2000年代以降プロデビューの刀剣漫画家・刀剣漫画原作者

中丸洋介

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【我間乱〜GAMARAN〜】で知られる中丸洋介(なかまるようすけ)。同シリーズでは定番の歴史・時代小説の要素が巧みに取り入れられています。少年主人公の物語から女性も登場する物語へと変化するも、変わらず「強さ」が目指されます。

中丸洋介と刀剣小説と刀剣漫画

中丸洋介は、第76回週刊少年マガジン新人漫画賞・一般漫画部門に、独自の野球漫画の読み切り【早乙女ブレーキング!!】が入選します。

デビュー作となった同作では茂木洋介名義を使用しました(2006年〔週刊少年マガジン増刊号マガジンSPECIAL〕掲載)。

瀬尾公治(代表作【涼風】、【君のいる町】など)のアシスタントを務めたのち、【我間乱〜GAMARAN〜】(2009~2013年〔週刊少年マガジン〕連載)で初連載します。

江戸時代中期、海原藩にて次期藩主を決める武芸仕合・海原大仕合を描きました。

第1部にあたる<海原大仕合編>では、現藩主が設けた31人の子が争います。子供達はそれぞれ最強の流派を見つけ出し、大仕合に臨みます。31流派は一騎あるいは多勢でも構わず、複数の流派が同時に戦うバトルロイヤル形式です。

藩主の子のうち母親の身分が唯一違う28男が選んだのが、大亀流(おおがめりゅう)です。

大亀流は千人斬りの異名を持つ黒鉄陣介が当主でした。けれども所在が不明。そこで息子の黒鉄我間(くろがねがま)がその腕前を見込まれ、大仕合に参加することになります。

黒鉄我間は「もっと強い敵とやりたいんだ」という想いから臨みます。

刀剣・日本刀使いの黒鉄我間の前には、長刀、弓、体術、鎖鎌、忍術、槍をもちいる敵が順に登場します。五剣(雷・火・土・水・空)に基づく大亀流(おおがめりゅう)の剣技で黒鉄我間は立ち向かっていきます。

こうした我間乱には、歴史・時代小説や時代劇漫画の影響がつぶさに見られます。

海原藩は、藤沢周平が続けて用いた架空の藩・海坂藩をうかがわせます。我間乱発表の時期、藤沢周平作品が多数映画化されていました(2002~2008年:【たそがれ清兵衛】、【隠し剣 鬼の爪】【蝉しぐれ】、【武士の一分】、【山桜】)。

バトルロイヤル形式は対等数同士の戦いとは違うものの、山田風太郎を発火点とし、横山光輝が取り入れ、車田正美が発展させた形式の展開形です。

多彩な武器を使う敵が順に登場する手法は、吉川英治【宮本武蔵】をうかがわせます。

また大亀流の五剣は、五行思想に基づく岸本斉史【NARUTO-ナルト-】などが先行しています。図式化された技の描写は、白土三平が【カムイ外伝】で始めた試みにつながります。

中丸洋介の刀剣キャラ① スピードの雷電型を得意とする黒鉄我間

黒鉄我間は、迅さが特徴の大亀流五剣ノ一・雷電型(いかづちのかた)を得意とします。

各五剣には難易度を示す式もあり、第二式「紫電閃(しでんせん)」、第三式「鳴神(なるかみ)」も黒鉄我間は使用します。

黒鉄我間が披露した大亀流・伊織直伝「虎穿(こせん)」の剣技では、「突きの切っ先の一点に体重と身体の回転により生まれる力を集中させることで威力と殺傷力を数倍に上げる必殺の突き」と図解されました。

  • 「第三十話」【我間乱〜GAMARAN〜】より

    「第三十話」【我間乱〜GAMARAN〜】より

  • 「第三十話」【我間乱〜GAMARAN〜】より

    「第三十話」
    【我間乱〜GAMARAN〜】より

中丸洋介の刀剣キャラ② スピードの雷電型を得意とする千石伊織

黒鉄我間の父・黒鉄陣介には、一番弟子の千石伊織(せんごくいおり)がいます。

黒鉄我間は父の弟子のなかでも特にこの千石伊織に学んでいます。千石伊織は大亀流五剣ノ一・雷電型を得意とし、そのうえで独自の技も用います。

そのひとつが黒鉄我間に教えた虎穿をも上回る技、虎穿無刀(こせんむとう)です。掌底打ちで無刀でもその強さを十分に誇ります。

  • 「第七十六話」【我間乱〜GAMARAN〜】より

    「第七十六話」【我間乱〜GAMARAN〜】より

  • 「第七十六話」【我間乱〜GAMARAN〜】より

    「第七十六話」【我間乱〜GAMARAN〜】より

中丸洋介の刀剣キャラ③ テクニックの水龍型を得意とする桜真ノ丞

海原大仕合の第1回戦に勝ち残った黒鉄我間には、10流派が争うことになった第2試合から兄弟子たちが仲間に加わります。

桜真ノ丞(さくらしんのじょう)は、大亀流五剣ノ四・水龍型(みずちのかた)を得意とします。

水龍型第一式「逆燐(げきりん)」では、「斬撃の瞬間 瞬時に左右の持ち手を入れ替え 急激に剣の軌道を変化させる技―― 変化は一瞬 間合いに入ってしまえば 受け止めることは不可能」と図解されました。

