関ヶ原の戦いを描いた作品

関ヶ原の戦いとドラマ・小説

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「関ヶ原の戦い」(せきがはらのたたかい)は、今までに多くのドラマや小説で描かれています。その理由は、「東軍」と「西軍」の激突というとてもシンプルな構図で分かりやすく、日本史の勉強になってしまうからです。脇を固める個性的な人物が数多く登場し、それぞれの武将視点によって様々に表現されるのも魅力のひとつ。ここでは天下分け目の戦いが、ドラマや小説でどのように描かれてきたかをご紹介します。

歴代のNHK大河ドラマで描かれた関ヶ原の戦い

「徳川家康」 1983年(昭和58年)

徳川家康

徳川家康

NHK大河ドラマ「徳川家康」(とくがわいえやす)の原作は、「山岡荘八」(やまおかそうはち)の長編時代小説である徳川家康。

26巻にも及ぶ大作で、世界最長小説としてギネスブックにも載っています。

このドラマは、徳川家康に対して多くの人が持つ「タヌキおやじ」、「策謀家」、「老獪な天下人」といったイメージを一変させ、戦のない平和な世の中を願う求道者として描いた意欲作。

第35話で「豊臣秀吉」(とよとみひでよし)が死に、徳川家康は「国をひとつにして泰平の世を開く」ことを決意しますが、同じく天下人の座を狙う「石田三成」(いしだみつなり)からは、暗殺を企てられたり、悪い噂を流されたりと妨害を受け、「関ヶ原の戦い」(せきがはらのたたかい)へと続いたという勧善懲悪ドラマに仕上がっています。

<キャスト>
徳川家康:滝田栄、豊臣秀吉:武田鉄矢、石田三成:鹿賀丈史 他

「独眼竜政宗」 1987年(昭和62年)

伊達政宗

伊達政宗

1987年(昭和62年)に放送された「独眼竜政宗」(どくがんりゅうまさむね)は、原作を山岡荘八、脚本は「ジェームス三木」の王道戦国時代劇。

平均視聴率39.7%を記録した大ヒット作です。この作品にも、東北を舞台に関ヶ原の戦いが描かれています。

見どころは、第36話と第37話。「伊達政宗」(だてまさむね)が、「最上義光」(もがみよしあき)について「東軍」となるか、「上杉家」(うえすぎけ)について「西軍」に味方するか悩んだ末に、あえて徳川家康に逆らって100万石のお墨付きをせしめることに成功します。

さらに、関ヶ原の戦いの混乱に乗じて、東北で独自の侵略戦を進めます。この動きを徳川家康への謀反だと難癖を付けられるという話。権力者である徳川家康を前にしても、対等に渡り合おうとする伊達政宗が小気味よく、テンポよく物語を進めています。

<キャスト>
伊達政宗:渡辺謙、徳川家康:津川雅彦、豊臣秀吉:勝新太郎、石田三成:奥田瑛二 他

「春日局」 1989年(昭和64年)

原作者の「橋田壽賀子」(はしだすがこ)は、NHK朝の連続テレビ小説「おしん」や大河ドラマ「おんな太閤記」(おんなたいこうき)など、女性の生き方を描く脚本家として知られています。

このドラマは、3代将軍「徳川家光」(とくがわいえみつ)の乳母を任された「春日局」(かすがのつぼね)の生涯を描いた作品で、春日局の夫は、「小早川秀秋」(こばやかわひであき)の家臣である「稲葉正成」(いなばまさなり)です。

ドラマで稲葉正成は、徳川家康に内応すべきと考えていましたが、家臣団のなかでも意見が分裂。戦当日、石田三成から出陣の狼煙(のろし)が上がると、慌てて出陣しようとする小早川秀秋ですが、稲葉正成が必死で止めます。すると今度は業を煮やした徳川家康が、小早川秀秋の陣に向けて発砲。どさくさにまぎれて稲葉正成が、兵を出陣させてしまうシーンが描かれています。

<キャスト>
春日局:大原麗子、稲葉正成:山下真司、徳川家光:江口洋介、徳川家康:丹波哲郎、豊臣秀吉:藤岡琢也、石田三成:伊武雅刀、小早川秀秋:香川照之 他

「葵 徳川三代」2000年(平成12年)

関ヶ原の戦いから400周年にあたる年に放送されたのは、第39作「葵 徳川三代」(あおいとくがわさんだい)。第1話のタイトルは「総括関ヶ原」で、両軍の有名武将達が次々と登場し、初回から映画のような迫力ある合戦シーンが描かれています。

第2話から第13話は、関ヶ原の戦い以前の話にさかのぼり、石田三成が挙兵を企てるところや、徳川家康の「上杉討伐」(うえすぎとうばつ)、刻々と状況が変わっていくリアルな合戦の場面。

