世界の剣舞
ヨーロッパの剣舞:スペイン
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ヨーロッパの剣舞:スペイン

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スペインの民俗舞踊の特徴は、リズムが活発かつ複雑であることです。そのため、舞い手は舞踊技術の鍛錬を要します。また、スペインの民俗舞踊のステップは、後世にバレエの中に取りこまれたものも多くあるのです。民俗舞踊の宝庫・スペインでは、現代も人々の暮らしに舞踊が深く根付いています。

南ヨーロッパの国際都市

スペインの国旗

スペインの国旗

南ヨーロッパのイベリア半島に位置し、大西洋や北アフリカにも領有地をもつ立憲君主制国家・スペイン王国(以降、スペイン)には、120万年前から人類が居住し、長い歴史を有する国です。

スペインは古くから東西との交易によって栄えた国際都市であり、国民はカスティーリャ、アストゥリアス、アラゴン、カタルーニャ、ガリシア、バスクなど、地域ごとに異なる民族によって構成されています。

スペインの公用語はスペイン語(カタルーニャ語とも言う)ですが、17の自治州でも公用語が定められ、バレンシア語やバスク語をはじめ、地域ごとに多彩な言語を使用。

伝統や文化、国民性も同様に、地域、民族ごとに異なり、それぞれに伝統文化が育まれ、現代まで継承されています。スペイン国民の大多数はカトリック教徒。伝統行事などはカトリックの典礼に即しています。

そして、航海技術に長けたスペイン人は、15~17世紀にポルトガルとともに大航海時代を迎え、国王主導のもとアフリカやアジア、アメリカなど他の大陸にも到達、各地で盛んに国交や交易を行なうようになったのです。

この時期、1581~1640年まではスペイン王はポルトガルの王をかねていました。日本とも早くから交易を行なっており、16世紀半ばには日本へ到達し、400年以上の国交を続けています。ちなみに、1549年に渡来した宣教師「フランシスコ・ザビエル」はスペインのナバラ王国出身のバスク人です。

スペインとポルトガルは江戸時代の日本と17世紀前半まで南蛮貿易を行ない、鉄砲の伝来をはじめ、当時の日本の国政や文化に影響を与えました。

なお、こうした南蛮貿易によって日本は火薬や鉄砲、大砲、毛織物などを輸入し、銀や工芸品、日本刀(刀剣)などを海外へと輸出。日本刀(刀剣)は、美術品として海外の愛好家に求められたのです。

現在のスペインは、世界でも有数の観光大国であり、多くの世界遺産や温暖な気候、芸術を中心とした豊かな文化を求めて、多くの外国人が訪れています。

民俗舞踊の宝庫

長い歴史をもつスペインには、独特の伝統芸能や行事、文化が数多くあります。

数百年の歴史をもつ闘牛。スペインだけでなくポルトガル、フランス、ラテンアメリカなどでも行なわれていますが、スペインでは国技とされており、現在も多くの国民に愛されています。

闘牛は本来、貴族が主催者となり、祝祭に催す演目や軍事訓練として行なわれていました。そして、君主制が崩壊し共和制国家が成立すると、民衆が主導して行なわれるようになったのです。

闘牛士の剣

闘牛士の剣

闘牛士が牛を挑発するために使用するフランネルの赤い布はムレータと言いますが、牛を攻撃する際に使用する剣(けん・つるぎ)はエストックと呼ばれています。

エストックは、14~17世紀にヨーロッパ全域で広く使用されていた長剣で、剣身の断面が菱形になっています。切先は先端に向かって細くなり、刀身は90~120cmほど。甲冑(鎧兜)が発達した中世には、鎖帷子の隙間を狙って攻撃しなければならなかったため、エストックのように細長く鋭い長剣が普及したのです。エストックは刺突用の剣であり、闘牛士は現在もエストックを使用し、最期に牛の急所を刺突します。

闘牛と同様に、スペインを代表するものはフラメンコです。フラメンコは、スペインの南部・アンダルシア地方に伝わる伝統舞踊ですが、スペイン系ロマの舞踊とイスラム教徒の歌舞が融合されて生み出されたものだと言われています。

フラメンコ以外にも、スペインには多くの民族舞踊が残されており、世界でも有数の舞踊が盛んな国です。

民俗舞踊には、各地域、民俗に代々伝わるものと、16世紀に舞台芸術として発展したバイレ・クラシコがあります。

バイレ・クラシコとは古典舞踊のことです。12世紀にスペインで生み出されヨーロッパの宮廷で流行したサラバンド、18世紀に著名な舞踊家が生み出したボレロなどがあります。

民俗舞踊はフラメンコの他にも、アンダルシア地方に伝わるファンダンゴやセビリャーナス、カタルーニャ地方のサルダーナ、カスティーリャ地方のセギディーリャ、アラゴン地方、ナバラ地方に伝わるホタなど。いずれの民国舞踊も地域ごとの民族衣装を着けた舞い手が、カスタネットやギターなどの伴奏に合わせて祭りや宴席で踊られます。

スペインの民俗舞踊の特徴は、リズムが活発かつ複雑であることです。そのため、舞い手は舞踊技術の鍛錬を要します。

さらに、技巧的であるだけでなく、伴奏に合わせてしなやかに、優雅な舞へと移行することもあり、表現力も必要です。また、スペインの民俗舞踊のステップは、後世にバレエの中に取りこまれたものも多くあります。

バスク地方に伝わるスペインの剣の舞

バスク地方の剣舞

バスク地方の剣舞

フランスとスペインの国境、ビスケー湾に面しピレネー山脈の西端までを含むバスク地方は、バスク民族が暮らす地域。

バスク地方は「緑のスペイン」と称されるほど緑が多く、ビレネーの美しい山並、山脈から湧き出る清水と、自然環境に恵まれた土地。

この地に暮らすバスク民族は、イベリア半島に最も古くから暮らす民族であり、特殊なバスク語を使用。バスク語の起源はいまだ不明であり、ラテン語との関係性も無く、難解な言語とされています。

言語だけでなく、バスク地方は他のスペインの地方とは異なる独特の伝統衣装や舞踊、行事、音楽などを重視し、大切に継承されているのが特徴です。なかでもバスク地方には多くの民族舞踊が残されています。バスク人にとって、舞踊は社会的、宗教的な生活に欠かせないものであり、古くから継承されているものもあります。

バスクの民俗舞踊は400種類以上の踊り方があると言われており、小刻みで素早くステップを踏む、足を高く蹴り上げるなど、技巧的な舞踊です。

そうしたバスク地方に伝わる民俗舞踊のひとつ、若い男性が踊るエスパタ・ダンツァでは剣が使用されます。バスク地方では7月に、「牛追い」で知られるサン・フェルミン祭が各地で開催されます。サン・フェルミン祭は宣教活動の最中に殉教した聖人を称える祭です。

バスク地方の町・レサカでは、サン・フェルミン祭の行事として若者が町を流れるオニーン川に架かる橋や護岸壁の上でエスパタ・ダンツァを踊ります。これは、15世紀にオニーン川の両岸に住む人々の間で起こった紛争を解消するために始まった舞踊で、舞い手は両岸の住民から選ばれた若者です。

舞い手は、リズムに合わせて剣を手にステップを踏み、踊りが終わると町長が登場し、橋の上で旗を振ります。紛争解消の調印を示す儀式が執り行なわれるのです。

その後人々は、町の中央広場へと移動し、剣舞をはじめとする民俗舞踊を踊ります。民俗舞踊の宝庫・スペインでは、現代も人々の暮らしに舞踊が深く根付いているのです。

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