戦後生まれの刀剣小説家

宮部みゆき

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時代小説短編集『本所深川ふしぎ草紙』『かまいたち』を皮切りにミステリー作家と同時に時代小説家としても活躍を続ける宮部みゆき(みやべみゆき)。捕物帳物の創始者・岡本綺堂や南町奉行・根岸肥前守鎮衛が書き留めた江戸時代の巷の奇談に大いに影響を受けました。地元・深川を拠点に生み出されるその時代小説では、恐ろしく妖しくも、どこか人情味あふれる日本刀が描かれます。

落語・講談・テレビ時代劇を子供の頃から愛好

宮部みゆきは下町の東京都江東区深川で生まれ育ちました。

父親の影響で子供の頃から落語や講談の他、NHK時代劇・NHK大河ドラマのテレビ時代劇を楽しみ、やがてそれらの原作となった歴史・時代小説に親しみます。山本周五郎藤沢周平、永井路子、海音寺潮五郎、そして捕物帳物の創始者・岡本綺堂などを順に読んだと言います。

スティーブン・キングや岡本綺堂などのミステリー小説を知った高等学校時代を経て、法律事務所でタイピストとして働く傍ら小説教室へ通います。

そして、山野田みゆき名義で投稿した短編「祝・殺人」「デッド・ドロップ」「騒ぐ刀」がそれぞれ、第25回オール讀物推理小説新人賞、第47回小説現代新人賞、第11回歴史文学賞の候補になりました(1986年)。

かまいたち

かまいたち

その翌年、宮部みゆき名義「我らが隣人の犯罪」で第26回オール讀物推理小説新人賞を受賞します(1987年『オール讀物』掲載)。

さらにその翌年には短編「かまいたち」が第12回歴史文学賞の佳作に入選しました(1988年『歴史読本』掲載)。

短編「かまいたち」は、江戸時代中期、江戸幕府第8代将軍・徳川吉宗の時代です。南町奉行に大岡越前守忠相(おおおかえちぜんのかみただすけ)が就任した時期に起こった辻斬り事件に、町医者の娘が解決に挑みます。

歴史文学賞の第1回は、尾崎秀樹、杉浦明平、中野好夫、南條範夫、新田次郎を選考委員として改めてスタートしました(1976年)。当初、大佛次郎司馬遼太郎、中野好夫、中山義秀、南條範夫を選考委員として準備されるも中止なった8年後のことです。

宮部みゆきが候補となった時は、尾崎秀樹、早乙女貢、杉浦明平、南條範夫が選考委員を担当しました(1987年。賞は2007年終了)。

根岸鎮衛『耳嚢』からの大きな影響

耳囊

耳囊

短編「かまいたち」を表題にした自身2冊目の時代小説短編集『かまいたち』(1992年)には、江戸時代中・後期を生きた旗本・根岸肥前守鎮衛(ねぎしひぜんのかみやすもり-しずもり)が登場する短編2編が収められました。

根岸肥前守鎮衛は自身が生きた時代の巷の奇談を集めた随筆集『耳嚢(みみぶくろ)』(各100話の全10巻)を書き記した人物です。宮部みゆきは同著から物語の着想を得るなど大きな影響を受けていることを明かしています。

短編「騒ぐ刀」と短編「迷い鳩」(1991年『別冊歴史読本』掲載)には、江戸幕府第11代将軍・徳川家斉の時代、南町奉行に就任していた時期の根岸肥前守鎮衛その人も登場します。

騒ぐ刀

短編「騒ぐ刀」は、日本橋通り町の一膳飯屋・姉妹屋の面々が主な登場人物です。火事で両親を亡くし主人を務める長男・六蔵の下で、次男の直次、妹のお初、六蔵の妻のおよしが働いています。

ある日、同心・内藤新之助から岡っ引きでもある六蔵のもとにうめき声を上げる不思議な脇差が預けられます。現在で言えば警察官にあたる同心は、自分の給料で民間人協力者・岡っ引き(御用聞き)を雇っています。六蔵の妹・16歳のお初は、そのうめき声を理解できる不思議な力を持ち、その騒ぐ刀にまつわる不可思議な事件を解決していくことになります。