石田三成の処刑が、語り部である徳川家康の孫「徳川光圀」(とくがわみつくに)の目線で語られていきます。

<キャスト>
徳川家康:津川雅彦、徳川秀忠(とくがわひでただ):西田敏行、徳川家光:尾上辰之介、石田三成:江守徹 他

「天地人」 2009年(平成21年)

直江兼続

直江兼続

「火坂雅志」(ひさかまさし)の小説「天地人」(てんちじん)をドラマ化した作品です。

主人公は、「上杉景勝」(うえすぎかげかつ)を支えた「愛」と「義」の名参謀「直江兼続」(なおえかねつぐ)。

直江兼続が、徳川家康に対して真っ向から反論した「直江状」(なおえじょう)は、徳川家康を激怒させ、これがのちに関ヶ原の戦いへとつながったとされています。

関ヶ原の戦いでは、奥州(おうしゅう)より盟友の石田三成を支持。窮地に陥りながらも、巧みな采配で切り抜ける様子が描かれています。また、北の関ヶ原の戦いである、東北の長谷堂(はせどう)を中心とする上杉勢の戦いも見応えがありました。

<キャスト>
直江兼続:妻夫木聡、上杉景勝:北村一輝、上杉謙信(うえすぎけんしん):阿部寛、徳川家康:松方弘樹、豊臣秀吉:笹野高史、石田三成:小栗旬 他

「軍師官兵衛」 2014年(平成26年)

黒田官兵衛(黒田如水)

黒田官兵衛(黒田如水)

歴史上の有名武将を主役に据えるのが大河ドラマの王道でしたが、このドラマは豊臣秀吉に天下をもたらした、天才軍師「黒田官兵衛/黒田如水」(くろだかんべえ/くろだじょすい)が主人公です。

関ヶ原の戦いは、第49話と第50話で登場します。黒田如水は、天下取りの野望を持って、九州で挙兵。徳川家康の東軍に加勢していると見せかけての九州平定です。

そんななか、息子の「黒田長政」(くろだながまさ)は、関ヶ原の戦いで小早川秀秋の調略に成功。これをきっかけに決着が早々に付き、九州には停戦命令が出てしまったため、黒田如水の野望は夢と消えました。

報告にやってきた黒田長政は「徳川様はそれがしを、このたびの武功第一と我が手を取って、お褒め下さいました」と話しますが、黒田如水は「それはどちらの手じゃ」と返します。つまり、余った手で徳川家康を殺せば、天下はお前のものであったのにという意味でした。

そして、ラストは黒田如水と徳川家康が対面。「どんな世をつくるのか」と言う黒田如水の質問に、徳川家康が「私利私欲なく天下泰平の世をつくる」と答えます。同じ思いに満足した黒田如水は静かに去り、穏やかに余生を過ごすのでした。

<キャスト>
黒田官兵衛:岡田准一、黒田長政:松坂桃李、竹中半兵衛(たけなかはんべえ):谷原章介、徳川家康:寺尾聰、豊臣秀吉:竹中直人、石田三成:田中圭 他

関ヶ原の戦いを現代的にアレンジしたドラマ

「戦国自衛隊・関ヶ原の戦い」 2006年(平成18年)日本テレビ

「戦国自衛隊・関ヶ原の戦い」(せんごくじえいたいせきがはらのたたかい)は、「半村良」(はんむらりょう)のSF小説「戦国自衛隊」(せんごくじえいたい)が原案です。近代兵器を装備した自衛隊が戦国時代へタイムスリップして、武者集団と戦う戦国自衛隊シリーズは、映画、漫画、演劇などにも展開していますが、本作は小説とは異なるオリジナルストーリーになっています。

ドラマの内容は、陸上自衛隊の2小隊26名が、富士山麓の演習地に向かう途中で突然、400年前の琵琶湖畔にタイムスリップ。異変に気が付き偵察を行なうと、徳川家康と石田三成の両軍が激突する関ヶ原の戦いの最中にいることが判明します。

そんなとき、徳川家康が自衛隊員らに気付き、加勢するよう求めてきました。そして、歴史の大きな渦のなか、なるべく干渉せず無事に現代に帰ろうと主張する者、天下を取って生き抜こうとする者、自衛隊の装備の力を我が物にしようと狙う徳川家康と石田三成、それぞれの戦いが動き出すのです。

