関市における刃物と観光

関市の家庭用刃物

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九州から刀匠「元重」が移り住み、関市で初めて日本刀が作られたのは鎌倉時代。その後、室町時代には孫六兼元、兼定といった有名な刀匠を輩出しました。明治時代以降は家庭用刃物の生産に転向したものの、関市は今も刃物の町としてその名を知られています。
質の高い家庭用刃物を作る関市は、家庭用刃物の全国シェアの50%近くを占め、全国1位です。日本刀の時代から移り変わっても、包丁、ハサミ、ナイフなどの家庭用刃物の生産にシフトし、刃物産業を支え続ける関市。そんな刃物産業の中で重要な一角を担う関市の家庭用刃物についてご紹介します。

包丁の基本包丁の基本
包丁の歴史や産地をはじめ、包丁の基礎知識を幅広くご紹介します。

家庭用刃物で全国シェア1位の関市

「平成28年経済センサス活動調査」によると、2016年(平成28年)6月1日現在で、関市の産業別事業所の総数は5,051あります。そのうちの製造業全事業所の約3分の1を占めるのが刃物産業にかかわる事業所([平成29年度関市の工業]より)。

関市の刃物産業の特徴は、工程加工業者、部品製造業者と、分業体制により製品が作られていることであり、刃物産業にかかわる約400社の内訳は、刃物メーカー約100社、小規模刃物製造事業所約40社、工程間におけるプレス業、研削業、研磨業、熱処理業、仕組み業、羽布業、羽付業、メッキ業、腐食業といった工程加工業者約210事業所、金型業、リベット業、プラスチック業、木柄業、紙器業などの部品製造業者約50事業所です。

そして、卸商は全国に名が知れ渡っているメーカーから、日本より海外で認知度の高いメーカーなど多岐にわたり、製造から販売までを手掛けているメーカーがほとんどです。岐阜県関刃物産業連合会に登録しているだけで54社を数えます。

独自の事業展開を図る多彩な卸商

日本刀から家庭用刃物へ

日本刀から家庭用刃物へ

かつては関市における出荷額の40%以上が刃物でしたが、現在(2019年10月)の出荷額は10%ほどだそうです。

海外からの安価な刃物の流入や、各家庭での料理では事前に調理された食材の利用が増えたことで家庭で包丁を使う機会が減り、国内の需要も減少しています。

しかしながら各メーカーは、質の高い、付加価値のある高級刃物を生み出したり、医療分野にも進出するなど努力を重ね、食卓用刃物、包丁、ハサミ、その他工匠具の家庭用刃物の全国シェアは今でも50%近くを占め、全国第1位となっています。

各メーカーの企業努力は、生産拠点を海外へ移転したり、海外へ下請けに出したり、工程の内製化や販売までを含めた自社内一貫生産体制を取るなど、それぞれ創意工夫を重ね、独自の事業展開を図っています。

関市の家庭用刃物の質が高い理由

関市にある刃物メーカーは、ポケットナイフに始まり、カミソリ、包丁、ハサミ、爪切りと各社があらゆる刃物を手掛けています。高いデザイン性を誇るビューティツールは女性からの支持が高く、使いやすさを追求した調理器具はブランド化にも成功しています。

ハサミや包丁、キッチンツールといった家庭用刃物を手掛けるメーカーも、美術刀剣や居合い練習刀、兜・鎧などの商品を取り揃え、独自の支持層を獲得するなど、ユニークな試みがみられるのも特徴です。

また、工業デザイナーとコラボレーションし、デザイン性と実用性をかね備えた包丁や、料理研究家が監修した子どもが安心して使える食育をかねた製品、時短、負担軽減など働く女性に便利なキッチンツールなど、細かなニーズに対応した製品を展開しているメーカーもあり、関市の刃物産業の卸商は多様化しています。

コアなニーズにも対応する職人気質なメーカーも

一方で、昔ながらの工場の雰囲気を残しつつ、職人を抱え、自社製造に力を入れ、秀逸な製品を作り続け販売しているメーカーもあります。

それ以外にも、スウェーデンの「バイキングサン社」と共同でキッチンナイフを開発し、シェフの声も取り入れた海外向け製品を発売しているメーカーや、刃物の研ぎ直しや修理といった販売した製品のメンテナンスを行ない、アウトドアナイフブランドを抱えるメーカーもあります。