おおおおおおおう――と、その声は聞こえた。刀は確かにうめいていた。一声、二声、雨の夜に野良犬の遠吠えするような、死んで行く者をよみの国から呼び戻そうと井戸の底に向かって呼びかけているような。耳を覆っても指の隙間から、懇願するかのように忍び込んでくる。
「これは一体何――」
六蔵がおよしの顔を掴んで黙らせた。
おおおおおお――う
四半時どころか、一晩中のように長く感じられるほど時が過ぎたあと、震えながら長く尾を引いて最後に一声うめくと、刀は黙った。

『騒ぐ刀』より

そして「虎が暴れている」と騒ぐ刀の声を聞くことができたお初は、その謎に挑もうとします。

お初は脇差を元通りにしながら、考え込んだ。しっかりした物言いや、くるくると店を切り回すところから、少し大人びて見られがちだが、お初はまだ十六である。若い娘が手にするには少し殺風景な脇差など抜きにすれば、こんな風にもの想いに沈んでいるところなど、恋わずらいとでも見られるかも知れない。
(虎が暴れている……)
この時代にしろいつにしろ、日本に虎のいたためしははい。屏風絵や蒔絵なら話は別だが、とんち話ではあるまいし、絵のなかの虎が抜け出して暴れ回ったという話など、聞いたこともない。
(それに……)
この声を聞きとどけたなら――ということに、お初はこだわっていた。今のところ、ほかには誰一人、刀のこの言葉を聞き分けた者はいない。お初だけなのだ。そこに、なにがしか責任のようなものを感じずにはいられない。

『騒ぐ刀』より

こうした妖刀の物語は岡本綺堂と同時代に活躍した行友李風『月形半平太』『修羅八景』や林不忘『丹下左膳』などの戯曲、歴史・時代小説が先行しています。

短編「騒ぐ刀」から『お初』シリーズへ

ミステリー小説と時代小説とを並行して書く宮部みゆきは、長編デビュー作の書き下ろし『パーフェクト・ブルー』(1989年)や作家に専業した直後に執筆した第2回日本推理サスペンス大賞受賞作『魔術はささやく』(1989年)を経て、自身初の時代小説短編集『本所深川ふしぎ草紙』(1991年)で第13回吉川英治文学新人賞を受賞します。

7つの連作短編(1988~1991年『別冊歴史読本 特別増刊号』不定期掲載に書き下ろし)が収録された同作は、本所七不思議と呼ばれる本所=現在の東京都墨田区に江戸時代から伝わる奇談をもとに書かれます。宮部みゆきはこの奇談を地元の人形焼の山田屋(墨田区錦糸町)の包み紙で知ったと言います。

岡っ引きの茂七が脇役として活躍もする同作は、受賞の10年後、『茂七の事件簿 ふしぎ草紙』シリーズとしてNHK時代劇化(2001~2003年)、のちに漫画化もされました(2013年)。

震える岩 霊験お初捕物控

震える岩 霊験お初捕物控

続いて、本所深川を舞台にした捕物帳物『百年目の仇討始末』(1992~1993年『歴史読本 特別増刊号 時代小説』掲載。単行本時『震える岩 霊験お初捕物控』改題)を発表します。

自身初の新聞連載小説『天狗風』(1994~1995年『東奥日報』他連載。単行本時『天狗風 霊験お初捕物控2』改題)も続き、『お初』シリーズとなりました。

同シリーズでは、主人公の一膳飯屋・姉妹屋のお初が他人には見えない存在が見える不思議な力を持ちます。兄で岡っ引きの六蔵、根岸肥前守鎮衛にお初らの手助けを命じられた与力見習いの古沢右京之介、そして猫の鉄らと協力し、難事件を解決します。初期の短編「騒ぐ刀」「迷い鳩」が『お初』シリーズの原型となっています。『お初』シリーズも漫画化されています(2006~2009年)。

その後も江戸時代を生きる庶民をテーマにした時代小説は、12編・1年の各月をテーマにした時代小説短編集『幻色江戸ごよみ』(1993~1994年『歴史読本』連載に書き下ろし)、岡っ引きの茂七が主役として活躍し、初ものをテーマに描く連作時代小説短編集『初ものがたり』(1994~1995年『小説歴史街道』不定期連載)と続きます。

運命の剣の連作

運命の剣 のきばらし

運命の剣 のきばらし

宮部みゆきは時代小説家として活躍していくなかで、7人の当時の人気時代作家のリレー小説『運命の剣 のきばしら』(1996~1997年『小説歴史街道』連載)にも参加します。

