刀剣三十六遣使(室町時代)

~第4章~ がんばれ百次郎 将軍・足利義政を守れ!

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【あらすじ】武永百次郎が義政に近習として取り立てられてしばらくしたある日、百次郎は義政のお忍びに同行することに。そこで百次郎は義政の苦悩を知り、義政との信頼関係を深めていく。そしてその夜、更なる襲撃者から義政を守るため、百次郎は義政から足利家伝来の名刀「髭切」を貸し与えられたのだった。

御霊合戦の始まり

文正2年(1467年)1月17日深夜、管領職を取り上げられ、当主の座も追われた畠山長政が、突如、京都御所の南側にあった自らの屋敷に火をつけ、二千の兵を率いて北上。相国寺の北にある上御霊神社の森に陣を敷いた。後に伝わる「御霊合戦」(ごりょうがっせん)の始まりである。

対する畠山義就も兵三千を率いて政長の陣に押し寄せるが、思いのほか政長勢は強く、義就に代わって日の旗を差した朝倉孝景が討ってかかっても、山名政豊(やまなまさとよ/宗全の孫)が押しよせても、結局のところは攻めあぐねてしまい、容易に決着はつきそうにない。

事態が変化したのは翌18日の未明だった。宗全が戦火から逃れる名目で、後土御門天皇、後花園上皇らを内裏から花の御所へ避難させてからだ。

「兄上! 兄上はいずこにおわす!」

静かだった御所の中に怒声じみた声が鳴り響いた。同時に鎧兜に身を固めた壮年の男が、勝手に御所へと入っていく。
止めようとした百次郎を、側にいた近習仲間が引き留めた。

「やめておけ。あれは義政様の弟、義視様だ」

足利義視(あしかがよしみ)は義政の三歳下の弟で、朝廷でも従二位の地位にある幕府の権力者だ。元々は義政とも仲が良く、いずれ将軍の地位を譲られるとされていたが、義政に息子が生まれてからは、兄弟の絆がもつれ気味であったという。

「いずれにせよ、義視様はなぜ御所にお出でになるのだ」

義視は兄の命で畠山義就に加勢する運びとなり、現在は上御霊神社への攻め手の陣にいるはずだ。
胸が妙に騒ぎだした。百次郎は他の近習たちとともに義視の後を追いかけた。

「お待ちください! 将軍様には義視様の来訪を伝えますので、広間にてお待ちを!」

廊下ではすでに詰めていた武士たちが義視を押しとどめようとしていた。

「ええい、どけ! 火急の用だ! その方どもの出る幕ではないわ」

義視は軽々と武士たちを押しのけ奥に進もうとする。とんでもない力だ。だが武士たちはそれでも義視に取りすがり、その場に何とかとどめようとする。

「どうかお止まりを! 将軍様には必ずすぐにお目通りいただくようお伝えしますゆえ」

「やかましい! 邪魔立てするな!」

義視の手が腰の物にかかる。このまま見過ごすわけにはいかなかった。百次郎は意を決して義視に飛びかかろうとした。そのとき、

「騒々しいぞ」

奥から義政が頭を掻きながら出てきた。寝起きのような顔だが、側詰めの武士たちから天皇が避難してきた話を聞かされると驚きのあまり目を開き、身だしなみを整える準備を百次郎たちに命じた。

「兄上、この期に及んで体裁を整える意味などございません」

「義視か、一体何用だ」

義政がうろんな視線を弟に向ける。義視は兄に詰め寄ると、険しい顔で兄をにらみつけた。

「兄上は外の様子をご覧になったか?」

「いや、ずっと御所におったからの。でも音は聞こえておったぞ。ずいぶん派手にやり合っているじゃないか」

「人ごとのように仰いますな! すべては兄上の責任なのですぞ!」

義視は兄を睨みながら、現在、上御霊神社で起きている事態の発端を話しはじめた。

そもそものきっかけは義政が畠山政長の立場を擁護しなかったことだ。本来であれば無用の混乱を招いた畠山義就を糾弾し、彼に助勢する山名宗全と斯波義廉に罰を与えるところを、逆に山名宗全から饗応を受け、宗全が求めるままに政長を管領の地位から追い出したばかりか、畠山当主の座をも義就に与えてしまった。

