忍者の使った道具

忍者刀

文字サイズ

忍者の活躍した戦国時代、主に使用されていた武器は日本刀です。忍者も例外ではなく、任務中は日本刀を帯刀していました。忍者は隠密行動を生業としていたため、帯刀していた日本刀は特別な形状の「忍者刀」と呼ばれる物であったと言われています。
しかし一方で、通常とは違う形状の日本刀を持ち歩けば周りに忍者という事が筒抜けになってしまうため、特殊な形状の忍者刀は存在せず、忍者も一般的な日本刀を使用していたという説もあります。忍者の道具(忍者刀)では、忍者刀に込められた工夫と、その用途についてご紹介します。

忍者が使用した日本刀

忍者刀の形状の特徴として、まず挙げられるのが刀身の短さです。

通常の日本刀は刀身の長さが70cmほどありますが、忍者刀は40cmほどととてもコンパクト。また忍者刀は、日本刀独自の「反り」と呼ばれる刀身の湾曲がありません。忍者刀の短く反りのない形状は、忍者の活動内容に合わせることから生まれました。

日本刀の反りは、少ない力で物を切ることができるため人を斬り付けるのに非常に有効な形状であり、刀身も長いほど、攻撃範囲は広がります。

一方、忍者の主な任務は戦うことではなく、敵に気付かれないように忍び込んで行なう諜報活動。戦うことなく任務を達成できればそれに越したことはなく、逃げるチャンスがあれば、戦わずして逃げ帰ることが重要でした。

そのため、走るときに木や壁などの障害物にぶつけたり、ひっかけたりすることをなくすために刀身は短くなり、反りはなくなっていきました。

また闇に乗じて敵に気付かれないように行動する際、目立たないために日本刀を収める鞘や、持ち手のは黒く塗られ光を反射しないために艶消しの加工をしていたと言われています。

忍者刀の形状以外の大きな特徴としては、「下緒」(さげお:に付けてある紐)が通常の日本刀に比べてかなり長く作られていることが挙げられます。

この長い下緒には「下緒七術」(さげおななじゅつ)と呼ばれる7つの用途がありました。

その他の特徴として、(こじり:鞘の先端)が尖った金属で作られており、地面に突き刺し杖代わりとして移動時に用いられたと言われています。金属部は取り外しが可能で、取り外した状態の鞘をシュノーケル代わりに用いれば水の中を移動することも可能。忍者刀を用いての戦闘は、忍者にとっては緊急事態のケースで、基本は逃走のために携帯しやすく形を変え、装備を増やさないために様々な用途にも使えるように進化を遂げています。

忍者刀を用いた忍術「下緒七術」

忍者刀の長い下緒を使用した忍術・下緒七術は、「旅枕」(たびまくら)、「坐さがし」(ざさがし)、「槍停」(やりどめ)、「塀登り」(へいのぼり)、「野中の幕」(のちゅうのまく)、「指縄」(さしなわ)、「帯の代用」(おびのだいよう)の7つから構成されます。

  1. 旅枕

  2. 旅枕

    旅枕

    旅枕は、就寝時に大小の2つの日本刀を下緒で結び、体の下に下緒を通して日本刀を自分の左右に置いて眠る下緒の使用法。

    眠っている間にどちらかの日本刀が奪われそうになっても、体の下の下緒が動くことで瞬時に気づくことができ、部屋から逃げ出す際には、下緒を掴んで手繰り寄せることで日本刀を失うことを避けられる忍術です。

  3. 坐さがし

  4. 坐さがし

    坐さがし

    坐さがしは、夜や暗室などの真っ暗な視界の空間において、鞘を鋒/切先(きっさき:日本刀の先端)ぎりぎりまで抜き、長い下緒を口にくわえた状態で闇に潜んだり、探索したりする使用法。

    鞘に人があたったと感じた瞬間に、口から下緒を離して鞘から日本刀を抜き、素早く突き刺し攻撃をすることです。

  5. 槍停

  6. 槍停は、槍を使用する敵と戦う際の使用法。忍者刀と鞘を下緒で結び右手に日本刀、左手に鞘を持ち構え、相手の突きを素早く避け、槍を下緒で絡めて一気に奪い取る忍術です。

