日本刀を知る

国宝の日本刀・重要文化財の刀剣

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国内外問わず、美術品として高い人気を誇る日本刀。時代を超えて現代に残る日本刀は、その歴史的・美術的価値を守るために、「有形文化財」として登録されることがあります。日本刀の価値を高め、後世に残すための「文化財保護法」。また、それに付随する「国宝」や「重要文化財」とは何か、どのような基準で登録されるのか。分かりやすくご紹介します。

文化財保護法とは

日本における「文化財」の基準

「文化財」と一言で言っても、その種類は様々。「文化財保護法第2条第1項」で定められる文化財は、以下の6つに大別されます。

  1. 有形文化財

    「建造物」、「絵画」、「彫刻」をはじめとする有形の文化的所産で(有形の物と一体を成す土地やその他物件を含む)、日本国内で歴史上、または芸術的に価値が高い文化財、及び考古資料や学術的に価値の高い歴史資料。

  2. 無形文化財

    「演劇」、「音楽」、「工芸技術」などの無形の文化的所産で、日本国内で歴史上、または芸術的に価値が高い文化財。

  3. 民俗文化財

    「衣食住」、「生業」、「伝統的な風俗習慣」、「民族技術」及び、その中で使用される衣服や家具、家屋など、生活推移の理解に必要となる文化財。

  4. 記念物

    貝塚や史跡など、日本国内で歴史上、または学術的に価値が高い文化財。また、庭園や山海などの名勝地で、日本において芸術的、または鑑賞上価値がある場所の他、動植物とその生息地、地質鉱物など学術的に価値が高い文化財や場所。

  5. 文化的景観

    人びとの生活、及び生業、地域ごとの風土で形成された景観地で、日本国民の生活や生業を理解する上で欠かせない景観。

  6. 伝統的建造物群

    宿場町や城下町の他、集落など古くから変わらない景観を保ち、歴史的風致を形成する伝統的な建造物群。

法律上の分類は上記6つですが、この他にも発掘調査を必要とする埋蔵された文化財「埋蔵文化財」や、地方公共団体の条例で文化財と定められる物など、様々あります。いずれも歴史的・学術的・芸術的等の観点において、価値が高いと見なされた文化財であり、記録・保護・保存を図ることを目的にしているのです。

重要文化財の基礎知識

重要文化財とは

重要文化財

重要文化財

重要文化財」とは、有形文化財のうち特に重要とみなされた文化財のこと。「重文」と省略して呼ばれます。

1950年(昭和25年)に制定された「文化財保護法」に基づいて、文部科学省が絵画、彫刻の他、建造物などのうち、歴史的・芸術的に重要な価値があると認定した、保護の対象となる有形文化財のこと。

重要文化財に指定されると、保存や修繕において国家から援助を受けられる一方で、文化財を保護するために輸出の禁止や、現状に手を加えることを制限されるなど、様々な制約が課されます。

なお、似た言葉として「重要無形文化財」や「重要有形民俗文化財」などがありますが、重要文化財はあくまでも「国家が指定した有形文化財」のみを示すため、注意が必要です。

建造物と美術工芸品

重要文化財は、大きく分けて2つの部に分かれます。

ひとつは、「建造物の部」。2019年(令和元年)9月末の時点で重要文化財の指定を受けているのは、2,503件5,083棟。

もうひとつは、「美術工芸品の部」。美術工芸品の重要文化財は、さらに①「絵画」、②「彫刻」、③「工芸品」、④「書跡」、⑤「典籍」、⑥「古文書」、⑦「筆跡」の7部門に分かれます。

2019年(令和元年)7月末の時点で重要文化財の指定を受けているのは10,772件。また、2015年(平成27年)時点での都道府県別では、東京都が最多で、2,744件が重要文化財に指定されています。

なお、重要文化財に指定されたものの、その後所有者が転居してしまったり、盗難に遭ったりなどが原因で所在が不明になることも多く、2017年(平成29年)時点で164件の重要文化財が所在不明となっており、そのうち76件が日本刀と最多です。