政長に大きな過失があったわけではない。さしたる理由もないまま政治的に抹殺されかけた政長が、暴発したのも仕方がない。しかも義政は政長の後ろ盾になっていた細川勝元に、政長を支援しないよう命じている。

勝元も宗全との全面対決を避けたい意向があったのだろう。条件として宗全も義就を支援しないよう約束させていたが、宗全はそれを反故にして義就を支援している。義政自身も義視に義就の陣へと加わるよう命じているではないか。むしろ政長がこの状況で逆上しない方が不自然であり、乾坤一擲(けんこんいってき)の逆転を狙った行動が、このたびの蜂起といえるのではないか。

「いずれにせよ、優柔不断で無規則な兄上の行いが、このたびの事態を招いたといわざるを得ません」

「なるほど。お前の言い分も分からんではない。だが前に話したではないか。力をつけすぎた大名どもから力を削ぐと。その流れからすれば現在の状況こそ、畠山の内乱に乗じて、細川と山名の力を削ぐ好機とは思えないか?」

「だとしても、やり方が乱暴すぎます!」

将軍家の力は夭折(ようせい/若くして死ぬこと)した4代将軍「足利義持」(あしかがよしもち)の代から目に見えて衰えていた。幕府にかつての力を取り戻し、再興したい気持ちは、義政も義視も共通している。それに義政はすべての根回しが終わった後、義視に将軍職を譲ると誓詞まで書いて約束していた。
それが3年経っても果たされていないのはどのような理由か。まさか息子が生まれたので心変わりしたのではないか? 

義視はこれまで溜まっていた不満を吐き出すように一気にまくし立てた。

「お主の言い分はわかる。だが世の中はいまだ安定しておらん。現にいまだって畠山の馬鹿どもがすぐ近くでやり合っているではないか。それに最近はおとなしくしているが、関東の公方とていずれまた暴れ出すぞ。しばらく世の中が治まってからの方が、お前だってやりやすくはないか?」

「兄上はすぐにはぐらかそうとなさる! そうやって誤魔化しを続けて、いずれ将軍の座を息子に明け渡すつもりではありませんか? なにしろいつも義姉様の言いなりゆえ」

「痛いところを突いてくるな。二の句も告げん……」

「しかも、私の将軍就任に反対した伊勢貞親を、このたび幕政にさせたとか」

「いや、それも俺ひとりでは面倒ごとを裁ききれなくてな。だがこれもしばらくのこと。いずれ領地に戻すゆえ……」

「さあ、どうだか。兄上は優柔不断で混乱を招くしかできませんからな」

義政の言葉を鼻で笑うと、義視は再び兄に迫った。

「いずれにせよ、兄上ではこの争乱続きの世の中をまとめきれませぬ。いますぐ将軍職を私に譲りなされ。ちょうどすぐそこにお上(天皇)もおられる」

義視は異様な気迫を漂わせながら兄に迫る。義政も幾分気圧されたように後退るものの、それでも弟を睨む目線を外さなかった。

義視の豹変

「義視、お前……そこまで将軍になりたいのか」

「当然です、でもそれだけではありませんよ。私は兄上にこれ以上の汚名を着てほしくないのです」

殊勝な物言いながらも、義視の顔には禍々しい笑みが浮かんでいる。百次郎はその背後に、ゆらりと陽炎のように悪意が立ち上るのを感じていた。

その気配は先日対峙した『闇の者』そのものだった。

「……義視、お前どこでそんな化け物を拾ってきた」

義政も弟の異常に気づいたようだ。じりじりといつでも逃げ出せるように体を後退させていく。

「化け物? 私などより現在の動乱を招いた兄上こそ、化け物と呼ぶにふさわしい方だと思いますが」

そこで義視は目を細めて面のような顔になると、腰の物に手をかけたまま、義政に向かって言い放った。

「兄上、いまここで腹を召されよ」

「なんだと?」

「その臓物が汚物にまみれていないか、この義視がしかと確かめてさしあげます」

あまりの言い草にさすがの義政も怒りに目を見開いた。だがすぐに口元に意地悪な笑みを浮かべる。

「嫌だね。あいにく死ぬときは美しいものに囲まれての老衰と決めている」

「戯れ言を!」

義視は腰の物を抜くと、兄に向かって斬りつけた。

室町時代イラスト4――っ!
とっさに百次郎の体が反応した。髭切を抜き放ち、義視の凶刃を受け止める。とてつもない力だ。刃を受け止めた両腕に衝撃が走り、体が後ろに押しやられる。姿勢を保つのがやっとのありさまではあったものの、それでも百次郎は強気の態を崩さなかった。

