどし)
1ヵ所を違う色で縅したり、ところどころに色の濃さが違う縅毛を使ったりした物を指します。村濃縅や斑濃縅と表記されることもありますが、読み方は同じです。
肩取縅(かたどりおどし)
袖の最上部の2段、の最上部の2段を、それぞれ基調とは異なる色で縅す方法です。
腰取縅(こしとりおどし)
小札板の中段を、それぞれ基調とは異なる色で縅す方法です。「中縅」(なかおどし)とも呼ばれます。
裾取縅(すそとりおどし)
袖、草摺の下段を、それぞれ基調とは異なる色で縅す方法です。
肩裾取縅(かたすそとりおどし)
肩取縅と裾取縅を組み合わせた物で、袖の真ん中と胴の下部、草摺の上部が基調の色となっており、それ以外の場所が別の色で縅されています。肩取縅、裾取縅に比べると腰取縅に近い見た目です。

ただし、腰取縅はなどにも使われる言葉なので、肩裾取縅とは区別されています。千葉県の有形文化財に指定されている「黒糸肩裾取縅胴丸」(くろいとかたすそどりおどしどうまる)などは、この代表例です。

段縅(だんおどし)
白糸と色糸を、1段ごとに互い違いに縅していく方法を指しています。広島県重要文化財に指定されている「白紫緋糸段縅腹巻」(しろむらさきひいとだんおどしはらまき)は、白と紫と緋色を交互に縅していく、3色の段縅です。
色々縅(いろいろおどし)
色々縅

色々縅

様々な色の縅毛を使った方法で、3~5色程度の色が使われるのが一般的。

重要文化財の「色々糸縅腹巻」(いろいろいとおどしのはらまき)は、肩裾部分が紅と白の段縅のようになっており、腰が茶を基調とした配色です。

決して派手な色だとは言えませんが、縅毛の色の対比が目を引きます。

縅毛の種類

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甲冑の胴

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