2000年代以降プロデビューの刀剣漫画家・刀剣漫画原作者

唐々煙

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【曇天に笑う】シリーズで知られる唐々煙(からからけむり)。滋賀県で育ち、大阪の劇団・劇団☆新感線の時代劇のコミカライズでデビューしました。以来、主に関西にゆかりある刀剣漫画を描いています。そんな唐々煙の刀剣漫画では刀剣は、時代を超えて異形の力を抑える物としてあります。

唐々煙の初期刀剣漫画

唐々煙は、琵琶湖に隣接する滋賀県大津市唐崎で育ち、ペンネームは唐崎に由来します。

小学生のときに漫画を描き始め、藤田和日郎(ふじたかずひろ)(代表作【うしおととら】、【からくりサーカス】など)から大きな影響を受けました。

藤田和日郎の描く人間と妖怪の共存や不思議な力を持つ人形遣いが登場する神話的な世界に惹かれたのは、自身が育った土地では化け物伝説などの神話が身近だったためと言います。

大阪でアニメ系専門学校のマンガコースを卒業後、【oguna 劇団☆新感線「スサノオ-魔性の剣-」より】(2004~2007年〔月刊コミックブレイド増刊号コミックブレイドZEBEL〕連載)でデビューします。

原作は、劇団☆新感線(代表作【髑髏城の七人】、【アテルイ】など)の座付作家・中島かずき脚本の【SUSANOH魔性の剣】(1998年初演)です。伝説の霊剣・スサノオを求める、主人公イズモノタケルと、クマソノタル、オグナノタケルの3人のタケルの舞台劇を、オグナノタケルを主人公に漫画化しました。

並行して、中島かずき原作【Takeru–SUSANOH~魔性の剣より-】(2005~2007年〔月刊コミックブレイド〕連載)も描きます。同作は単行本化の際、高橋留美子(代表作【犬夜叉】など)が帯に推薦文を寄せています。

また同時期にデビュー作も【OGUNA takeru-SUSANOH~魔性の剣より-外伝】として単行本化されました(2007年)。

そして唐々煙は、オリジナル作【Replica】(2007~2008年〔月刊コミックブレイドアヴァルス〕連載)を発表します。続けて外伝にあたる【Replica-Last Letter-】(2009年〔コミックシーモア〕連載)も日本最大級のマンガサイトで発表しました。

Replicaの主人公は、黒刀を携えた赤い髪に顔に一文字傷を持つ用心棒・赤狗の卍(まんじ)です。卍は特殊能力を持つCARDSの隊長・カルと契約することになり、コンビとして同じ時間を過ごします。

CARDSは殺人玩具Toyの壊滅を目指す組織で、カルらCARDSの面々はToyと同じ「人のレプリカ」と蔑む人形(ドール)なものの、自我、感情や痛みを持つ人間に近い人形でした。

同作は人間と同様の感情を持ってしまった人造人間・レプリカントを描いた映画『ブレードランナー』や、卍という同じ主人公の名前から沙村広明【無限の住人】へのオマージュをうかがわせます。

そんな唐々煙は、ゲームから漫画へという時代の流れに立ち会いました。

家庭用ゲーム【ドラゴンクエスト】シリーズを開発したエニックス(現スクウェア・エニックス)の出版部門は独立し、刃(ブレイド)を冠した雑誌を創刊します。

創刊号では黒乃奈々絵が新撰組を描いた【PEACE MAKER鐵】が目玉でした。同雑誌の増刊号でも同じく黒乃奈々絵が吸血鬼を描いた【Vassalord.】が目玉となりました。

唐々煙の中島かずき脚本による2作は、その創刊雑誌とその増刊号にそれぞれ掲載され、Replicaは同出版社の新雑誌の創刊号から描かれました。

唐々煙の刀剣キャラ① 安倍家の落ちこぼれ・安倍比良裏

続いて、ファンタジー【カウントダウン7days】と並行して、前後編【泡沫に笑う(うたかたにわらう)】(2010年〔月刊コミックアヴァルス〕掲載)を発表します。

物語は13世紀、鎌倉時代の近江が舞台です。琵琶湖の真ん中にある巨木には、この場所で手傷を負わされた大蛇(オロチ)が呪いをかけたことで、曇り空のときに蘇る伝説が残されています。

すべてを滅ぼす大蛇は300年に一度蘇り、依り代に宿るとされます。依り代になると人間から徐々に化け物の感情に侵されていき、終には大蛇の姿となります。

主人公は、安倍比良裏(あべのひらり)です。

安倍比良裏は大蛇退治を代々担う陰陽師・安倍家の一族なものの、陰陽術がまったく使えない落ちこぼれです。けれども安部家の家紋の入った刀剣を武器とする剣客です。「落ちこぼれと云われる俺でも 剣には自信が有るんでね」と自ら語ります。

  • 「前編」【泡沫に笑う】より

    「前編」【泡沫に笑う】より

  • 「前編」【泡沫に笑う】より

    「前編」【泡沫に笑う】より

唐々煙の刀剣キャラ② 安倍家が創った依り代を護る・曇景光

「前編」【泡沫に笑う】より

「前編」【泡沫に笑う】より

安倍家は大蛇封じのための依り代を創り出しました。

安倍家の陰陽師が総出で呼び寄せた特別な式神・牡丹です。美しい女性の姿をした牡丹は、近江国南部の琵琶湖に隣接する曇神社の曇家当主が護ります。

初代当主の曇景光(くもうかげみつ)は、牡丹を護るために刀剣を手にします。

けれども大蛇は大蛇の敵対者の血縁に現れるとされます。

安倍比良裏、曇景光を含む様々な登場人物に宿る可能性があり、物語はミステリー仕立てにもなっています。

また、落ちこぼれの安倍比良裏と依り代の牡丹との、人間と人ならざる者との恋愛物語も展開されます。

【曇天に笑う】から【煉獄に笑う】へ

唐々煙は続けて、泡沫に笑うから600年後を舞台に【曇天に笑う】(2011~2013年〔月刊コミックアヴァルス〕連載)を描きます。

連載終了の翌年にテレビアニメ化、その翌年に舞台化、その3年後に実写映画化され、唐々煙の最初の代表作になりました。

同作では19世紀、明治時代初頭を生きる曇家の3兄弟、曇天火(くもうてんか)・曇空丸(くもうそらまる)・曇宙太郎(くもうちゅうたろう)が活躍します。彼らは、琵琶湖そばの曇神社を拠点とし、湖に浮かぶ巨木に設置された監獄に収監される囚人の橋渡し役を担っています。

