日本刀鑑賞のポイント
日本刀鑑賞ポイント②
日本刀鑑賞のポイント
日本刀鑑賞ポイント②

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日本刀(刀剣)は1種類だけではなく硬さの違う金属が、いくつも組み合わされて構成されています。その中でも、日本刀(刀剣)の本体部を構成しているのが「地鉄」(じがね)なのです。それぞれ特徴や模様が違っているので、よく注目してひとつひとつの模様を楽しむことも日本刀(刀剣)鑑賞の醍醐味でもあります。また、日本刀(刀剣)が実際に使用されると、どれほどの実力があるのでしょうか。そのような、あまり知られていない日本刀(刀剣)の深い見どころ、ポイントをご紹介します。

地鉄

地鉄は、鋼(はがね)そのものの材質と、鋼を折り返し鍛錬することにより現れる「鍛肌」(きたえはだ)の模様を総合した物のことです。

日本刀(刀剣)の制作には約10kgの鋼材を使い、完成時には10分の1以下、850~900gになります。日本刀(刀剣)は標準的に15回折り返し鍛錬を行なうのですが、これにより地鉄は32,768枚の薄い鉄層となり、衝撃抗力が増し強度は約2倍になるのです。ベニヤ板が折れにくいのと似ています。

折り返し鍛錬の効果はそれだけではありません。不均一に分布した炭素が均一化され硬度にバラつきがなくなり折れにくくなるのです。鉄素材のはじめは1.5%ほどの炭素量ですが、刀身の鋼として最適な0.7%ぐらいに鍛錬して調整します。具体的な衝撃抵抗力は、刃方からの衝撃には1t、横からの衝撃には250kgの圧力に耐える強度です。 

鉄素材には「鉄滓」(てっさい:鉄を製錬するときに出る不純物)が相当含まれており、それを折り返し鍛錬することで火花と共に叩き出します。その結果、鍛接面が「杢目肌」(もくめはだ)、「板目肌」(いためはだ)、「柾目肌」(まさめはだ)、「綾杉肌」(あやすぎはだ)などが基本肌として現れますが、1種類だけの肌模様は少なく混在しているのが普通です。

地金の種類①

地金の種類①

鍛肌は各流派の鍛錬の相違により、鑑賞するための重要な見所のひとつ。鍛着がはっきり出ている肌合いを「肌立つ」(はだたつ)と言い、鍛え目がより密着している肌合いの物を「肌がつむ」と言います。

板目肌は日本刀(刀剣)に一番多く観られる肌模様で、大模様の肌を「大板目肌」(おおいためはだ)、小模様を「小板目肌」(こいためはだ)、さらに細かくきれいにつんだ肌が「梨子地肌」(なしじはだ)です。

各肌の作例として「相州伝」(そうしゅうでん)の作刀には大板目肌が交じり、よくつんだ小板目肌は鎌倉時代の「山城伝」(やましろでん)の刀工によく見られます。

杢目肌は、この肌模様のみの日本刀(刀剣)はほとんどありません。通常は板目肌に交じって杢目肌が現れ「備前伝」(びぜんでん)の日本刀(刀剣)や「備中青江派」(びっちゅうあおえは)の日本刀(刀剣)に多く観られます。

柾目肌は最も古い鍛肌であり、日本刀(刀剣)以前の「上古刀」(じょうことう)の多くが柾目肌で、日本刀(刀剣)の一番古い流派である「大和伝」(やまとでん)がこの作風を継承。綾杉肌は柾目肌の変形であり、奥州の「月山」(がっさん)や奥州と深い関係が考えられている薩摩の「波平」(なみのひら)などに多く観られます。

次に、鍛肌とは別に地鉄には各種の働き(地肌や刃中に動きや変化のあること)が観られ、中でも最も見極めが難しいのが「地景」(ちけい)。黒光りする細い線が地肌模様に寄り添って黒く観える硬度の異なる鋼線のことで、大肌目に鍛えた日本刀(刀剣)の場合は観えやすく、肌目が細かい鍛えの日本刀(刀剣)は認識しにくい働きです。この働きが刃部に現れるのが金筋「稲妻」で、炭素量が周囲の地鉄より0.1%ほど多くなっています。