関ヶ原の戦いをモチーフにしていますが、結末は史実とは違うものになっています。

<キャスト>
伊庭明義(自衛隊):反町隆史、嶋村拓也(自衛隊):渡部篤郎、小早川秀秋:藤原竜也、徳川家康:津川雅彦、石田三成:竹中直人、島左近松方弘樹 他

「歴ドラ 武将がスーツに着替えたら…~関ヶ原の戦いは、サラリーマンの派閥争いだった!?~」 2019年(平成31年)中京テレビ

豊臣秀吉の死をきっかけに、家臣らの権力争いが勃発し、関ヶ原の戦いを迎える一連の動きは、サラリーマンの権力争いと似ていることから着想された現代的コメディドラマ。脚本は、「痛快TV スカッとジャパン」の脚本家「山内正之」(やまうちまさゆき)で、演出は「半沢直樹」(はんざわなおき)、「下町ロケット」の演出「棚澤孝義」(たなざわたかよし)が担当し、コメディタッチで描かれます。

物語は、日本有数の巨大企業「豊臣物産」の豊臣秀吉社長の死去から開始。「息子が成人になり次第、社長にする」と遺言があったものの、現在7歳の息子が成人になるまで誰がどのように会社を動かすのか、といった具体的な人事には触れられていませんでした。幹部らが混乱するなか、社のナンバー2である徳川家康副社長は、自分が次期社長になろうと動き出します。

実は、徳川家康副社長は、豊臣物産に吸収合併された「徳川通商」の元社長で、自分が次期社長になったら、旧徳川通商系の社員で固め、豊臣物産を乗っ取るつもりだったのです。

しかし、豊臣秀吉を敬愛する秘書室長の石田三成は、社長は置かずに役員による合議制を取るべきだと主張します。徳川家康副社長は、その動きを見て、恨みを抱く幹部達を自分の派閥に取り込もうと、あの手この手で懐柔。じわじわと形勢を逆転していくなか、石田三成秘書室室長最大の味方だった前田利家専務が、混乱のなか病に倒れてしまいました。

やむなく石田三成秘書室長は、社のナンバー3である毛利輝元専務を次期社長候補に擁立し、徳川派との対決に挑み、そして天下分け目の関ヶ原へ。幹部社員による決選投票によって社長が決められることになりました。勝負の行方は「意外な人物」が握っていたのです。

<キャスト>
石田三成:角田晃広、徳川家康:多田木亮佑、大谷吉継(おおたによしつぐ):中内こもる、福島正則(ふくしままさのり):渡部将之、黒田長政:菅沼翔也 他

関ヶ原の戦いを描いた小説

司馬遼太郎「関ヶ原」

関ヶ原古戦場

関ヶ原古戦場

司馬遼太郎」(しばりょうたろう)の「関ヶ原」(せきがはら)は、「国盗り物語」(くにとりものがたり)、「新史太閤記」(しんしたいこうき)と並ぶ「戦国三部作」で、累計発行部数580万部以上を誇る大ヒット作です。

1981年(昭和56年)にはTBSでドラマ化され、2017年(平成29年)には映画化もされました。

また、関ヶ原の戦いが登場するドラマには、この司馬作品の影響を受けたものが多く見られます。

この作品は、巧みな人間描写が冴えわたった司馬小説の金字塔。狡猾(こうかつ)な徳川家康はより嫌らしく、周囲に疎まれながらも義を貫き、裏切られて散る石田三成は、より切なく読み手に迫ります。

多くの武将やその家臣、農民達の視点でも、関ヶ原の戦いや武将の人柄の分かるエピソードが散りばめられ、まるでその場にいるかのような臨場感あふれる生々しい人間ドラマに、つい引き込まれてしまうのです。

堺屋太一「巨いなる企て」

「堺屋太一」(さかいやたいち)氏は、小説家であり経済評論家。1960年(昭和35年)通商産業省(現在の経済産業省)に入省し、大阪万博をプロデュース。作家デビューも果たします。退職後も官僚や学者として多才ぶりを発揮。

作家活動としては、第一次ベビーブーム世代を描いた「団塊の世代」(だんかいのせだい)の他、「峠の群像」(とうげのぐんぞう)、「秀吉」(ひでよし)などの歴史小説、社会評論などを発表。安倍政権で内閣官房参与を務め、2019年(平成31年)2月に死去しました。

石田三成

石田三成

「巨いなる企て」(おおいなるくわだて)の主人公は、石田三成。

徳川家康の天下取りに抵抗し、知力の限りでぶつかっていく姿を描いた作品で、30版を重ねた大ベストセラーとなっています。

司馬遼太郎の作品と違うのは、この作品のテーマが「石田三成が関ヶ原の戦いをプロデュースし、実践していく方法」に迫ったものであること。

五奉行を辞していた石田三成が、どのように戦いに必要な資金を集め、東軍より大勢の兵を集めたのか、そしてどのような組織形態を作ったのか。

この視点で描けたのは、大阪万博をプロデュースした堺屋太一氏だからこそでした。

関ヶ原の戦いとドラマ・小説

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