関市における刃物と観光

関市の鍛刀技法を今に伝える関鍛冶伝承館

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鎌倉時代に誕生したと伝えられる、関市の刀鍛冶。700年を超える歴史と技の伝承を目的として設けられたのが、関鍛冶伝承館です。関市の刀匠が鍛えた日本刀を所蔵・展示する同施設について紹介します。

関市の日本刀製造の歴史

鎌倉時代、九州から刀匠「元重」(もとしげ)が移り住んだことから始まったでの刀鍛冶。良質の焼刃土や炉に使用する炭、日本刀焼き入れに欠かせない水など、日本刀作りに適した環境が揃っていたことから、各地から刀工が続々と集まり、日本刀の一大産地となっていきました。

やがて、刀匠が300人を超えた室町時代には、「折れず、曲がらず、よく切れる」と言われるほどになり、関で作られた日本刀は「日本一の刀」と称され、名刀の産地として全国にその名が広まりました。戦国時代には、多くの武将達に愛された関の刀。

関鍛冶伝承館

関鍛冶伝承館

時代が変わり日本刀の需要が少なくなってくると、長年培った技術を活かして農業用や家庭用の刃物制作へと転換します。

日本の刀剣制作において重要な役割を果たした関の技と歴史を伝える施設が必要だと考えられ、2002年(平成14年)、当時の産業振興センターを全面改装して、関鍛冶伝承館として開館しました。

美術品から実用品まで多数の展示

関鍛冶伝承館の館内には、これまでに関で制作された様々な日本刀や刃物が展示されています。趣の異なる作品や製品を見学して、匠の技や時代の変化を感じてみてはいかがでしょうか。

刀匠による名刀

展示室

展示室

全国にその名をとどろかせた関の刀。日本刀展示室には、戦国武将も憧れた名刀が集められています。

「関の孫六」として知られる16世紀前半(室町時代)の名工、孫六兼元(まごろくかねもと)や
和泉守兼定(いずみのかみかねさだ)による日本刀は、高い美術的価値を誇ります。

また、独特の鍛錬法(四方詰め)で頑丈な日本刀を作ることに成功した、三本杉刃文が特徴の孫六の刀は、関鍛冶伝承館をより有名にしました。これらのような、貴重な日本刀がずらりと並ぶ展示室は圧巻の眺めです。

現代の刃物製品

近代刃物産業の歩みを知ることができるのが、2階の刃物展示室。

はさみや包丁などの刃物製品には、刀鍛冶の技を活かした機能性と様々な種類を展開する多様性が感じられます。

ナイフを手作業で制作する、カスタムナイフ作家によるコレクションも展示され、関市の刃物の奥深さを確かめられる展示内容です。

刀鍛冶の技と文化の伝承

長い年月をかけて培われた多様な技や、工夫が活かされている日本刀制作。日常ではほとんど知ることができない刀鍛冶の工程なども紹介されています。

古式日本刀鍛錬

同館の敷地内にある日本刀鍛錬場では、毎月、白装束に烏帽子(えぼし)の伝統衣装に身を包んだ刀職人による日本刀鍛錬や技能師の実演が行なわれています。鍛錬場には、100席の椅子席と約20人の立見スペースを設置。また、増え続ける外国人客に対応するために、英語と中国語のナレーション付きで、日本刀制作工程を放映するモニターもあります。より詳しく刀について知ることができると評判です。

古式日本刀鍛錬打ち初め式

古式日本刀鍛錬打ち初め式

実演のなかでも、1月の古式日本刀鍛錬打ち初め式は有名で人気がある催しと言えるでしょう。

日本刀鍛錬は、刀工が大鎚と小鎚を何度も繰り返し打つことにより、鋼に粘りをもたせ、強度を高めることが目的。

刀匠だけではできない作業のため、刀匠の指示で、打ち手がひとり加わり、次に2人加わり、と複数人で行ないます。

高温の火床から出された鋼の火花が飛び散る様子や、独特のリズムを刻む鎚音が印象的。見守る人達の緊張感も高まります。

作業中、刀工は声を発しません。指示が聞こえにくいため、すべて刀匠の手元にある小槌の音が指示の代わりに。そのため、この鎚音には回数や強弱で様々な意味が込められています。例えば、2回打つと「止め」という意味で、打ち方はこの音を聞いて打つのを止めます。

この小鎚の合図に合わせて相手の打ち手が打ち付ける様子から、「相槌を打つ」という言葉が生まれました。また、打ち合うたびに鳴り響く鎚音は、「トンテンカン」とリズミカルに聞こえます。鎚音は、ときには調子がはずれることも。その際「トンチンカン」と聞こえたことから、物事の調子が外れた様を「とんちんかん」と言うようになったと言われています。