指定解除の条件

重要文化財は、一度指定されたらその後は解除不可と言うことはなく、一定の条件を満たした場合は指定を解除されることもあります。

文化財保護法第29条では、「国宝や重要文化財としての価値を失った場合、文部科学大臣はその指定を解除することができる」と言う規定があり、火災による焼失を理由に指定を解除された事例も存在。

また、焼失以外では、科学的調査を経て現代の作品と判明した陶器3件の他、縄文時代に作成された土器が推定復元(欠損部分を推定し復元すること)であったことを理由に指定を解除されています。

重要文化財の日本刀

太刀/銘 備州長船住景光

五箇伝のひとつ「備前伝長船派の「景光」が作刀した太刀

小板目肌(こいためはだ)が詰んでいる点の他、景光がはじめたと言われる「片落ち互の目」(かたおちぐのめ)の刃文が特徴で、その地鉄(じがね)は長船派の中で最も美しいと言われています。高低の少ない焼きに、直刃の小湾れ(のたれ)、小丁子、小互の目が景光に多く観られる傾向です。

本太刀は、鎬造(しのぎづくり)、庵棟(いおりむね)、腰反りの浅い姿の他、身幅と長さ共に景光らしい1振と言えます。

太刀 銘 備州長船住景光
太刀 銘 備州長船住景光
備州長船住景光
正和五年十月日
鑑定区分
重要文化財
刃長
75.8
所蔵・伝来
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕

太刀/銘 国行

五箇伝のひとつ「山城伝」の開祖と言われる「来一派」の「国行」が作刀した太刀。

国行の作風は2種類に分かれ、ひとつは細身で優美さを感じさせる古雅な作風。もうひとつは、鎌倉時代中期によく観られる、幅広で中反り、または腰反りが高い豪壮な姿で、猪首鋒/切先(いくびきっさき)となった作風。

本刀は、前者の作風。やや細身で踏張り(ふんばり)があり、足や葉がよく入り、(におい)が深く小沸(こにえ)が付き、金筋がかかる刃文は小乱(こみだれ)になっています。

太刀 銘 国行
太刀 銘 国行
国行
鑑定区分
重要文化財
刃長
74.5
所蔵・伝来
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕

刀/無銘 貞宗

五箇伝のひとつ「相州伝」の「貞宗」が作刀した打刀

貞宗は、無銘の作がほとんどでありながらも、その知名度は高く「相州伝」を代表する刀工です。

作風は、師である「正宗」を思わせる作が多く、控えめながらも奥ゆかしさを感じさせるのが特徴。なかでも地鉄は精巧で美しく冴えており、鍛え方に関しては正宗を凌ぐ仕上がりが観られます。

刀  無銘  貞宗(重要文化財)
刀 無銘 貞宗(重要文化財)
無銘
鑑定区分
重要文化財
刃長
69.1
所蔵・伝来
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕

国宝の基礎知識

国宝とは

国宝

国宝

「国宝」は、重要文化財のうち、日本国内に留まらず世界的に見ても他に類がないほど価値のある「国民の宝」として、国(文部科学大臣)が指定した文化財のこと。

重要文化財の「美術工芸品の部」(絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書、筆跡の7部門)の他、建造物、考古資料や歴史資料が指定されます。

なお、国宝の定義は文化財保護法が施行される1950年(昭和25年)を境に変化しているため、注意が必要です。

文化財保護法が施行される以前は、重要文化財と国宝を区別せずにすべて国宝と呼んでいました。そのため、文化財保護法施行以前に指定された国宝を「旧国宝」と呼び、1951年(昭和26年)年6月9日以降(文化財保護法施行後)に指定された国宝を「新国宝」と称することで区別します。

一方で、こうした変化によって「国宝から重要文化財に格下げされた」と言う誤解を生むことがありました。

重要文化財は、名称が変わっただけで価値としては何も変わりないこと、また文化財保護法施行以降に新国宝から重要文化財に変更された事例は1件もないことは、広く周知する必要があります。