「第四十二話」【我間乱〜GAMARAN〜】

「第四十二話」
【我間乱〜GAMARAN〜】より

他に、水龍型・第三式「漣回天(れんかいてん)」では、「虚の動作から瞬発される肩と右腕による二段加速」、「そして二度目の加速と同時に起こる斬撃軌道の変化―――」と解説され、水龍型は二段攻撃の型となっています。

桜真ノ丞は大亀流秘奥「鬼返(おにがえし)」も披露します。「この技は一度 斬撃を加え…」、「そこから身体 首をねじることで間合いをのばし同時に下からの斬撃を加える――」、「高速の二段斬り!!」と解説され、こちらも二段攻撃です。

中丸洋介の刀剣キャラ④ パワーの焔燃型を得意とする一ノ瀬善丸

一ノ瀬善丸(いちのせぜんまる)は、腕力を必要とする大亀流五剣ノ二・焔燃型を得意とします。

一ノ瀬善丸は巨大な怪刀・多夛良木定長(たたらきさだなが)を手に、第二式「紅蓮旋(ぐれんせん)」を披露します。

「斬撃が“横方向”になるために野太刀の制御が非常に困難で武器自体の損傷も起こりやすい」、「技の原理は第一式“火柱”と同じだが超人的な身体操作能力が必要」と図解されました。

「第三十五話」
【我間乱〜GAMARAN〜】より

  • 「第三十五話」【我間乱〜GAMARAN〜】より

    「第三十五話」【我間乱〜GAMARAN〜】より

  • 「第三十五話」【我間乱〜GAMARAN〜】より

    「第三十五話」
    【我間乱〜GAMARAN〜】より

中丸洋介の刀剣キャラ⑤ 力は不要の剣術・一ノ瀬家蘭

我間乱〜GAMARAN〜は、第2部と言える黒鉄陣介率いる無宝流と大亀流との対決を描いた<無宝流編>で連載が終了します。

中丸洋介はその後、ホラー漫画やスポーツ漫画の読み切り(三浦追儺原作【ユメ負イ】、【吉田沙保里物語】)やSFミステリーの連載(【殺さざる者、生くべからず】)を手がけたのち、再び我間乱に取り組みます。

続編【我間乱 修羅】(2018年~〔マガジンポケット〕連載中)では、千石伊織を主人公にあれから2年後の世界が描かれます。

幕府が選定した最強の100名による武芸仕合・幕下大仕合が開催されます。その報酬は、天下無双の証明と一万石の大名の座でした。千石伊織は師・黒鉄陣介を乗り越えようとこの仕合に参加します。

我間乱 修羅では新たな主要人物として、一ノ瀬善丸の妹・一ノ瀬蘭が登場します。架空の九州の大実賀藩(おおみかはん)の筆頭剣術指南役の孫娘で剣客です。

一ノ瀬蘭のような道場主の娘という女性剣客像は、歴史・時代小説を遡れば、司馬遼太郎【竜馬がゆく】で書かれた千葉さな子や池波正太郎【剣客商売】の佐々木三冬などに見出せます。

それら時代小説と同じ頃に描かれた漫画では、小山ゆう【おれは直角】の貴杉じゅん、村上もとか【エーイ!剣道】の白神鈴恵なども同傾向です。

物語の冒頭に一ノ瀬蘭は、「剣には力不要」、「…いや」、「力で剣を振れば」、「剣は さらに遅くなる―――」とその剣術を語り、相手の攻撃をかわしたうえで死角から攻めます。

  • 第一話「千石伊織」【我間乱 修羅】より

    第一話「千石伊織」【我間乱 修羅】より

  • 第一話「千石伊織」【我間乱 修羅】より

    第一話「千石伊織」【我間乱 修羅】より

一ノ瀬蘭は女性であることで、「強い男の剣は皆に恐れられ尊敬され求められる」のとは違う境遇に悩んでいました。

そんなある日、千石伊織と手合わせしたとき、「剣士にとって重要な正義は」、「“強さ” それだけだ」、「強ぇかどうかに」、「男も女もねぇ」、「あとはオメェが」、「それを楽しめるかどうかだけだ」、「オメエはまだひよっこ」、「俺を脅かす剣士になってみな」、「本当の勝負はその時だ」の言葉に心打たれ、行動を共にすることを決意します。

じつは千石伊織の言葉は一ノ瀬蘭が小さき頃、剣士を目指すきっかけになったある青年から教わった物と同じ内容でした。

「もっと強い敵とやりたいんだ」と記された黒鉄我間から、女性であることを乗り越えようとする一ノ瀬蘭が登場するようになった中丸洋介の刀剣漫画。けれども一ノ瀬蘭は「強ぇかどうかに」、「男も女もねぇ」の言葉に惹かれます。そこでは変わらず「“強さ”」が求め続けられています。

著者名:三宅顕人

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