  7. 塀登り

  8. 塀登り

    塀登り

    塀登りは、高い塀を乗り越えるときに壁に忍者刀を立てかけて、「鍔」(つば)を足の踏み場にして乗り越える忍術です。その際に下緒を口にくわえておくことで、登り切ったあとに下緒を手繰り寄せて日本刀を回収することができます。

    また、塀登りを行なう際に足場にしやすいように忍者刀の鍔はあらかじめ大きめに作られていました。

  9. 野中の幕

  10. 野中の幕

    野中の幕

    野中の幕は、野宿の際に簡易的な屋根を作るために下緒を使用する忍術。

    数本の木の間に下緒を通し、頭上に骨組みを形成してその上に手ぬぐいや羽織を被せて屋根を作っていました。

    指縄は下緒を鞘から取り外してロープのように使う忍術です。敵を取り押さえた際に縛る、自身が傷を負った際の止血などに用いました。

    帯の代用は、戦闘の際に帯を切られたり、敵から寝込みを襲われたり、帯が見付からない緊急自体に下緒を帯がわりにして衣服の乱れによって動きを妨げられないようにする忍術です。

様々な物に姿を変えて潜む忍者刀

隠密行動をする忍者は、一般社会に溶け込み人目を引かないことが求められていました。

そのため、日本刀を持ち込めない場所での任務や、日常的に日本刀を持たない人物に変装して任務を行なう際には、日常的な道具にカモフラージュさせた「仕込み刀」を用いていたと言われています。

代表的な仕込み刀としては杖の内部に日本刀を隠した「仕込み杖」が有名です。杖の細長い形状は、内部に日本刀を仕込みやすく、外見からは仕込み刀だと判断することが難しくなります。

高いカモフラージュ性能を持ちながらも、攻撃力が高く長い刀身を隠しやすいため好んで使用したと言われています。その他には、扇子に日本刀を隠した「仕込み扇子」が有名。

扇側に日本刀を忍ばせた仕込み扇子

扇側に日本刀を忍ばせた仕込み扇子

仕込み扇子には持ち手側に日本刀を仕込ませた物と、扇として広げる側に日本刀を仕込ませた物の2種類あります。

広げる側に仕込んだ物は、そのまま相手を突き刺す用途で使われました。持ち手側に仕込んだ物は、扇子を相手に渡すふりをして不意を突く用途で使用されました。

その他にも、キセルや、かんざしなどの日常品にカモフラージュした日本刀を忍者は使用していたと言われています。

これらの武器はカモフラージュの目的以外にも、丸腰であると相手を油断させて隙を突く、不意打ちの手段としても重宝されました。

忍者刀以外の刃物

忍者は日本刀以外にも多くの刃物を武器として使用していました。

その中でも好んで使っていたと言われているのが鎌です。忍者は、戦や諜報活動時以外は農業などの仕事に従事していました。

そのため、普段から使用していた農具である鎌は扱いに慣れており、特別な訓練をすることなく武器として使いこなすことができます。

また、鎌を使用することには、農民などの一般市民に扮する際、刃物や鈍器を所持していても農具であれば違和感がないというメリットもありました。

それらの利点から、鎌はすぐに武器として使用され始めましたが、日本刀に比べてリーチが短いという大きな弱点がありました。その弱点を補うために開発されたのが、「鎖鎌」(くさりがま)です。鎖鎌は鎌と分銅(ふんどう:金属の重り)を1m以上の鎖で結んだ武器。鎌の攻撃が届かない距離にいる敵に対しても、鎌の反対側に付いた分銅を投げ付けることで攻撃することができ、鎌の弱点であるリーチの短さを補っています。

弱点の克服だけではなく近距離戦では鎌による斬り付けはもちろん、鎖を使って敵の首を絞めることもでき、鎖鎌は鎌だけの状態よりも攻撃の手段の多い実践向きの武器となりました。

