白く冷たい光を放つ刀身と、豪華絢爛たる「拵」(こしらえ)。どちらも日本の文化を象徴する美術品である反面、その姿を変わらず受け継いでいくにはきわめて繊細な注意が必要です。
拵と白鞘の取り扱いでは、日本の伝統美術品とも言える、拵と「白鞘」(しらさや)を保存する上で、重要になるポイントをまとめました。
しかし、ただ白鞘に入れておくだけでは意味がありません。木には調湿機能があるため、周囲の湿度が高いときには、空中の水分を吸い込み、逆に乾燥したときに水分を放出します。
白鞘は、刀身の保存に適していますが、問題はその際に、木のサイズがほんの少し変形すること。これが、精緻な工芸品である刀身に、思いがけない影響を与えるのです。
刀身は、白鞘に入れ、湿度が少ないところに保管するのが理想です。一方拵は、あまり乾燥した場所は適していません。柄糸に付着した埃をブラシなどで払い、鞘の汚れをやわらかいクロスなどで拭き取り、内部に「竹光」(たけみつ)や「朴の木」(ほおのき)で作った「つなぎ」を入れて保管しましょう。
刀袋
白鞘・拵とも、保管するときに注意しなくてはならないのは、必ず刀袋や拵袋に入れること。袋に入れておけば、白鞘や拵が日焼けせず、鞘走りした刀身がむき出しになることもありません。
また、袋に入れるときは、必ず「鐺」(こじり:鞘の先端部)の方から、入れるようにします。
こうすることで、不意に刀身が抜ける危険を防げるのです。
前述したように、刀身の敵は湿度です。高温多湿の日本では、放っておけば刀身はすぐ錆びついてボロボロになってしまいます。しかし、博物館などに行けば、1,000年以上も前の刀身が、今も美しく輝いています。
その背景に、繊細な刀身はもちろん、拵や白鞘を絶えず手入れし、守り続けてきた人達の知恵と工夫と努力があることを忘れてはなりません。
刀身を保存するために拵袋に入れるとき、刀剣初心者の方の悩みになるのが、「房紐」(ふさひも)の結び方。
正しく結んだ房紐は、見た目に美しいだけでなく、袋や紐を傷めることがありません。
刀剣の拵袋における房紐の結び方は、多種多様にあります。
ここでは、その一例として、「鱗結び」(うろこむすび)についてご説明します。
鱗結びの手順 | ||
---|---|---|
1 | 拵袋の口を2つに折り、刀剣が中で動かないよう、柄の部分をしっかり包み込みます。 | ![]() |
2 | 折り返した中央付近に房紐をきつく巻き付けます。このとき2本の紐が、きれいな平行になるように注意しましょう。 | ![]() |
3 | 房紐の残りが30cmほどになったら、最後に結んだ部分だけを少し緩めます。他の部分まで緩まないよう注意が必要です。 | ![]() |
4 | 3.で緩めた部分に、余った房紐を2本ともはさんで3cmほどのループを作り、房紐を絞ってループを整えます。 | ![]() |
5 | 4.で固定した2つのループを左右に開きます。 | ![]() |
6 | 房紐の残りを下に垂らします。 | ![]() |
7 | 5.で開いた2つのループのうち左側のループを右上に持ち上げます。 このとき、6.で垂らした房紐の上側を通すようにしましょう。 |
![]() |
8 | 6.で垂らした紐を少し緩めてループを作ります。 | ![]() |
9 | 8.で作ったループに、5.の右側のループを通します。 | ![]() |
10 | 左右のループと房紐を引いて、形を整えれば完成です。 | ![]() |
今回ご紹介した例では、拵袋の下から上に房紐を巻きましたが、逆に上から巻く方法もあります。説明文だけでは分かりにくいときは、インターネットに数多く解説動画が上がっているので、ぜひ参考にしてみましょう。