世界の剣舞
アジアの剣舞:韓国
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韓国における刀剣を使用する舞踊、剣舞(コンム)とは宮中舞踊である呈才(チョンジェ)の中のひとつで、新羅王朝時代(紀元前57年~935年)に起源があるとされる、古くから伝えられてきた伝統舞踊です。現代でも民俗舞踊は伝統音楽とともに大切に継承されており、国立音楽院などで継承教育が積極的に行なわれています。

韓国の伝統舞踊

韓国の国旗

韓国の国旗

韓国においても、先史時代から宗教儀式において舞踊が舞われていました。紀元前57年~676年頃、高句麗(こうくり)、百済(くだら)、新羅(しらぎ)の三国が争っていた三国時代の遺跡である高句麗古墳壁画には、踊りに興じる人々の姿が描かれ、新羅の土偶や土器にも、舞踊をする様子が描かれています。

そして、韓国の民俗舞踊にも刀剣を使用するものが残されています。1392~1910年の朝鮮時代の中期ごろまでには宮中で披露される宮中舞踊が、後期には民衆が楽しむ民俗舞踊が確立され、以降発達してきました。

宮中舞踊とは、儀式の際や国王一族や国賓のための宴席などで披露され、華やかな衣装を着用し、高い芸術性を尊ぶ舞踊。歌舞は、王室や国家の威厳を称えるものが主な題材とされていました。

韓国では、918~1392年頃の高麗(こうらい)時代に中国の妓女制度(ぎじょせいど)が伝えられ、女官の中でも容姿の整った者に歌舞を教え、女楽(じょがく)として雇用。彼女達は「妓生」(キーセン)と称され、高麗政府直属の掌学院に登録されていました。

選ばれた女官達は、掌学院で歌舞などを学びました。その後、妓生として宮中や貴族、役人、商家に雇われ、折節に歌舞などを披露するとともに、医療業務にも従事。宮中での歌舞は、妓生が担っていたのです。

一方、民衆の間で育まれた民俗舞踊には宗教に関するもの、人々の生活を反映したもの、社会を批判するもの、芸能として楽しまれたもの、仮面劇、僧侶の舞など多様な舞踊が生み出されました。宮中舞踊や民俗舞踊は、コムンゴやカヤグム、アジェンといった琴、ピリ、テピョンソテグムなどの笛で奏でられる伝統音楽に合わせて舞われるものです。

中国と隣接し、古くから大陸の様々な文化や宗教が伝播された韓国では、宮中芸能、民俗芸能において多彩かつ上質な舞踊が数多く生み出され、現代まで引き継がれました。

現代でも、民俗舞踊は伝統音楽とともに大切に継承されており、国立音楽院などで継承教育が積極的に行なわれています。また、私設の舞踊団も数多く存在し、伝統的な民俗舞踊と現代舞踊の融合、舞踊劇の創作などが推進されているのです。

韓国の剣舞(コンム)とは

韓国剣舞

韓国剣舞

韓国における刀剣を使用する舞踊、剣舞(コンム)とは、宮中舞踊である呈才(チョンジェ)の中のひとつで、新羅王朝時代(紀元前57年~935年)に起源があるとされる、古くから伝えられてきた伝統舞踊です。剣舞は、宮廷舞踊の中でも最古の演目ではないかと考えられており、剣器舞(けんきぶ)、カルチュムなどとも称されます。

新羅王朝の時代、黄倡郎(ファンチャン)という少年が敵国・百済王国の王宮に忍び込み、百済王の前で剣を手に舞いを披露しながら、王を刺殺。直後に黄倡郎は捕えられ、処刑されてしまいました。黄倡郎の英雄的な行ないを称えた新羅の人々が、彼の顔を模した面を着け、剣を手に舞ったのが剣舞の始まりであるとされています。

また、剣舞は武術を由来とする舞踊であり、最古の宮廷舞踊の演目として継承されてきました。宮廷舞踊であるため、現在も踊り手は女性で、2人で1組となり4~8人で踊ります。装束は、色鮮やかで華やかな衣装と戦笠(チョンリブ)をまとい、両手に舞踊用の剣を持ちます。

戦笠とは、韓国の時代劇などでも使用される帽子で、軍人が出陣するときに使用した帽子です。衣装は藍色のチマと言う女性用の巻きスカートに、チョゴリと言う上衣をまとい、袴を太い帯で巻き上げ、一番上に戦服を着ます。

剣は剣舞用の模造刀で「カル」と呼ばれ、手もとで刃の部分が折れ、回転するようになっています。踊り手が剣を振り上げ勇壮に、そしてゆったりと優雅に、または軽やかにと様々に動きを変え、くるくると回転を織り交ぜながら踊るのが特徴です。

この回転は「筵風擡」(ヨンプンデ)と言い、腰を前に屈める、後ろに伸ばしながら回るといった動作であり、剣舞の特徴です。踊る際には回転する剣の金属音が鳴り、この音も剣舞の特徴となっています。

武術を礎とする剣舞ですが、儀式や祭礼において舞われる剣舞では、刀剣は世界の様々な国と同様に、天との繫がりをもたらす聖なる物として位置づけられています。

宮中や民衆から幅広く愛された韓国の剣舞は、長い歴史の中で芸術性が高められ、現在でも晋州(チンジュ)、密陽(ミリャン)、平壌(ピョンヤン)など朝鮮半島の各地で、それぞれの郷土色を反映しながら盛んに演じられています。

韓国・重要無形文化財となった剣舞

韓国各地に残る剣舞のなかには、韓国の重要無形文化遺産に指定された民俗舞踊があります。

晋州剣舞

晋州剣舞

韓国南東部・慶尚南道(キョンサンナムド)にある小都市・晋州で継承されてきた晋州剣舞(チンジュケンム)です。晋州剣舞は、古代の宮廷舞踊であった剣舞に最も近いものとして位置づけられています。

韓国では、文化遺産保護政策のひとつとして文化財の指定を行なっており、重要無形文化財の指定は1964年から開始されました。そして晋州剣舞は、その第012号として1697年に指定されました。

晋州剣舞は4人ずつ左右対称に並んだ、8人の女性の踊り手が舞うもので、カルと呼ばれる剣を両手に1本ずつ手にした女性達は、変調する音楽に合わせるものです。

晋州剣舞では、他地域の剣舞とは異なりカルではなく、刃が固定された長短1対の剣を使用して舞います。8人の女性の配置やフォーメーションは決められており、念佛(ヨンプル)、打令(タリョン)、早い打令(チャジュンタリョン)と移り変わるテンポに合わせて踊られるものです。

鮮やかな衣装を揺らし、優雅かつ威厳ある舞は、テンポに即して軽快な舞に転調。舞い手の動きに即して鮮やかな衣の色が揺らめき、幻想的な雰囲気が漂う舞踊です。

また、晋州剣舞では「ハンサン」という、宮中舞踊用の多色で染められた長い袖が着用されることがしばしば。長い袖をひらめかせて舞う様は、より優雅で威厳にあふれ、宮中舞踊としての格調を感じさせます。

晋州市にある伝統芸術会館という施設では、現在も継承活動が続けられています。

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