忍者の使った道具

忍者の7つ道具

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漫画や映画など現代の創作物のなかで、忍者は高い塀を軽々と跳び越えたり、木々の枝の上を飛び移って移動したりしています。そんな、ことさらに忍者の身軽さが強調されるシーンをみなさんも見たことがあるのではないでしょうか。
実際には創作物のように助走もなしに何mも跳び上がることはできませんが、城や砦などに忍び込むことも多く、熟練者であれば1日に50里(約200km)を駆け抜けたと言われる忍者にとって、少しでも持ち物を減らし身軽になることは非常に重要。そのため経験則から「最低限持っていくべき忍具」が7種類挙げられるようになり、江戸時代に書かれた忍術書「正忍記」でもご紹介されています。そんな「忍者の7つ道具」についてご紹介します。

忍の7つ道具

任務の専門性と任務失敗が自軍の敗北につながりかねない忍者の働きぶりの重要性から、必ず任務を成功させるために、多彩な忍具が作られました。

例えば梯子(はしご)ひとつ取っても、現代の梯子と同じ2本の支柱の間に踏み段を通した「結梯」(ゆいはしご)や、1本の支柱に直角に踏み段を付けた「飛梯」(とびはしご)、麻縄でできた折りたたみ可能な「巻梯」(まきはしご)、巻梯にスパイクのような鉤(かぎ)を付け険しい岩場や木立を登るために使う「鉤梯」(かぎはしご)など、場面や携帯性によって様々な種類に分かれています。

当然、それらの忍具をすべて持ち運ぶことは不可能。そのため汎用性が高く、ないと困る忍具を指して「忍の7つ道具」と呼びました。忍者はその7つ道具と、任務の特性を考慮して厳選した忍具を持って、それぞれの任務にあたっていたのです。

鉤縄

鉤縄

鉤縄

「鉤縄」(かぎなわ)は、縄の先端に鉄製の鉤(かぎ)を付けた忍具です。

釣り針のような外れにくい形状の鉤を引っ掛けることで、高くて自力では登れない塀や足がかりのない壁・崖などを登ることができます。

また、鉄鉤部分が重りの役目を果たし、遠心力を使って遠くに投げることも可能。そのため壁を登るだけでなく、橋のかかっていない堀や川を渡らなければならないとき、鉤縄を対岸の木などに引っかけて振り子の要領で飛び移ることもありました。

さらに縄部分で、「生け捕りにした敵を縛り上げる」、「物をまとめて縛る」などの用途に使われたり、勢いを付けて鉄鉤を敵にぶつけたりして攻撃するような分銅代わりの武器で使用されることもありました。さらに鉤縄は容易に使用できたため、高度で専門的な訓練を受けた忍者だけでなく、侍や普段は農民として働く兵士も戦の際に使用していたとされています。

編笠

「編笠」(あみがさ)は、畳表の材料にも使われる藺草(いぐさ)や米を収穫したあとに残る稲藁(いなわら)、水辺に生えるイネ科の植物・真菰(まこも)などを原料にした、草で編まれた笠のことです。編笠はかつて、全国各地で一般的に着用されていた装束のため、どこでかぶっていても怪しまれることはありませんでした。

全国には様々な種類の編笠がありましたが、なかでも忍者が好んで使っていた編笠は目深にかぶり顔をすっぽりと覆ってしまう形状の物です。敵地に潜入した忍者が、自身の顔を周囲に見られないようにするために使用していました。

忍者の顔が敵に知られてしまうと、その後のなりすましが困難になったり、敵に顔を知られていた場合、見つかってその場で捕えられてしまったりと任務遂行に支障をきたす可能性が出てきます。そのため顔を見られないよう、編笠で隠していたのです。

また笠の内側には、敵地で得た情報を書いた紙を縫い付けて敵に見つからないように持ち運んだり、半弓(はんきゅう:小型の弓)を仕込んで有事の際に使用したりすることもできたと言われています。

  • 編笠①

    編笠①

  • 編笠②

    編笠②

石筆

「石筆」(せきひつ)は、棒状の蝋石(ろうせき:蝋のように半透明でやわらかい石)や固めた粘土を材料とした携帯用の筆記具。蝋石の筆記具は現代でも建設現場や工場などで多く利用されています。

石筆で書いた文字は容易に消すことができるため、見聞きした情報を一時的に書き留めたのちに消したり、仲間の書いた伝言を見た忍者が確認後すぐに消したりと、必要以上に痕跡を残さないことにも長けていました。

忍者は職業柄、衛生的な環境だけでなく山や川などに身を置かなければならない場合もあり、健康を維持するための予防薬や体調を崩してしまった際に使用する治療薬など、多くの薬も携帯していました。

具体的には、山道を歩くときに重宝する虫除けや、傷口に塗る傷薬といった自分用に使う薬。なかでも特に重宝した物は、発症すると動けなくなり任務遂行に支障をきたす、食中毒などの腹痛を抑えるための薬でした。

加えて、江戸時代に書かれた忍術の秘伝書「萬川集海」(まんせんしゅうかい)には忍者の使用していた携帯保存食の製法も掲載されており、そば粉や山芋などを主原料として栄養価が高く手軽に栄養補給ができる「飢渇丸」(きかつがん)や、梅干を入れて唾液の分泌を促し喉の乾きを抑える「水渇丸」(すいかつがん)なども持ち歩いていたと考えられています。

さらには、暗殺任務に備えてトリカブトやヒ素などの毒薬も欠かしませんでした。

三尺手拭

「三尺手拭」(さんじゃくてぬぐい)は、その名の通り長さが3尺(約90cm)ある木綿製の手拭。マメ科の植物・蘇芳(すおう)で染色された蘇芳色(黒味を帯びた赤色)が特徴です。

