世界の剣舞
東欧の剣舞:クロアチア
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東欧の剣舞:クロアチア

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コルチュラにはモレシュカ、クンバニエ、モシュトゥラなどの民俗舞踊が残されており、モレシュカは舞い手が剣を手に踊る戦いの舞踊で、謝肉祭の習慣に基づいた舞踊だとされています。幾多の戦いの歴史が、クロアチアでは今も伝統行事や舞踊に残り、脈々と受け継がれているのです。

バルカン半島の美しい国、クロアチア

クロアチアの国旗

クロアチアの国旗

バルカン半島、アドリア海に面するクロアチア共和国(以降、クロアチア)は、戦乱を経た今も中世の街並が今も多く残り、10ヵ所の世界遺産をもつ美しい国です。レンガや石で作られたその街並は、日本のアニメーション映画のモデルにもなりました。

遺跡も多く、イストリア半島にあるイストラ郡最大の都市・プーラの市街地には、古代ローマ時代に造られた「プーラ円形闘技場」があります。完成当時はこの闘技場で剣闘士の試合や、猛獣と剣闘士との戦いが見世物として公開されていました。

その後、中世にはこの闘技場で騎士が訓練を行なったのです。

現在の闘技場は復元補修工事が行なわれ、コンサート会場などに使用される他、ローマ時代の甲冑(鎧兜)と剣(けん・つるぎ)を模した剣闘士姿の男達が闘いを再現するショーの舞台とされています。

アドリア海に面したクロアチアの海岸線は屈曲に富んでおり、大小合わせて1100以上の島や岩礁があります。そのため、クロアチアは「千島の国」とも呼ばれていました。

南北に長いクロアチアは、日本と同様に四季がある国ですが、地中海気候により湿度が低く、穏やかな気候。美しい自然も多く残されており、ハリウッド映画のロケ地としても人気です。

ヨーロッパとアジアに接するクロアチアは、古代から東西の帝国や王国による攻撃を受けて支配された歴史を持ち、多彩な民族、宗教の影響を持つ文化が育まれました。

あまり知られていませんが、ネクタイの起源はクロアチアの兵士にあると言われています。17世紀、フランスを訪れたクロアチアの兵士が首にスカーフを巻いているのを見て、ルイ14世が興味を抱いたことが、ネクタイの起源だとか。当時のクロアチアの兵士達は、出兵する際、彼らの無事を祈る家族や恋人からスカーフを贈られ、任務の際に首に巻いていたのです。兵士のスカーフが変化し、現代のネクタイとなったと言われています。

そのため、現在各国で使用されているネクタイを表す名詞は、「クロアチアの兵士=クラバット」を語幹として形成されています。例えば、フランス語ではネクタイのことを「cravate=クラバット」、イタリア語では「cravatta=クラバッタ」、ドイツ語では「Krawatte=クラバッテ」と言います。

クロアチアの伝統文化

クロアチアの民俗芸能や文化もまた、他国と同様に地域ごとに異なっており、ユネスコの無形文化遺産には15もの文化遺産が登録されています。

リェリェ

リェリェ

その中のひとつ、北東部のスラヴォニア地方、ゴリャニ村に残る春の伝統行事「リェリェ」では、サーベルを使用。

リェリェは「女王の行列」と呼ばれる行事で、16世紀にオスマントルコの支配下にある時代の伝説に基づいた伝統行事です。

オスマントルコの侵略により、村の男性は全員捕虜として囚われてしまいました。すると、残された妻達は造花で飾った男性用の帽子を被り、手には鎌と頭髪を持ち集団でオスマントルコ軍の野営地へと向かったのです。その異様な姿に恐れをなした兵士達は妻達を化け物だと思い込み、村の男達を置いて逃げ出したという伝説を模しているほど。

現在では、若い女性達が鎌と頭髪ではなくサーベルを手に、装束はそのままで村を練り歩き、見物に訪れる観光客をもてなす行事も併せて催されています。

古代より戦争が多かったクロアチアには、こうした歴史上の史実にまつわる行事が、他にも残されています。

南部のダルマチア地方、スィニュに残る行事「アルカ」は、1715年から続く騎士の大会です。スィニュの市民による700人の防衛軍が、6万にものぼるトルコの軍勢を追い払ったことを記念して毎年催されているのです。戦いに参加した兵士達の訓練を競技として再現し、大会は3日間に亘って開催されています。参加者は馬に乗り、アルカという小さな鉄の輪に向って槍を投げ、射抜けるか否かを競い合うのです。

また、ザグレブ県の北東部にあるスヴェタ・ヘレナでは、国際騎士トーナメントが毎年開催されています。このトーナメントは、1557年8月19日にスヴェタ・ヘレナの町でおきた聖ヘレナの戦いを記念した催しです。聖ヘレナの戦いは、トルコの軍勢に対するクロアチア人の大きな勝利のひとつとして有名で、このトーナメントでは世界各国の騎士団がゲストとして招かれています。期間中、街のあちらこちらに騎士団のキャンプが設置され、乗馬、剣術、弓など、様々な種目のトーナメントが行なわれるのです。

クロアチアの剣の舞

「東方見聞録」を残した13世紀の冒険家、「マルコ・ポーロ」は、クロアチア中央の古い港町・コルチュラで生まれたとされています。

アドリア海に突き出した半島であるコルチュラには、旧石器時代に人が暮らしていた痕跡が見られる遺跡があり、中世には島の周囲に城壁が造られました。1周しても20分ほどという城壁内の街には大聖堂や、ベネツィア共和国の総督府など美しい建物が多く残されています。

モレシュカ

モレシュカ

コルチュラにはモレシュカ、クンバニエ、モシュトゥラなどの民俗舞踊が残されており、モレシュカは舞い手が剣を手に踊る戦いの舞踊。謝肉祭の習慣に基づいた舞踊だとされています。

モレシュカは、はじめに民間伝承に基づく劇が披露され、その後舞踊が始まります。

劇の内容は、美しい少女を巡って戦う黒と白の2人の王様のやり取りを演じたもの。黒の王によって、白の王の下から連れ去られた美少女を、白の王とその軍勢が取り戻すという筋書きです。劇に続くモレシュカの踊りは、双方の王の兵士が戦う様子を舞踊としたもので、剣を手にした兵士が向き合い、刃を交します

舞い手は、音楽と刃がぶつかる金属音に合わせながら、優雅にステップを踏みます。交戦を1場面とし、場面が終わるたびに兵士役の舞い手は雄叫びを上げ、次の交戦へと準備します。場面は7場までありますが、途中、4つ目の場が終わったところで美少女が仲裁に入ります。しかし、諍いは止まることなく、再び兵士が戦います。

最後は、白の王の兵士が勝利を収め、美少女は無事、白の王の下に戻れるのです。幾多の戦いの歴史が、クロアチアでは今も伝統行事や舞踊に残り、脈々と受け継がれているのです。

東欧の剣舞:クロアチア

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