折り返し鍛錬・焼き入れ

刀匠による刀剣奉納鍛錬(折り返し鍛錬・焼き入れ)の様子を動画でご覧頂けます。

折り返し鍛錬・焼き入れ

刀剣奉納鍛錬

このように、日本刀文化から生まれた言葉は現在でも多く残っています。

鍔競合い」や「鎬を削る」、「切羽詰る」などがそうです。

現代にも残る、様々な言葉を生んだ日本刀文化を間近で感じられる催しは、関市の新年の風物詩であり、国内外問わず多くの人が見学に訪れます。

また、展示室内でも刀匠の人形と映像で鍛錬の様子を再現。実演が行なわれない日でも、日本刀鍛錬の様子を知ることができます。

刀剣ことわざ集刀剣ことわざ集
日本刀にまつわることわざをイラスト付きでご紹介します。

日本刀制作の工程

日本刀制作は刃ができあがっただけでは終わりません。研師(とぎし)や柄巻師(つかまきし)、鞘師(さやし)などの職人の工程を経て完成します。関市内には全工程の職人が存在し、市内で刀鍛冶が完成するのも大きな特徴。同館では、これらの職人の工程も紹介しており、実演が披露されることもあります。

関鍛冶伝承館で行なわれる行事や企画展

関鍛冶伝承館では、毎年行なわれる行事や期間限定でしか観ることができない様々な企画展など、催し物が数多くあります。伝統的な文化と現代とのコラボレーションにより生まれる企画展も多く、話題になっています。

恒例行事「刃物供養祭」

県関刃物連合会が提案した11月8日(イイハ)の「刃物の日」。生活文化とは切っても切り離せない刃物を、改めて見直し感謝する日でもあり、毎年この日に、使えなくなった刃物を供養する「刃物供養祭」が行なわれます。この日までに家庭で使われなくなった包丁やナイフ、はさみなど数万点が全国から送られてくるのです。

刃物塚

刃物塚

関鍛冶伝承館では、敷地内にある刃物塚で、神官が刃物に感謝をささげ、祝詞を上げて供養。

集まった刃物は、メーカーの協力により、災害時の支援用ナイフなどにリサイクルする取り組みも行ないます。こうして、限られた貴重な資源を有効に、再活用できる大切な行事なのです。

供養祭りのあとには、鞴祭(ふいごまつり)の風習にならい、餅やみかんが振舞われます。

期間限定企画展「ライトセーバーと関鍛冶展」

ライトセーバー(架空の武器)と関鍛冶展は、毎年行なわれている刃物まつりとスターウォーズの映画公開を記念して行なわれた、話題を呼んだ企画展のひとつです。

来人勢刃

来人勢刃

そこで注目された展示物が、映画の主人公が持つ、光る刀剣「ライトセーバー」をモチーフに刀匠名、藤原兼房を継ぐ、25代目の加藤賀津雄と 26代目の正文実によって制作された日本刀です。

この刀は「来人勢刃」(ライトセーバー)と名付けられて展示されました。映画のイメージを崩すことがないように、日本刀の両面に彫られる「」(ひ)と呼ばれる細長い溝に、青色の塗料を流し込み、青く輝く刀を表現。

また、持ち手部分も3Dプリンターにより忠実に再現されました。まさに、日本の古来から続く伝統文化と現代の技術が融合したことにより生まれた日本刀です。この刀は話題を呼び、多くの人が来場しました。

期間限定企画展「現代刀匠の特別な3振 特別公開」

幻の名刀「蛍丸」(影打)・「第72代横綱 紀勢の里 土俵入りの太刀」・国際見本市 ミラノ・サローネに展示された「Honsekito」(ほんせきとう)の3つの貴重な日本刀の特別公開がありました。

阿蘇神社

阿蘇神社

ひとつ目は、所在不明のまま国の重要文化財に指定されている刃渡り101.35mの大太刀 蛍丸。

幻の宝刀とされた蛍丸を、関市の福留房幸刀匠が復元した物です。クラウドファンディングを活用し、現存する資料を頼りに復元に成功した日本刀で、最も良いできの真打は熊本県阿蘇神社へ奉納されました。次点の影打が、関鍛冶伝承館に寄贈されました。

2つ目は、大相撲第72代横綱 紀勢の里の土俵入りで、太刀持ちが掲げる太刀。刃文には山景色を表現し、刀身に昇り竜の絵と「心技体」の文字が刻まれています。関市の25代、26代藤原兼房刀匠によって制作されました。

3つ目は、国際見本市 ミラノ・サローネに展示され好評を博した「Honsekito」(ほんせきとう)です。には飛騨牛の皮が施され、周りにピンクゴールドの螺旋が絡んだモダンな外観をしています。スイス人デザイナーと26代藤原兼房刀匠の合作です。

以上、3つの特別な日本刀が一般公開され話題を呼びました。

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関市の家庭用刃物

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九州から刀匠「元重」が移り住み、関市で初めて日本刀が作られたのは鎌倉時代。その後、室町時代には孫六兼元、兼定といった有名な刀匠を輩出しました。明治時代以降は家庭用刃物の生産に転向したものの、関市は今も刃物の町としてその名を知られています。 質の高い家庭用刃物を作る関市は、家庭用刃物の全国シェアの50%近くを占め、全国1位です。日本刀の時代から移り変わっても、包丁、ハサミ、ナイフなどの家庭用刃物の生産にシフトし、刃物産業を支え続ける関市。そんな刃物産業の中で重要な一角を担う関市の家庭用刃物についてご紹介します。

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