忍術書でも「肌身離さず携行する」よう書かれるほど重要な忍具でした。「重要」とされた理由は、手拭の幅広い用途。

顔を隠すための頬かむりや鉢巻・帯として身に付けたり、殺菌作用を持つ蘇芳の効果で、傷口を覆う包帯に使ったり水をろ過殺菌して飲んだりと、衛生的な環境を確保するための忍具として重宝されました。

さらには長さを活かして、塀や木に登るための縄の代用品、石を包んで振り回すことで武器としても利用可能。忍者の健康を守るだけでなく、攻撃の道具にもなりました。

打竹

打竹

打竹

「打竹」(うちたけ)は、忍者が火種(火縄)を持ち歩くために使用した忍具です。

短い竹を使用し、竹筒には中の酸素が尽きないよう小さな風通し用の穴が開けられています。

筒の内側には鉄線が縦に何本も張られていて、中に入れた火縄は鉄線の檻に閉じ込められたようになり、竹筒と火縄が直接触れない構造になっていました。

ろうそくに火を点けたり、敵陣に火を放ったり、火器を使用したりと、何かと火を使う場面の多い忍者の活動になくてはならない忍具でした。

「錣」(しころ)は、忍者が敵陣に潜入する際に使用する開器(かいき)と呼ばれる種類の忍具です。先端の尖った両刃の「のこぎり」のような形状で、木や竹も軽々と切断したとされます。

現代の形状ののこぎりでは扉など平面な対象物を切ることは困難ですが、錣は先端が細くなっているため先に錐などで穴を作っておくことで、先端を差し込んで切断することができました。

錣の大きさも様々で、大きな物は生垣を切断するなど潜入前の段取りで使用され、小さな物は襟元に隠して、万が一捕えられた際に牢を破って逃走するために使われました。またこの錣を抜いた6つの忍具を「忍び六具」(しのびろくぐ)と称する場合もあります。

錣を含む開器の多くは、大工道具から発展し誕生したとされています。のこぎりや「のみ」、「釘抜き」など、城や砦を建築するために必須の大工道具は同時に、潜入するため木の柱や土壁などを破壊することにも長けた道具でもありました。忍の7つ道具に共通して言えるのは、どれも用途がひとつだけでなく他の忍具と組み合わせて幅広い応用が利くこと。

忍者には、忍具の特徴をしっかりと理解する知識とその特徴を掛け合わせて様々な状況を打開する発想力が求められました。身体能力の高さが注目されやすい忍者ですが、知識量においても非常に高い素養を持っていたのです。

忍者の7つ道具

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手裏剣

手裏剣
手裏剣は、忍者の用いる「忍具」のなかで、最も有名な物のひとつです。忍具のなかで、真っ先に手裏剣を連想する人も多いのではないでしょうか。時代劇など創作のなかではたびたび、両手を身体の前で水平に構えて擦るように手裏剣を連射する忍者の姿が描かれます。しかし実はあの打ち方(手裏剣は投げるではなく打つと表現する)は、創作が発祥で広まった誤った描写だということをご存知でしょうか?知っているようで意外と知らない手裏剣について、ご紹介していきます。

手裏剣

火器

火器
現代では、ワンタッチで着火できるコンロや、ポケットに収まるライターなど、便利に使える「火」。しかし当然ながら、忍者の活躍した戦国時代・江戸時代には、現代のように便利ではありませんでした。そのため忍者は様々な工夫をこらして、当時外国から伝来したばかりの火薬や火縄銃など最新兵器の扱いを学んだり、煙を風に負けないよう垂直に立ち昇らせる技術を確立したりすることで、忍者自身の活躍の幅を広げていきました。武器から逃走補助の忍具、伝達用の合図まで、忍者の隠密活動に重宝された火を使った「忍具」についてご紹介します。

火器

忍者刀

忍者刀
忍者の活躍した戦国時代、主に使用されていた武器は日本刀です。忍者も例外ではなく、任務中は日本刀を帯刀していました。忍者は隠密行動を生業としていたため、帯刀していた日本刀は特別な形状の「忍者刀」と呼ばれる物であったと言われています。しかし一方で、通常とは違う形状の日本刀を持ち歩けば周りに忍者という事が筒抜けになってしまうため、特殊な形状の忍者刀は存在せず、忍者も一般的な日本刀を使用していたという説もあります。忍者の道具(忍者刀)では、忍者刀に込められた工夫と、その用途についてご紹介します。

忍者刀

忍び装束

忍び装束
私達が漫画やアニメで目にする忍者は、全身黒ずくめの格好で闇に紛れて活躍するイメージが強いのではないでしょうか。では、実際に忍者の着用していた衣類には、どのような秘密が隠されていたのか、忍者が任務時に身に付けていたと言われる衣装「忍び装束」(しのびしょうぞく)についてご紹介します。

忍び装束

登器・水器・開器

登器・水器・開器
忍者は多様な忍具を駆使しながら敵陣に侵入して任務を遂行してきました。誰にも気付かれることなく家屋や城内に忍び込むために考え抜かれ、様々な機能を持った忍具の数々。忍者の活動を支えた様々な知恵や工夫の詰まった忍具をご紹介します。

登器・水器・開器

連絡道具・攻撃道具・逃走道具・携帯食

連絡道具・攻撃道具・逃走道具・携帯食
忍者は実に多様な忍具を駆使して、忍者は任務にあたっていたのです。取り上げてきた有名な忍具以外にも知恵と工夫の詰まった忍具がたくさんあります。忍者が使用したまだ紹介していない忍具についてご紹介します。

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