また「湯走り」(ゆばしり)の働きは、「地沸」(じにえ)が一部分だけに強くついている所で、輪郭がはっきりせず星屑の集まりのように観えるのです。

地金の種類②

地金の種類②

地鉄には、もうひとつ重要な「映り」と言う働きがあり、かすかにおぼろげに観える部分で、特に備前刀に多い働きです。

映りの解釈には、刃文の影が映ったように黒く現れて観えるのが映りだと言う見解と、息を吹きかけたように白く観える部位が映りだと言う2つの異なる見解があります。

黒く観える説明は刃文寄りすぐ上部、白く観えるのは「鎬」(しのぎ)寄りの状態を説明した物。映りが刃文の影と考えると、黒く観えるところが映りと考えるのが適当です。

黒く観える映り部は、堅いトルースタイトの地鉄の中に軟らかいガンマ鉄粒子が混在しており、研磨により軟らかいガンマ鉄粒子がへこみ、刃部にマルテンサイトの粒子がないので、白く光らずに黒く観えます。

白い映りの部分には、トルースタイトの中に軟らかいアルファ鉄の粒子が混在し、研磨すると軟らかいアルファ鉄がくぼみ、淡い光を放って白く観えるのです。

トルースタイトの中にマルテンサイトの硬い粒子が混在する場合は「沸映り」(にえうつり)となり、これは山城系の日本刀(刀剣)に多く観られます。

日本刀(刀剣)は曲がったら、曲がりを直して使うことができますが、折れたら命取りです。折れを防止するため、備前の刀匠達が考え出したのが映り。映りは比較的軟らかいトルースタイト中に、純鉄に近いアルファ鉄が微細に混在しているので全体に柔軟性が増し、折れることがなくなります。

関東大震災のとき、天井から落ちて柱の下になった「備前長船長光」(びぜんおさふねながみつ)の日本刀(刀剣)が「くの字」に曲がりました。折れずに曲がったのは、柔軟性が高かったためだと考えられています。

その後、研師「吉川恒次郎」(よしかわつねじろう)の手によって、曲がった刀身はもと通りに直されました。現在は名物「大般若長光」(だいはんにゃながみつ)という有名な国宝として東京国立博物館にあります。

太刀と打刀の違い

「太刀」(たち)は馬上で使用するのを主目的にする日本刀(刀剣)です。したがって、馬上だと相手との距離が遠いので、太刀は長寸の日本刀(刀剣)が多く、太刀は刃を下にして腰に佩きます。その理由は3つあり、第1は、刃を上にして腰に帯びると「鐺」(こじり)で馬に鞭を入れてしまうようなことになってしまうため。

第2は、紐で腰に下げているので鞘を後ろへ引くことができ、下から抜き上げる長い太刀が抜きやすいということ。

第3は、刃を上にした日本刀(刀剣)だと、反りの関係から柄が下を向き、馬の振動で柄が抜けた場合に、そのまま下に脱落してしまう危険があること。

以上の理由から騎馬武者は太刀を使うのです。

太刀

太刀

しかし「元寇の役」(げんこうのえき)より以後、集団戦を経験した日本武士の戦闘方法も、個人戦から集団戦に変化。そうなると、馬上の武士は身分の高い人なので1番先に狙われるのを避けるために、集団に混じって戦闘するようになりました。

そのため下級武士の使用刀であった「打刀」(うちがたな)を上級武士も使用するようになります。その理由は、太刀は1で抜き上げ、2で斬り下げる2拍子の剣に対して、刃が上向きの打刀は1拍子で抜き打ちができるので、太刀からスピードが速い打刀に移行していきました。