唐々煙は、自身が3兄弟であること、曇神社のモデルは故郷の唐崎神社であるなど、設定が生活体験に基づくと述べています。

曇家第14代当主・曇天火の弟・曇空丸は、曇家の宝刀を得物(武器)としています。

その曇家に敵対する存在として、安倍蒼世(あべそうせい)も登場します。安倍蒼世は、右大臣・岩倉具視の直属部隊で大蛇の器の破壊が使命の犲(やまいぬ)の隊長です。のちに曇空丸の剣術の指導者にもなり、大蛇の器が現れたとき曇空丸に安倍家の宝刀も手渡します。

また、泡沫に笑うの登場人物、安倍比良裏は転生して滋賀県警の警官として生き、牡丹も登場します。

同作は【曇天に笑う 外伝】(2013~2017年〔月刊コミックガーデン〕〔WEBコミック Beat’s〕連載)も描かれます。長男・曇天火を主人公に描かれ、連載終了の年にアニメ映画化されました。

外伝と並行して【煉獄に笑う】(2013年〔時代劇活画伝 斬〕掲載、2014年~[WEBコミック Beat’s]〔MAGCOMI〕連載中)も発表されます。

泡沫に笑うの300年後、16世紀の安土桃山時代を舞台に、近江国出身の小姓時代の石田佐吉(三成)を主人公に描かれます。発表から4年後には舞台化されました。

唐々煙の刀剣キャラ③ 織田信長=安部比良裏

煉獄に笑うでは、大蛇を手に入れるために必要な3つの巻物の争奪が描かれます。

特別な式神・牡丹は髑髏鬼灯(どくろほうずき)と呼ばれます。

織田信長明智光秀黒田官兵衛、安倍晴鳴、石田佐吉(三成)、国友藤兵衛、国友勇真らを中心に、他に羽柴(豊臣)秀吉徳川家康、荒木村重、島左近(清興)などの戦国武将も登場し、大蛇争奪が描かれます。

転生する力を持つ安倍比良裏は、この時代は「最も天下統一に近い男」織田信長となっています。織田信長の子飼いの甲賀の忍びとして描かれる多羅尾光俊から、「―――比良裏様」とその正体が明かされました。

  • 第十話「へいくわい者、伊賀に侵入」【曇天に笑う】から【煉獄に笑う】より

    第十話「へいくわい者、伊賀に侵入」
    【曇天に笑う】から【煉獄に笑う】より

  • 第二十三話「百鬼夜行、器に群がる」【曇天に笑う】から【煉獄に笑う】より

    第二十三話「百鬼夜行、器に群がる」
    【曇天に笑う】から【煉獄に笑う】より

唐々煙の刀剣キャラ④ 石田佐吉(三成)を支える曇芭恋・曇阿国

曇景光から数えて曇家8代目は、独眼の男・曇芭恋(くもうばれん)と扇子を常に手にする女・曇阿国(くもうおくに)の双子です。

双子が忌み嫌われていた時代、2人の悪行もあって近江国では嫌われ者の存在です。

そんな曇芭恋と曇阿国はともに剣客です。その剣の腕前で、豊臣秀吉の命を受けて髑髏鬼灯を探す主人公・石田佐吉(三成)を支えます。石田佐吉(三成)を日ノ本一に押し上げると決め、「共に時代の風雲児とならん」と宣言します。

  • 第二十六話「風雲児、近江に現る」【煉獄に笑う】より

    第二十六話「風雲児、近江に現る」
    【煉獄に笑う】より

  • 第二十六話「風雲児、近江に現る」【煉獄に笑う】より

    第二十六話
    「風雲児、近江に現る」
    【煉獄に笑う】より

その後の唐々煙の刀剣漫画

唐々煙は、曇天に笑うシリーズ連載中にもファンタジーを多彩に描きます(京都を舞台にした【:REverSAL】、【シニガミ×ドクター】)。

そして、泡沫に笑うの前日譚を短期連載として再開(2018年〔MAGKAN〕連載)。アシスタントによる曇天に笑うシリーズのスピンオフのギャグ漫画【犲の残業に笑う】(2019年~〔MAGKAN〕連載中)の監修も務めます。

両作は、関西の作家と関西出身の編集者だけで創る関西発のWEBコミックサイトの立ち上げ企画でした。またこの時期、これまでの実績から、びわ湖大津ふるさと観光大使にも任命されました(2019年)。

そして刀剣ブームの大きなきっかけとなった刀剣育成シミュレーションゲーム【刀剣乱舞-ONLINE-】の公式アンソロジー漫画【刀剣乱舞-ONLINE- アンソロジー ~本丸爛漫日和~】の表紙イラストも手がけました(2019年)。

琵琶湖、大阪の劇団にそのルーツを持つ唐々煙の刀剣漫画。そこでは、鎌倉時代・安土桃山時代・明治時代と時代を超えて異形の存在を治める物として、刀剣が描かれ続けています。

著者名:三宅顕人

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