「義政様は討たせませんよ」

「小僧、邪魔立てするつもりか!」

およそ人のものとは思えない咆吼が周囲一帯に鳴り響いた。声を聞いた周りを囲む武士は血の気を失い、情けなくその場に座り込む。
百次郎が威圧されずにすんでいるのは、「髭切」の力だろうか。義視の体に巣くう『闇の者』がいかなる邪気を発しようと、「髭切」の刃がそれらすべてを切り裂いてくれているようだった。

「この人には、この世でまだやるべきことがあるんです!」

百次郎は『闇の者』に言い放った。

「小僧、貴様あのときの……」

体は義視でも『闇の者』には以前の記憶があるようだ。

「ええ、以前のようにはいきません。覚悟するのはそちらです!」

百次郎は『闇の者』から距離を取ると、再び上段に斬り込んでいった。それでも相手は将軍の弟だ。傷を負わせるわけにはいかない。とっさに髭切を持ち替えて、棟で肩口を打ちすえる。

「百次郎、何をしている! 手加減などできる相手か!」

気づいた義政が声を上げる。

「ですが、義視様の体が相手なんですよ!? 斬るなんてできませんよ!」

「構わん、俺が許す! だが、できるなら一息に殺してやってくれ」

「……と言われてもですね、うわっ!」

鋭い打ち込みをかろうじてかわす。上品な剣法らしく素直な太刀筋が救いだった。

「小僧、その刀は……」

義視の顔が不意に歪んだ。どうやら百次郎が手にする刀が尋常ならざるものと感じ取ったようだ。

「ええ、お察しの通りです。これは『髭切』。鬼の腕をも切るという伝説の刀です!」

力こそ及ばないものの、体捌きの速度は百次郎が有利だ。狭い廊下での斬り合いにはなったが、太刀を振り回せないのは『闇の者』も同じだ。むしろ膂力の有利を生かせないぶん、前より有利に戦える。

これなら義視の意識を断って、憑依した何かを追い出せるかもしれない。
百次郎が思ったそのとき、『闇の者』が後ろに飛んで距離を取った。

「おのれ小僧……」

容易くは百次郎を排除できないと察したのか、『闇の者』は踵を返した。そのまま奥へと走っていく。

「まさか、奴め!」

義政が血相を変えて後を追う。百次郎も慌てて義政に続いた。

行き先は義政の妻である日野富子(ひのとみこ)と、まだ幼い義尚(よしひさ)がいる部屋だった。

「日野富子、お前さえいなければ!」

そこでは先に到着した『闇の者』が刃を富子に向けていた。富子は息子を抱いたまま部屋の隅で震えている。

「誰か! 誰かおらぬのか!」

怯えた富子が声を上げる。

「富子!」

義政が捨て身で飛び込もうとしたが、百次郎はそれを制して前に出た。「髭切」を上段に構え、棟を頭目がけて振り下ろす。

「小僧! しつこいぞ」

『闇の者』は打ち込まれた棟を受け止めると、怒りの形相を百次郎に向ける。

「将軍に執着する貴方ほどではありませんよ」

「やかましいわ!」

叫びざまに『闇の者』は横なぎに胴を払う。百次郎は先を読み見切り、それを避けると、素早く胸元に潜り込み、鳩尾(みぞおち)に膝をたたき込んだ。

「ぐっ!」

不意を突かれた『闇の者』は腹を押さえながら後退る。

「組み討ちか、つくづく下賎な者だ……」

「あいにく、上品な剣術だけでは生き残れなくて!」

そのまま棟で打ち据えようとするが、『闇の者』は尋常ならざる動きでそれを避け、百次郎の足を斬りつける。間一髪それを避け、間合いを取る。

「小僧、それだけの力がありながら、なぜ自分のために使わない」

荒い息を吐きながら『闇の者』が口にする。

「なぜといわれても、それが当たり前だからに決まっているじゃないですか」

百次郎は言いながら脳天目がけて打ち付ける。
思えば昔から自分は人を守ってばかりいると、百次郎は思った。別に意識してのことではない。兄の後を追いかけて、剣を学びながらそれが当たり前と感じていたし、これからもそうありたいと思うだけだ。
そしてふとある考えが頭をよぎった。