国宝の対象外となる有形文化財

重要文化財に指定されている文化財のうち、国宝として指定されるのは前出の通り美術工芸品の部の他、「建造物」、「考古資料」や「歴史資料」であるため、貝塚や古墳などの史跡や住居跡に関しては対象外です。

一方で、奈良県の「高松塚古墳」のように史跡自体は「特別史跡」指定、出土した金具や鏡などは重要文化財指定、石室の壁画は国宝指定など、貝塚や古墳であっても文化財として部分的に指定される例もあります。

また、皇室関係品である「御物」(ぎょぶつ)と呼ばれる文化財に関しては、国宝や重要文化財に指定されることはありません。その理由は、国宝を管理するのは「文化庁」で、御物(皇室財産)を指定するのは「宮内庁」と、そもそもの管轄が別である他、御物として管理されている時点で保護や保存が適切にされていることから、国宝に指定する必要がないためです。

国宝の日本刀

短刀/銘 来国光(名物 有楽来国光)

織田有楽斎

織田有楽斎

織田信長」の末弟で戦国武将の「織田長益/有楽斎」(おだながます/うらくさい)が、「豊臣秀頼」から拝領したと言われる短刀

刃文は、華やかな互の目(ぐのめ)交じりの大丁子乱れ。地鉄は小板目肌、身幅広く、重ね厚く覇気があり、差表(さしおもて)に素剣(そけん/すけん:不動明王の化身である剣の図)が彫られています。

作刀者は、鎌倉時代後期に山城国(現在の京都府)で活躍した刀工「来国光」。1930年(昭和5年)に国宝に指定された本短刀は、「享保名物帳」に「五千貫」(現在の価格で3.7億円)と記載された逸品です。

短刀 銘 来国光(名物 有楽来国光)
短刀 銘 来国光(名物 有楽来国光)
来国光
鑑定区分
国宝
刃長
27.7
所蔵・伝来
豊臣秀頼 →
織田有楽斎 →
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕

歴史を動かした有名な戦国武将や戦い(合戦)をご紹介!

太刀/銘 三日月宗近

三日月宗近」は、「天下五剣」の中で最も美しいと評される国宝の名刀。

平安時代の刀工「三条宗近」が作刀した太刀であり、刀身に鎬(しのぎ)と反りがある形式の日本刀としては最古の太刀です。

細身で反りが大きく、踏張りが強く、地鉄(じがね)は小板目肌がよく詰み、地沸(じにえ)厚く付き、地景が入っています。刃文は、小乱れ主体で小沸付き、匂口深く、三日月形の打除けが数多く観られるのが特徴。

三日月宗近
太刀/銘 三日月宗近
三条
(名物
三日月宗近)
時代
平安時代
鑑定区分
国宝
所蔵・伝来

刀/金象嵌銘 長谷部国重本阿花押 黒田筑前守(名物 へし切長谷部)

織田信長

織田信長

「へし切長谷部」(へしきりはせべ)は、織田信長が所用していたと言われる国宝の名刀。

南北朝時代に「長谷部国重」が作刀した打刀で、織田信長が茶坊主「観内」を棚ごと「圧[へ]し切った」(刀身を押しあてて切った)ことから、「へし切」と言う名が付けられたと言われています。

鎬造で庵棟、身幅広く、重ねはやや薄く、浅い反りや大鋒/大切先(おおきっさき)は、南北朝時代の典型と言われる特徴です。

へし切長谷部
刀/金象嵌銘 長谷部国重本阿花押 黒田筑前守(名物 へし切長谷部)
金象嵌銘
長谷部国重本阿
(花押)
/黒田筑前守
時代
鎌倉時代
鑑定区分
国宝
所蔵・伝来

名古屋刀剣ワールドの日本刀

名古屋刀剣博物館 – メーハク「名古屋刀剣ワールド」に収蔵される旧国宝や重要文化財の指定を受けた日本刀をYouTube動画でご覧頂けます。

刀剣・日本刀写真/画像刀剣・日本刀写真/画像
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