隠密行動を主として活動していた忍者は、いつでも身軽でなくてはならず、ひとつひとつの装備品に多様な用途を求められていました。

忍者刀も例外ではなく、たくさんの用途と、社会に潜むためのカモフラージュの姿が求められていきました。

人を斬ることに特化して進化していった日本刀とは別の、独自の進化を遂げていった忍者刀。

美しい形状が美術的価値も高い日本刀に比べて、短く直刀である忍者刀は武骨な姿ですが、プロとしての仕事に応えるための工夫がたくさん詰まった実用性の高い道具なのです。

忍者刀

忍者刀をSNSでシェアする

「忍者の使った道具」の記事を読む


手裏剣

手裏剣
手裏剣は、忍者の用いる「忍具」のなかで、最も有名な物のひとつです。忍具のなかで、真っ先に手裏剣を連想する人も多いのではないでしょうか。時代劇など創作のなかではたびたび、両手を身体の前で水平に構えて擦るように手裏剣を連射する忍者の姿が描かれます。しかし実はあの打ち方(手裏剣は投げるではなく打つと表現する)は、創作が発祥で広まった誤った描写だということをご存知でしょうか?知っているようで意外と知らない手裏剣について、ご紹介していきます。

手裏剣

火器

火器
現代では、ワンタッチで着火できるコンロや、ポケットに収まるライターなど、便利に使える「火」。しかし当然ながら、忍者の活躍した戦国時代・江戸時代には、現代のように便利ではありませんでした。そのため忍者は様々な工夫をこらして、当時外国から伝来したばかりの火薬や火縄銃など最新兵器の扱いを学んだり、煙を風に負けないよう垂直に立ち昇らせる技術を確立したりすることで、忍者自身の活躍の幅を広げていきました。武器から逃走補助の忍具、伝達用の合図まで、忍者の隠密活動に重宝された火を使った「忍具」についてご紹介します。

火器

忍び装束

忍び装束
私達が漫画やアニメで目にする忍者は、全身黒ずくめの格好で闇に紛れて活躍するイメージが強いのではないでしょうか。では、実際に忍者の着用していた衣類には、どのような秘密が隠されていたのか、忍者が任務時に身に付けていたと言われる衣装「忍び装束」(しのびしょうぞく)についてご紹介します。

忍び装束

登器・水器・開器

登器・水器・開器
忍者は多様な忍具を駆使しながら敵陣に侵入して任務を遂行してきました。誰にも気付かれることなく家屋や城内に忍び込むために考え抜かれ、様々な機能を持った忍具の数々。忍者の活動を支えた様々な知恵や工夫の詰まった忍具をご紹介します。

登器・水器・開器

忍者の7つ道具

忍者の7つ道具
漫画や映画など現代の創作物のなかで、忍者は高い塀を軽々と跳び越えたり、木々の枝の上を飛び移って移動したりしています。そんな、ことさらに忍者の身軽さが強調されるシーンをみなさんも見たことがあるのではないでしょうか。実際には創作物のように助走もなしに何mも跳び上がることはできませんが、城や砦などに忍び込むことも多く、熟練者であれば1日に50里(約200km)を駆け抜けたと言われる忍者にとって、少しでも持ち物を減らし身軽になることは非常に重要。そのため経験則から「最低限持っていくべき忍具」が7種類挙げられるようになり、江戸時代に書かれた忍術書「正忍記」でもご紹介されています。そんな「忍者の7つ道具」についてご紹介します。

忍者の7つ道具

連絡道具・攻撃道具・逃走道具・携帯食

連絡道具・攻撃道具・逃走道具・携帯食
忍者は実に多様な忍具を駆使して、忍者は任務にあたっていたのです。取り上げてきた有名な忍具以外にも知恵と工夫の詰まった忍具がたくさんあります。忍者が使用したまだ紹介していない忍具についてご紹介します。

連絡道具・攻撃道具・逃走道具・携帯食