遣使(けんし)とは特殊な力をもった者ではなく、誰かを守るための運命にある者を指す言葉なのかもしれない。

『闇の者』は百次郎の一撃をなぎ払うと、体を一歩後退させ、刀を正眼に構える。守備を固めながら、百次郎の隙を突く戦法に切り替えたようだ。

「あらら、これは予想外かも……」

相手が初めて見せる反応に百次郎は戸惑った。
百次郎の剣術は、田舎剣法に組み討ちを加えた独特のもので、夜盗への対応に特化したものだ。

一方『闇の者』の剣術は、刀同士の斬り合いに重きを置いた完成度の高い技術だ。古くは奈良時代の撃剣の頃から練り上げられた戦法は、刀同士で斬り合う技術の集大成ともいえる。兵法としての熟練度からすれば、百次郎の田舎剣法など足元にも及ばない。

これまで百次郎が互角以上に戦えてきたのは「先読み」の力があってこそだ。先読みと組み討ちの2つを封じられては、途端に手も足も出なくなる。
仮に『闇の者』が百次郎の斬撃を恐れず、身をもって百次郎の動きを止める手段に打ってくれば、先読みなど恐れる必要はないのだ。むしろ百次郎が棟打ちにこだわるいまだからこそ、『闇の者』は後の先手を狙うような、戦法に切り替えたといえる。
元となる技術は適わず、力でも勝てない、ならば徹底的に先読みを使った思考戦に持ち込むしかない。

これまでの『闇の者』との戦いを解析して、相手が取るであろう動きを先読みする。
まるで「詰め将棋」を解くような思考の末に、百次郎は最適ともいえる解を導き出した。

「お待たせしました、行きますよ!」

先読みに絶対の自信があるわけではなかった。それに『闇の者』の斬撃は脅威であった。百次郎の刃が一度や二度当たったくらいでは『闇の者』は倒せないだろうが、『闇の者』の攻撃は一度食らえば、百次郎は再起不能になってしまう。頭に与えられれば脳漿が飛び散り、胴に当たれば内臓どころか、胴体が真っ二つにされてしまうに違いない。

それでも百次郎が逃げないのは、誰かを守りたい信条のほか、心の片隅に、命のやりとりを楽しんでいる闘争者としての度し難い本能があったからかもしれない。
百次郎は前方に思い切り突きを放つ。『闇の者』は体を翻してそれをかわす。かわしながら打ち込まれる喉突きを、百次郎はかわして相手の両目を指で突く。『闇の者』はそれをかわして後ろに飛ぶ――だが百次郎に足を踏まれて動けない。そこで百次郎は喉に突きを放つが、『闇の者』は首をひねって避けると、細かい動きで斬りつける。
二度、三度、百次郎はそれらの斬撃を紙一重でかわすと、追い打ちをかけてきた『闇の者』の足を払い、床の上に転倒させた。そして素早く胸板の上にまたがると、脳天に刃を突きつける。

「なんという技の切れだ……」

馬乗りにされた『闇の者』の口から、驚愕の言葉がこぼれ落ちる。
わずか10手での決着。

傍から見れば百次郎の圧勝にも見えるかもしれない。
だが裏を返せば、先読みを使っても『闇の者』は10手まで耐えたわけだ。『闇の者』が確実に先読みに対応していた事実は百次郎を戦慄させた。

とはいえ、この場の優位は動かない。「髭切」なら、このまま義視を殺せるだろう。だがそれが本当に義政のためになるだろうか。百次郎は疑問に思った。
ふと義政を見る。
やはり目の前で実弟を殺されるのは耐え難いものがあるのだろう。唇をきつく噛みしめ、顔を伏せている。

「ごめんなさい!」

百次郎は小さな声でつぶやくと、髭切の棟で『闇の者』の頭を打ち据えた。額から鮮血ともに、陽炎のような妖しい何かが立ち上る。もやもやと実態のないそれはしばらく部屋に漂っていたが、やがてあっさりと霧散した。