鎌倉時代末期の備前長船で生まれた剛刀・のきばしらを巡るこの連作では、中村隆資・鳴海丈・火坂雅志・宮部みゆき・安部龍太郎・宮本昌孝・東郷隆と順に書き継がれました。

鎌倉時代、室町時代、戦国時代、江戸時代、幕末、明治時代、第二次世界大戦の時代をのきばしらは巡っていきます。

宮部みゆきが担当した第4話「あかね転生」では、江戸時代中期、江戸幕府第8代将軍・徳川吉宗の時代が舞台とされました。

深川の質屋・井筒屋を営む子供のいない夫婦が大水害の際にみなしごになった小さな女の子をもらいうけます。女の子は言葉を話せないものの犬とは話せるようです。

そんなとき、謎の刀・のきばしらが質草として持ち込まれ、女の子との因縁がやがてあきらかになっていきます。

地元・本所深川の江戸時代を描き続ける

宮部みゆきは時代小説と並行して執筆するミステリー小説・サスペンス小説で数多くの賞を受賞し、その名を広く知られていきます。

第45回日本推理作家協会賞・長編部門を受賞した書き下ろし『龍は眠る』(1991年)。第6回山本周五郎賞受賞作『火車』(1992年)。第18回日本SF大賞受賞作『蒲生邸事件』(1996年)。第120回直木三十五賞と第17回日本冒険小説協会大賞国内部門大賞受賞作『理由』(1998年)。第55回毎日出版文化賞・特別賞を受賞した『模倣犯』(2001年)はこのミステリーがすごい!国内編第1位と第52回芸術選奨文部科学大臣賞も受賞しました。こうした功績などから第5回司馬遼太郎賞も受賞しました(2002年)。

多彩なミステリー作家として知られていく間も、地元・本所深川の江戸時代を舞台にした時代小説を書きます。

『ぼんくら』(1996~2000年『小説現代』連載)では、主人公のぼんくらの同心・井筒平四郎(臨時の本所深川方定町廻同心)が難事件の解決に挑みます。岡っ引きの茂七も登場します。

あかんべえ

あかんべえ

同シリーズは、『日暮らし』(2001~2004年『小説現代』連載)、『おまえさん』(2006~2009年『小説現代』不定期掲載に書き下ろし)と続きました。『ぼんくら』は単行本化の5年後にはラジオドラマ化(2005年)、その5年後には漫画化(2010年)、さらにその4年後にはNHK時代劇化されました(2014、2015年)。

その間、『あかんべえ』(1998~2001年『歴史街道』連載)を執筆します。

深川の新しい料理屋・ふね屋が舞台の物語です。30年前に火災で燃えたお寺が向かいにあり、元・墓場の上に建てられた料理屋の居抜きとしてふね屋は開業します。

けれども店は謎の現象によってお客からはお化け屋敷とみなされてしまいます。店主の娘・12歳の少女おりんは不思議な力でその謎を解決していくことになります。

浪人の亡霊によって騒ぐ刀

おりんは高熱から蘇ると人には見えない存在が見える力を持ちました。ふね屋にはそんなおりんにだけに見える、按摩の爺さん・あかんべえをする女の子・美人の姉さん・若侍・おどろ髪の浪人の5人のお化けが登場します。

なかでもおどろ髪(*手入れしていないぼさぼさの髪のこと)と呼ばれる浪人は、ふね屋に初めてやってきたお客の前で刀を暴れさせ、店をお化け屋敷とした張本人です。

おりんは太一郎の着物の後ろ襟をぎゅっとつかんだ。そして、父の身体のぬくもりを励ましに、刀の反りを目でたどっていった。刀を握っている毛深い腕が見えた。手の甲にまでみっしりと毛が生えている。太い腕だ。袖の切れた汚い着物だ。垢じみて乱れたよれよれの襟だ。はだけた胸元からのぞくもじゃもじゃの胸毛。切り株のような首。
その上に、髪をおどろに乱したいかつい男の顔がのっかっていた。

