世界の剣舞
アジアの剣舞:トルコ
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アジアの剣舞:トルコ

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トルコの剣の舞「クルチュ・カルカン」は、トルコ北西部にあるトルコ第4の都市ブルサ周辺に伝わる民俗舞踊です。今もフェスティバルなどで披露されているトルコの剣舞、クルチュ・カルカンはブルサの人々の努力により、次世代へと大切に受け継がれています。

古代から文明が栄えた地の舞踊

トルコの国旗

トルコの国旗

アジアとヨーロッパにまたがるトルコ共和国(以降、トルコ)には、1万1千年から60万年前の旧石器時代の遺跡があります。トルコ国内にはチグリス川、ユーフラテス川の源流があり、2つの川がもたらす恩恵により古代から文明が栄えたのです。

さらに、黒海、エーゲ海、地中海という3つの海に囲まれたトルコは、古くから交易の要所であり、東洋と西洋の多彩な文化が交差する国際的な国家でもありました。

中央アジアの遊牧民を起源とするトルコ人は、勇猛果敢な気質を持ち、14世紀に現在のアナトリア西部から興ったメフメト2世の率いるオスマン・トルコが、バルカン半島へと領土を拡大。1453年には東ローマ帝国のコンスタンティノープル(現在のイスタンブール)を陥落させ、東ローマ帝国を滅亡へと導きました。以降、さらに多くの民族がトルコに移住するようになり、国際化が進んだのです。

現在のトルコは、トルコ人に加えクルド人、クリミア・タタール人、アラブ人によって構成されており、宗教、生活習慣、文化、音楽、舞踊、衣装などが異なり、それらは各地で継承され、民族ごとに膨大な数の民俗芸能が残されています。

国民のほとんどがイスラム教徒であるため、トルコ文化はイスラム教を礎としていますが、国際都市ならではの海外からの影響も多く見受けられるのも特徴です。

トルコの民族音楽には、オスマン朝の特徴であるクラシックで美しい宮廷音楽の他に、アジアの影響を受けた伝統音楽があります。トルコの古典音楽の特徴は楽譜が存在しないことであり、継承は「アシュクラル」という吟遊詩人によって行なわれてきました。そして楽曲には旋律に関する規制が少なく、即興性が重んじられています。

演奏にはリュートやバイオリン、ケメンチェなどの弦楽器の他、打楽器のサントゥール、クディム、ティンパニ、シンバル、笛のクラリネットなど豊富な楽器を使用。そして地域ごと、民族ごとに異なった民俗舞踊と衣装が各地に残されています。

トルコと言えば「ベリーダンス」を想起される方も多いのではないでしょうか。ベリーダンスはトルコでも発展しましたが、発祥の地は異なるのです。ベリーダンスの発祥の地にはインドやオスマン・トルコなど諸説あり、地中海地域、中東、アフリカと関係をもつ舞踊であるとされています。

トルコの民俗舞踊

クルチュ・カルカン

クルチュ・カルカン

トルコの民俗舞踊で代表的なものは、黒海地方の「ホロン」や、コンヤからシリフケ地方に伝えられている「カシュク・オユヌ」、剣と盾を使用するブルサの剣の舞クルチュ・カルカン、エーゲ海地方の「ゼイベク」、円になって踊る「バル」、アナトリアで踊られている「ハライ」などが挙げられます。

カシュク・オユヌは、民族衣装で着飾った男女が手に持った木のスプーンを打ち鳴らしてリズムを刻みながら踊るため、別名は「スプーンダンス」。この踊りは彼らの日常生活を表しており、木のスプーンは代々伝えられてきた木工作業を象徴しています。

また、イスラム教神秘主義の一教団が宗教行為として舞う「セマー」という旋舞も有名です。宗教行為であるセマーは、フレアースカートを着けた人々が、音楽に合わせてくるくると回転するもので、回転は宇宙の運行を表現しており、祈りの手段。セマーは「メヴレヴィレル」という葦笛(あしぶえ)の「ネイ」を使用した幻想的な音楽に乗せて踊られます。

そしてトルコの剣の舞 クルチュ・カルカンは、トルコ北西部にあるトルコ第4の都市ブルサ周辺に伝わる民俗舞踊。「クルチュ」は剣、「カルカン」は「盾」のことです。

ブルサは古くからシルクロード西端の都市として栄え、オスマン・トルコ帝国の首都でもありました。そのため、街には多くの歴史的建造物が残っています。また、温泉地や絹織物産業でも有名で、古代より人々が集い、賑わっていたのです。

ブルサ周辺に伝わる民俗舞踊クルチュ・カルカンは、オスマンによる統治、支配の様子を剣と盾を使用して表現する舞です。男性のみが踊る舞踊で、衣装としてオスマンの初期の軍服を着用します。もとはトルコ兵の兵士が剣術の鍛錬のために行なっていた訓練が、民衆の踊りに取りこまれたものです。クルチュ・カルカンには伴奏が無く、舞い手が剣と盾を交わす際にたてる金属音に合わせて踊ります。

ヤタガン

ヤタガン

使用する剣は、初期のオスマン・トルコ兵の物で、ヤタガン(現代トルコ語ではやタアン)というショートソードです。ヤタガンは中近東に多くみられる、オスマン帝国で16~19世紀後半まで使用された少し湾曲した刃の刀剣で、イェニチェリという軽装の歩兵が携帯。オスマン・トルコの軍隊で使用され、イスタンブールやブルサなどで大量に生産されました。

オスマン・トルコには、他にスィパーヒーと呼ばれる騎兵がいましたが、イェニチェリは平常時から勤務する常備軍を構成する歩兵でした。

トルコの刀剣としては他に、クルチというアラビア諸国ではシャムシールと称される湾曲した片刃のロングソードがあります。

現代のクルチュ・カカン

産業、観光の両面で多くの人が行き交う現在のブルサには、多くの観光スポットが存在しています。また、ヨーグルトをかけて食べる「イスケンデル・ケバブ」の発祥の地でもあり、名物料理も豊富です。

ブルサのシンボルとも見なされている「イェシル・トゥルベ」は「緑の霊廟(れいびょう)」と呼ばれる八角形の霊廟。ここにはオスマン帝国のスルタン(君主のこと)とその家族が埋葬されており、室内はターコイズブルーの壁に金でカリグラフィーが施されています。棺も青や緑のタイルや金で装飾され、豪華で美しく、スルタンの権力の強さを物語っています。

イェシル・トゥルベに隣接する施設には「オスマン風クルチュ・カルカン民族舞踊協会」があり、盾と剣を手に舞う伝統舞踊クルチュ・カルカンの継承団体です。協会では、クルチュ・カルカンの説明が聞ける他、衣装を借りて着用し、写真撮影も可能。ブルサの人々にとって、クルチュ・カルカンは大切な民俗舞踊であることが、この協会を訪れると感じられます。

今もフェスティバルなどで披露されているトルコの剣舞、クルチュ・カルカンはブルサの人々の努力により、次世代へと大切に受け継がれています。

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