「……終わった、のか?」

義政は力なくその場にへたり込んだ。

「ええ、たぶん。でも申し訳ありません」

「何が?」

「またしても『闇の者』を取り逃がしてしまいました……」

「仕方ないさ。義視を殺したくなかったのだろう? 俺のために」

「まあ……」

「感謝するよ。お前のおかげで、実の弟を殺さずに済んだ」

額を割られた義視は意識こそ失っているが、命に別状がないようだ。

「義政殿! これはいかなる事態ですか!」

ほっとする義政の背後から、日野富子が激しく怒鳴りつけた。

「あ、いや、これは……」

なんと説明したらよいかと、しどろもどろになった義政に、富子は忌々しげな眼差しを向ける。そして三歳になる我が子をしっかりと抱きしめながら、

「まさか、こんな茶番まで演じてこの子を亡き者にしようと?」

「お前、どこをどう見たらそんな風に見えるんだ!」

あまりの言いように、さすがの義政も激高した。

「茶番なはずがないだろう! 百次郎が身を挺して俺たちを守ってくれたんじゃないか!」

「まあ白々しい。確かに迫真の演技でしたね。義視殿が気を失う程度には。でも私の目は誤魔化されません! あなたはこの子を殺して義視殿を将軍にしたいのですわ!」

富子は勝手にそう決めつけると、子どもを連れて御所の奥へと引っ込んでしまった。

「あの、義政様……」

なんとも後ろめたい気分になりながら、百次郎は義政に声をかけた。

「ああなると、あいつはしばらく口を利いてくれん。しかも今回は命を狙われたわけだからなぁ……」

義政はため息混じりに言うと、力なくうなだれた。

エピローグ

その日の夕方、御霊合戦も決着がついた。

元より義就側には山名宗全に斯波義廉、山名政豊、朝倉孝景といった諸将の軍勢がついていた上、政長は孤立無援で不利な状況だった。
追い詰められた政長勢は、上御霊神社の社殿に火を放ち、自害を装って逃亡、細川勝元の屋敷に逃げ落ちた。

御霊合戦は義就側の勝利に終わった。
名目として義政との約定を守った勝元は、政長を見殺しにした形となり、武士としての面目を失ってしまう。結果、勝元は宗全との決戦を決意し、領地から多数の兵を集結させていく。御所は世の平安を願って文正から応仁に元号を変えるも、それは人々の願いとは裏腹に、歴史に残る大乱の名称となってしまう。

合戦の後、上御霊神社を訪れた義政と百次郎の目の前にあったのは、戦火による焼け跡と、犠牲となった武士や町人の死体だった。

「どうしてこんな結果になった? これも俺が招いた災禍とでも言うのか……」

呆然とする義政に百次郎はかける言葉がなかった。
さらなる大乱の気配が漂う中、百次郎と義政の頭に再び声が響き、神刀とその使い手が現れると神託があった。

「なあ、そろそろ現れる頃じゃないか?」

義政があくび混じりに口にした。
いつの間にか時が経っていたようだ。山の向こうから陽が昇り始め、家からは人の声が聞こえてくる。

そのとき、目の前の空間がねじれ、中から見慣れない服装をした優しい顔の少年が現れた。
目鼻立ちが整った少年で、とても『闇の者』を討てるようには見えないが、手にした神刀は尋常ではなかった。見かけは年代物の刀剣・日本刀だが、秘めた力はおよそこの世のものとは思えない。

「こいつが、そうなのか?」

「ええ、そのようです」

見慣れない景色で飛ばされてきたのだろう。少年は珍しそうな顔つきであちこちを見回している。
これから百次郎が果たす役割は、目の前の少年を『闇の者』の元へと案内することだ。
百次郎は笑みを浮かべると、少年に話しかけた。

「初めまして。遣使の武永百次郎と言います。そしてこちらが第8代将軍の足利義政様です」

武永百次郎
武神刀剣ワールド武神刀剣ワールド
名古屋刀剣博物館「名古屋刀剣ワールド」に偶然訪れた若者と「神刀・千歳丸」と共に、「闇の者」を討ち滅ぼすべく、様々な時代へと旅立つ育成「刀剣ゲーム」。
刀剣歴史漫画
刀剣が登場する漫画作品を、刀剣の描写とともにご紹介します。
刀剣歴史小説
著名な小説家の書籍を、特徴的な刀剣の描写とともにご紹介します。

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