太刀から打刀の移行にしたがって、反り位置も変わってきたのです。太刀は、馬の速度と武者の振り出す太刀速度(時速にして約300km/s)が合算した衝撃が刀身にかかります。このときに発生した衝撃波が、柄を持つ手に直接的に受けないように工夫した反りが「腰反り」(こしぞり)なのです。

これに対し、馬の速度が影響しない打刀は当然衝撃が少なく、逆に手元が1動くと3働く梃子の原理を利用する「先反り」(さきぞり)の日本刀(刀剣)になりました。

また、刃を下にしたときに観えた銘を「太刀銘」(たちめい)、刃を上に飾ったときに観える銘を「刀銘」(かたなめい)と言います。

余談ですが「刀掛け」に日本刀(刀剣)を飾る場合「私はあなたを攻撃しません」という意味の作法で、打刀も太刀も必ず柄を左にして飾ることがあります。これは、柄が利き手ではない左側にあることで、これを抜いて斬りかかるつもりはないという意思表示になります。逆に柄を利き手である右側にするのは「いつでも抜いて斬りかかるぞ」という意味になり、大変な無作法です。

古刀五箇伝と新刀特伝

五箇伝「五箇伝」(ごかでん)とは、古刀期に①山城(京都)、②大和(奈良)、③備前(岡山)、④相州(神奈川)、⑤美濃(岐阜)の各国に生まれて発展し、全国に波及した作風を分類した物です。

大雑把にその特徴を挙げれば、山城伝は小板目肌と小沸出来の直刃、大和伝は柾目肌と沸出来の直刃仕立て、備前伝は匂出来の丁子乱刃と杢目肌、相州伝は沸出来の互の目乱れ刃、「美濃伝」は匂出来で尖り刃を交えた乱刃というのが基本的な作風ですが、時代の変遷や個性の違いで、厳密には区分けできません。

基本となる五箇伝は新刀期にも伝承されますが、古刀にはない新しい作風も生まれ、これを「新刀特伝」と分類しています。新刀特伝とは、「古刀五箇伝」それぞれの伝法を受け継ぎながら、古刀期とは異なる造刀法のこと。

つまり、刀工自身が修行しているひとつの伝法を基本として、技術の進歩や時代の風潮、また経済問題などからも影響を受けて、新しい焼き入れ鍛錬法を研究していったのです。

例えば、鍛錬と焼き入れの関係では、それまで小板目肌など目の細かな鍛肌には幅の狭い刃文を入れるのが常識でしたが、新刀特伝では逆に目の細かな鍛肌に幅の広い刃文を入れています。

日本刀(刀剣)の斬れ味

戦国時代に起こった合戦は、1戦あたりの死者が平均5名と、およその数が分かっています。その内訳は、弓矢での死者が約4名、槍やその他が1名で、その後、鉄砲をはじめとする飛び道具での戦いが基本となり、日本刀(刀剣)は副次的な役割でした。

しかし、日本刀(刀剣)の実力は世界一の性能があり、斬りつけ時の圧力には1tに耐え、横打ちには250kgに耐えます。その切れ味は、最高で七ツ胴を裁断した日本刀(刀剣)があるほどです。

反りは斬り付け時の衝撃を軽減する役割がありますが、これは焼き入れすると刃部の体積が増大することにより自然に生まれます。刀匠はその反りを考え、基本の刀身を作るのです。

ここまで簡単に日本刀(刀剣)の説明をしましたが、日本刀(刀剣)は10kgの鋼を使い、10分の1以下にまでに鍛錬し1振の日本刀(刀剣)にしますが、西洋では、斬れれば良いという考え方のため10kgあれば10振の剣ができます。

日本刀(刀剣)は単なる武器を超え、聖的存在であることを求められ、神が乗り移られる依代(よりしろ)として崇敬、礼拝の対象とされていました。これは日本刀(刀剣)の持つ「霊力」に加護を期待したからこそで、各種の美術工芸の粋を結集して制作されており、知れば知るほど、その魅力の奥深さに知的興味が尽きない世界です。

日本刀鑑賞ポイント②

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