また、彫刻刀の全国シェア第1位の老舗メーカー「義春刃物」も関市にあります。京都で創業し、関市に移転したそうですが、今でも熟練の職人が1本1本手作業で仕上げており、その切れ味の鋭さと見た目の美しさは他社製品と一線を画すほど。

確かな技術を確実に後世に継承するため、より専門性に特化するなど、関市の刃物産業における卸商も多様化しています。

インターネットの普及により販売網も多様化

各メーカーは自社ホームページを持っており、製品の紹介や製造工程の紹介にも力を入れています。ホームページから各メーカーの社風も伝わり、消費者としては、家に居ながらにして買い物ができることが大きなメリットとなり、インターネットによる販売も各メーカーの売り上げに貢献しているようです。

日本刀にルーツがあるからこそ質が高い

質が高い関市の刃物

質が高い関市の刃物

卸商など各メーカーが様々な展開を図る関市の刃物ですが、日本刀の鍛造に起源を発していることが高品質な製品を生み出す根源のようです。

日本各地に刃物の産地がありますが、新潟県の燕三条の刃物は和釘生産が起源であり、大阪府の堺の刃物は土木工事用の鋤や鍬、兵庫県の播州三木の刃物は鋸や鉋など、大工や職人のための道具の生産が起源となります。

関市の刃物は、武士が使う日本刀から民用刃物の生産に転向する明治時代まで、長きに亘って日本刀鍛造の高度な技術を蓄積でき、それを応用できたことが大きな特徴であり、強みとなっているのです。

家庭用刃物が安く手に入る関市の「刃物まつり」

折り返し鍛錬・焼き入れ

刀匠による刀剣奉納鍛錬(折り返し鍛錬・焼き入れ)の様子を動画でご覧頂けます。

折り返し鍛錬・焼き入れ

刀剣奉納鍛錬

多様化している関市の刃物産業の卸商が一堂に会する大イベントがあります。

1968年(昭和43年)から毎年秋に行なわれている「刃物まつり」です。土・日曜の2日間開催され、「春日神社」での奉告祭で開幕。

関鍛冶伝承館」の日本刀鍛錬場や技能師実演場での古式日本刀鍛錬及び外装技能師の実演など、市内各地でイベントが行なわれます。

そしてメイン会場となる本町通り商店街には、約1㎞に亘って市内の刃物メーカー、卸売業者がテントを並べる壮観な光景です。

そこでは刃物大廉価市が行なわれ、この祭りでしか手に入れられないアウトレット品も登場。特にカスタムナイフの展示・即売には、愛好家が集まります。

さらに、刃物検定「はもけん」や包丁研ぎといった刃物の町ならではの催し、アユやウナギといった関市のご当地グルメも味わえることから、毎年20万人以上が訪れています。

リサイクル・リユースもかねた刃物供養

刃物を販売し、使ってもらうだけではなく、1998年(平成10年)から、関市では岐阜県関刃物産業連合会が主体となり、不用になったり、使えなくなったりした刃物を回収しています。

全国規模で展開しているこの活動は、古くから11月頃に鍛冶屋の神事「ふいご祭り」が全国各地で行なわれていることや、「イイハ」の語呂合わせが良いことから全国の主要刃物産地が協力し、11月8日を「刃物の日」として日本記念日協会に登録したことにちなみ、11月8日に刃物供養を行なっています。

回収した刃物は、新しい鋼材としてリサイクルされており、2017年(平成29年)には、約43,000本の不要刃物が集まったそうです。長年活躍した刃物に感謝し、良い刃物を作りだす産地としての意識を再確認するため、また、先達を尊び供養祭が行なわれているとのこと。