『あかんべえ』より

そんなお化けのおどろ髪の心をお初は感じ取ります。

おりんはいっぱいに目を見開いて、じいっとおどろ髪の顔を見つめた。よく見ると、彼の顔にはたくさんの傷痕があった。刀傷の痕、痣のような痕、ぎざぎざだったり、爪が食い込んだような形だったり、肉がへこんだままになっていたり、さまざまな形の、大きさも種類もとりどりの傷痕。それが彼の顔全体を、何とも不愉快な印象で包んでしまっている。右の眉の端っこのところなど、傷痕のせいで、眉毛が生えなくなってしまっている。鼻も歪んでいるし、くちびるも上下がひどくふぞろいだ。
ふと、おりんの顔のなかで閃くものがあった――これらの傷痕はみんな、この人が生きている頃、人を殺すときに、その恐ろしい所業を為すときに、つけられたものではないのか。殺されてゆく哀れな人びとが、この人の顔をひっかいたり、この人を叩いたり、この人を突き飛ばして逃げようとしたり、この人に反撃したり、そうやってつけられた無数の抵抗の痕が、この顔の上に印となって残っているのではないか。

『あかんべえ』より

本所深川物と江戸ブーム

御宿かわせみ

御宿かわせみ

宮部みゆきが描き続ける江戸時代の本所深川を舞台にした時代小説には、多くの先行作があります。

山本周五郎の市井物によってその基礎が築かれ、長谷川伸門下の池波正太郎の『鬼平犯科帳』『剣客商売』でも度々登場します。同じく長谷川伸門下の平岩弓枝が『御宿かわせみ』で旅籠を舞台に情緒的に描きました。

その後、江戸しぐさの提唱やNHK大河ドラマ第21作目『徳川家康』(1983年)放送などをきっかけに、江戸ブームが起こります。

その時期、北原亞以子は『深川澪通り』シリーズを発表。江戸風俗研究家の杉浦日向子も活躍していきます。東京都江戸東京博物館も開館(1993年)。NHK『コメディーお江戸でござる』も放送されました(1995~2004年)。

以後、宇江佐真理の短編集『深川恋物語』、山本一力『あかね空』や『損料屋喜八郎始末控え』『深川黄表紙掛取り帖』『深川駕籠』各シリーズ、藤原緋沙子『隅田川御用帳』シリーズなど、主に女性の時代小説家によって多くの本所深川の市井物が書かれています。

その後の宮部みゆき

おそろし 三島屋変調百物語事始

おそろし
三島屋変調百物語事始

宮部みゆきは『模倣犯』の高い評価以後、ミステリー色よりも物語のおさまりの良さを重んじると語り、そんなミステリー小説・サスペンス小説と時代小説とを並行して執筆します。

新しい物語作りを意識した初期作となる『おそろし 三島屋変調百物語』シリーズはライフワークとして99話が予定されています(2006年~『家の光』他連載中)。江戸は神田で人気の袋物屋・三島屋に訪れる人々が話す奇談を店の少女が聞き集めます。

また、史実をよりふまえた新たな領域に挑んだ時代小説も多数執筆します(『孤宿の人』『桜ほうさら』『荒神』『この世の春』)。

『孤宿の人』(2001~2005年『歴史読本』連載)では江戸時代後期の幕臣で妖怪とも言われた鳥居耀蔵(とりいようぞう)が反対派によって幽閉されるに至った不遇の生涯をモデルに、幽閉された元勘定奉行と下女との交流を描きます。

作家生活30周年に執筆した『この世の春』(2015~2016年『週刊新潮』連載)では笠谷和比古(現・国際日本文化研究センター名誉教授)『主君「押込」の構造 近世大名と家臣団』を読んだことで押込(*家臣が主君を幽閉すること)を題材にしました。

その間、推理サスペンス『名もなき毒』で第41回吉川英治文学賞を受賞しています(2007年)。

地元・深川を拠点に独自の江戸情緒を創出し続ける宮部みゆき。その原点には、根岸肥前守鎮衛が生きた江戸中・後期の巷の奇談を集めた随筆集『耳嚢』があります。そんな宮部みゆき作品で登場する日本刀は恐ろしく妖しくも、どこか人情味あふれるものとなっています。

著者名:三宅顕人

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山本兼一

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『いっしん虎徹』『おれは清麿』で実在した刀工も取り上げた山本兼一(やまもとけんいち)。42歳の年に作家デビュー後、病で早世するまでの15年間の作家生活のなかで20作以上の単行本を遺しました。その作品の多くでは技術者・職人への注目がなされ、道具に注目し続ける先輩作家・東郷隆も想起させます。そんな山本兼一は体験取材を重んじ、刀工小説では刀匠・河内國平への綿密な取材に基づいたうえで独自の美学が導き出されています。

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