世界の剣舞
ヨーロッパの剣舞:イングランド・スコットランド・北アイルランド
世界の剣舞
ヨーロッパの剣舞:イングランド・スコットランド・北アイルランド

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イギリス各地には剣を使用するソードダンス=剣の舞が伝えられています。一方、ナイトやデイムの授与式では、王室関係者が中世の騎士叙任において王が行なったのと同様に、跪く叙勲者の両肩を儀礼用の剣で触れる儀式が行なわれます。折節の祭事で楽しまれる民俗芸能に、栄誉称号の授与にと、イギリスでは今も剣が人々の暮らしに深く溶け込んでいるのです。

ヨーロッパの大国

かつて「太陽の沈まぬ国」と称され、世界各地に自治領をもつヨーロッパの大国・イギリス(グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国)は、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4ヵ国から成る連合王国です。

  • イングランドの国旗

    イングランドの国旗

  • スコットランドの国旗

    スコットランドの国旗

  • ウェールズの国旗

    ウェールズの国旗

  • 北アイルランドの国旗

    北アイルランドの国旗

公用語は、英語以外にもウェールズ語、スコットランド語、スコットランド・ゲール語、アルスター・スコットランド語、アイルランド語など5つがあり、現在も交通標識などには国ごとに英語以外の言語が併記されています。

国民は、ゲルマン民族系のイングランド人、ケルト系のスコットランド人、アイルランド人、ウェールズ人の他に、旧植民地出身の民族も加わり、現在は多民族国家。

王国としての長い歴史を持つイギリスは、伝統を重んじる国であり、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの国ごとにそれぞれの伝統文化や古典芸能、祭事や行事が継承されています。

スコットランドと北アイルランドでは独自の紙幣も発行されており、連合王国内で使用されているのも特徴です。

ナイト叙勲

ナイト叙勲

女王が君主をつとめるイギリスでは、中世の騎士階級に由来する「ナイト」と、女性に対しては「デイム」という栄誉称号の授与が現在でも行なわれており、国家への功労者に対して王室関係者から叙任されます。

ナイトやデイムの授与式では、王室関係者が、中世の騎士叙任において王が行なったのと同様に、跪く叙勲者の両肩を儀礼用の剣(けん・つるぎ)で触れる儀式が行なわれ、剣の平らな面で肩に触れられたときから、叙任者は一代限りのナイト(騎士)に任ぜられるのです。

国ごとに異なる伝統と文化

イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの国ごとに個別の文化や伝統が残るイギリスでは、王国ながら早くから自由民主主義に則った統治が行なわれたため、多彩な文化や芸術が創造され、育まれました。

文化の保護、継承に関しても早くから積極的な活動が行なわれ、1898年には民謡協会が、1911年には英国民俗舞踊協会が発足。各地に残る民謡の収集と出版や、伝統舞踊の保存と普及が行なわれました。民謡協会と英国舞踊協会は、1932年に合併し英国民族舞踊民謡協会となり、現在も活動中です。

国ごとの文化は、言語同様に大きく異なっています。例えば、男性が着用するスカート状のキルトは本来、スコットランドの伝統衣装でした。キルトは、家柄ごとに決められているタータンチェックの生地で作られ、腰のベルト、革のバッグ、ダークと呼ばれる大きな短剣とともに着用。

ウェールズには女性用の民族衣装が残されていて、現在も祭りの際などに着用されています。ウェールズの女性用民族衣装とは、ガウンまたはベッドガウンと呼ばれる腰まで覆う長い上着にスカートとペチコートを合わせた物。さらに、ショールやケープを羽織り、頭には平らなふちの高い帽子を被るのです。

伝統的な音楽も国ごとに異なりますが、北アイルランドとスコットランドの音楽には、フィドルと称されるバイオリンやバウロンという太鼓、バグパイプを使用するなど共通点が多くあります。

こうした伝統音楽はジグやリールと言うダンスのための舞曲や、叙事詩に合わせた民謡として継承されてきました。

スコットランドの民謡は、現在では様々な国にも伝えられており、日本の卒業式で歌われることが多い「蛍の光」は、スコットランド民謡の「オールド・ラング・サイン」という歌で、旧友との友情を確かめ合う歌。スコットランドでは結婚式などでよく歌われています。

一方、ウェールズもまた「歌の国」として知られており、多くの讃美歌や民謡が世界中に伝えられているなど有名です。

そして、民族衣装などはないものの、イングランドではモリス・ダンスという民俗舞踊が残されており、収穫祭などの祭事で楽しまれています。

モリス・ダンスは、ヨーロッパ・地中海地方の舞踊が伝えられたものとされており、「モリス」は「moorish=ムーア人の」という意味。14世紀頃、moorishと呼ばれる舞曲がイギリスに伝えられ、モリス・ダンスへと昇華されたのです。

モリス・ダンスは、男性6人が1組となって行なう舞踊。舞い手はみな白い服を着用し、悪霊を祓うために足首には鈴を付け、手にはハンカチーフを持ち、音楽に合わせて振りながら踊ります。地域によっては、ハンカチーフではなく湾曲した細身の剣を手にし、向かい合って打ち合いながら踊るのが特徴です。

勝利の踊り・ソードダンス

スコットランドには、12世紀頃から続く「ハイランドゲーム」という競技大会があり、ここでは丸太投げや石投げといった重量競技の他に、民俗舞踊も種目に選ばれています。

スコットランドの民俗舞踊の代表的なものは、ハイランドダンスとカントリーダンス。

ハイランドダンスは競技として踊られるもので、4ステップや6ステップ等で構成されており、キルトを着用した舞い手は、ギリーという靴を履いて、爪先で跳ねながら踊ります。

一方、カントリーダンスは社交として楽しまれるもので、舞踊の種類も様々です。その中のひとつ、ソードダンスにはその名の通り、ソード=剣(けん・つるぎ)が使用されます。

ギリーカラム

ギリーカラム

スコットランドのソードダンスは「ギリーカラム」と呼ばれ、1500年代にスコットランドのある部族長が、敵対していた他の部族を打ち負かした際、剣を地に置いてその上で踊った「勝利の踊り」が始まり。

現在のギリーカラムは、地面に剣2本を十字に置き、その刃に触れないようにステップを踏む舞踊です。

イギリス国内には、他にも剣を使用するソードダンスが伝えられています。いずれも戦士の舞踊を礎としており、イングランドの「ザ・カークビー・マルジアード・ソードダンス」では真っ直ぐなロングソードを、「ザ・スウォールウェル・ソードダンス」ではショートソードを手に持ち、打ち合いながらステップが踏まれるものです。

イギリスの各地に伝えられているソードダンス=剣の舞は、戦士の勝利を祝う踊りに基づくものと、豊作を祈念して厄災を祓うために剣を使用するものとがあります。

いずれの舞踊でも、現在では模造刀や棒に変えて踊られるのもポイント。折節の祭事で楽しまれる民俗芸能に、栄誉称号の授与にと、イギリスでは今も剣が人々の暮らしに深く溶け込んでいるのです。

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