回収活動がリサイクル、リユースだけでなく、正しく健全な刃物の使い方を普及させることにつながるようにとの願いも込められているそうです。

関市の家庭用刃物

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包丁の選び方(種類・材質・ブランド)と基礎知識

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包丁は私達にとって、最も身近な刃物のひとつです。「五箇伝」のひとつ「美濃伝」発祥の地であり、刃物のまちとして知られている岐阜県関市でも、数多くの包丁が製造されています。美濃伝の刀鍛冶が鍛えた日本刀は、「折れず、曲がらず、よく切れる」と言われ、戦国武将達に好まれました。日本の家庭用刃物のシェアで50%近くを占める刃物どころ・関市で製造されている包丁は、こうした美濃伝の特徴を承継。家庭用からプロ仕様まで、用途に応じて様々な種類、素材が存在する包丁と、その扱い方についてご紹介します。

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関市で生まれたフェザー安全剃刀株式会社

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1932年(昭和7年)7月1日に創業した「フェザー安全剃刀株式会社」(フェザーあんぜんかみそりかぶしきがいしゃ)は、世界中に多くのファンを持つ精密刃物メーカーです。 「フェザー」のブランド名で親しまれ、私達の生活に身近な安全剃刀の製造、理美容業務用の剃刀、さらには医療用メスの製造も手掛けています。 岐阜県関市で創業したフェザー安全剃刀株式会社の刃物製品には、関市で培われた日本刀や刃物制作の技術が活かされています。

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刃物のまち関市の町並み散策と歴史巡り

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世界初の刃物博物館 フェザーミュージアム

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「フェザーミュージアム」は、岐阜県関市日ノ出町にある世界で初めての刃物の総合博物館です。「切る」をテーマに掲げた非常にユニークな博物館で、石器時代から現代までの様々な刃物が展示されています。最新の映像技術を使ったシアターや、実際に触れて学ぶ体験コーナーなども充実したフェザーミュージアムの魅力をご紹介します。なお、フェザーミュージアムの入場料は無料となっています。

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古くから日本刀の産地として知られ、現代は良質な刃物が作られる町として全国に知られる岐阜県関市。 関市では、日本刀にまつわる様々な企画を行なっています。ここでは、過去に開催された企画をいくつかピックアップしてご紹介します。

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関市の刃物産業

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日本のほぼ中央に位置する岐阜県関市。2014年(平成26年)の刃物製品の出荷額は369億円、同年の輸出額は106億円(出典:岐阜県輸出関係調査、平成29年度[関市の工業])を誇ります。名実共に、日本の刃物産業を支えているのが関市です。輸出額はピーク時の1985年(昭和60年)より減少していますが、日本を代表する刃物の産地であることに変わりはありません。 鵜飼いと清流で有名な長良川の中流部にあり、人口約8万9,000人(2018年[平成30年]4月1日現在)を数える関市で、なぜ刃物産業が勃興したのでしょうか。刀匠が関市に移り住んだところから始まる関市の刃物産業の歴史。こちらのページでは、関市独特の刃物産業の構造をご紹介しましょう。

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医療の現場で活躍する関市の刃物

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関市の刀剣作りは鎌倉時代に始まったとされ、今日まで日本の刃物文化の発展に貢献してきました。それゆえに関市は「刃物のまち」と名高く、高い品質が要求される医療用刃物を製造するメーカーも複数存在します。長い年月で培われた関市の刃物鍛造技術は、どのように医療用刃物に活かされているのでしょうか。いくつかのメーカーの実績などをもとに考察してみましょう。

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世界に認められた関市の刃物

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関市は「刃物のまち」として多くのファンを持ち、国内では高いブランド力を誇ります。実は、関市の刃物は国内のみならず海外の人々からも支持されています。関市の刃物ならではの品質やデザイン性の高さが、このような人気の背景にあるようです。ここでは刀剣の特徴をふまえつつ、関市の刃物が世界でどのように評価されているのか紹介します。

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関市の刃物 包丁の製造工程

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包丁には、昔から日本で使われてきた和包丁と、日本人が本格的に肉食を取り入れるようになり明治以降に西洋から伝わった洋包丁があります。ただし、現在では包丁に使用する材質、製法などが変わってきていることもあり、区別がしづらくなってきているようです。ここでは材質、用途などが異なる和包丁と洋包丁とを比べ、鍛接(たんせつ)、鍛造(たんぞう)といった刀剣の制作技術を活かして作られる和包丁についてご紹介していきます。

関市の刃物 包丁の製造工程

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