日本刀コラム

時代劇での日本刀

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日本刀の知識が深まって歴史が好きになっていくと、映画やテレビの時代劇にも興味を持つのではないでしょうか。特に、刀の名士と呼ばれた人の話なら、「あの役者が演じるあの武士は、あの日本刀を持っていたはず」、「あの日本刀で殺陣(たて:闘争の演技)をするところがぜひ見たい」と興奮もひとしお。ここを見ると時代考証のツウになれる!?時代劇の注目ポイントをご紹介します。

日本刀をささげる

「時代劇」とは、主に明治維新以前の日本を舞台とした、テレビや映画の作品のこと。なかでも人気が高く、作品として多いのは「戦国時代」と「江戸時代」です。

武士が描かれれば、帯刀している刀も必然的に登場するので、刀剣ファンには必見です。そこで、時代劇でちょっと気になることを考証していきたいと思います。

考証1 平時と戦時で持ち方が違う?

小姓

小姓

例えば、将軍(大名)の後ろに座って日本刀を持っている若者のこと、ちょっと気になりませんか。あの若者は一体何者なのでしょうか。

正解は、将軍や大名の身辺で雑用を行なう「小姓」(こしょう)と言う役職の人。室町時代に将軍に近従した者を「小姓衆」と呼び、以後、役職となったそうです。

この小姓には、主に人質に取った大名の子弟が選ばれました。そのため、若年者が多かったのが特徴です。有名なのは、織田信長の小姓「森蘭丸」や「前田利家」。豊臣秀吉の小姓「石田三成」、上杉謙信の小姓「直江兼続」など。

正式には、将軍(大名)の左側(向かって右)で正座し、日本刀を持ちます。持ち方として平時には、刀のを上にして右手で持ち、刃を自分に向けます。さらに「鐺」(こじり:鞘の末端部分)に「袱紗」(ふくさ:貴重品を包む布)を敷いて垂直に立てるのです。重い刀を正しい姿勢で持ち続けるのは、とても重労働。

しかし戦時には全く変わります。その理由は、小姓は将軍に付いて戦に赴くので「鎧」を纏い「臑当」(すねあて)を付けるから。臑当を付けると膝を折ることができなくなり、正座ができなくなってしまいます。そのため、戦時に日本刀を持つときは、右膝を立てて左膝を折り、刀の柄を右手で持ち鞘を右肩に乗せるという、ちょっと偉そうな格好になるのです。

ところが、将軍が「刀を」と言ったときには、右膝をすっと立てて左膝を起こして、柄を右前に静止して差し出します。これは、将軍が刀の柄を握りやすくするため。従順に見えて、とても様になる姿。将軍が柄を握ったら鞘を引き下げ、抜刀するのです。

今後、室町時代以降の時代劇などをテレビや映画で見た際、小姓が映っていたら平時と戦時で、日本刀の持ち方に違いがあることをぜひ確認してみましょう。

座敷での日本刀

テレビや映画でよく見るシーンと言えば、他家を訪問する武士。何気ないシーンですが、よく見ていると日本刀を室内に持ち込む武士もいれば、持ち込まない武士もいました。

考証2 他家訪問時のマナーとは?

日本刀を置く

日本刀を置く

日本刀を室内に持ち込む武士の中にも、刀を指したまま座っている武士と、刀を置いている武士がいます。「作法」としては一体どちらが正しいのでしょうか?

正解は、刀を置いている武士です。他家を訪問した場合は、履物を脱ぐ前に必ず帯刀していた刀を抜き取り「下緒」(さげお:鞘に装着して用いる紐)をさばいて三つ折にし、右手に刀を持ってそのまま客間か案内される部屋へと進みます。刀を手持ちすることを、正式には「提刀」(さげとう)と言います。

そして着座するときには、刀を自分の右側、膝のあたりに鐔がくるように置くのです。刃を自分に向け「栗形」(くりかた:下緒を通す突起物)が下になるように置くのが礼儀。この行為により、敵対する意志がないことを示すことができるのです。

なお、刀を抜き取り左手に提げて持つのは、絶対にいけません。刀を左手に持てば「右手ですぐに抜いて斬るぞ」という意味になり、害心があって侵入したと思われて、取り押さえられる事態になりかねないのです。

さらに心得ておきたいのは、刀の鐔を自分の右膝の外側にぴったりと密着させて置くということ。まさかのときは、敵に襲われて後方から刀を奪われる危険がありますが、鐔を膝に密着させておくと、敵が自分の刀に触れたことがすぐに分かり、応戦できるのです。具体的には、右膝を浮かせて膝で鐔を上から強く抑えておきます。

こうすれば、たとえ敵が刀を奪い取ろうしても、柄と刀身は膝に押さえられているので、刀身は畳の上にそのまま残すことが可能。

この状態からならば、前後ろ左側、右側の敵を切ることもできるのです。この方法を「正木一刀流四方斬り」(まさきいっとうりゅうしほうぎり)と言います。テレビや映画で行なわれると様になる武術の型のひとつです。

なお、殿中(でんちゅう:将軍や大名の居所)を訪問する際は、法令により帯刀禁止のため、打刀は入口で預けなければなりません(殿中指[でんちゅうざし:1尺未満の短刀]は帯刀しても良い)。そのため殿中で、殿中指以外の刀を帯刀することは有り得ないのです。

あの有名な江戸城の松の廊下で「浅野内匠頭」(あさのたくみのかみ)が「吉良上野介」(きらこうずけのすけ)を斬り付けた「赤穂事件」(あこうじけん)を描くならば、凶器は「短刀」でなければ間違いです。

雨の中を歩く

何気ない「雨」のシーン。時代劇でもよく描かれますが、刀剣ファンならば要注目の場面です。現代ではタブーではないので見過ごされがちですが、武士ならば絶対にしないことが、たくさんあります。

考証3 雨の日に武士が行なったことは?

雨が降っても走らない

雨が降っても走らない

雨の日に、武士ならば絶対にしないこととは、何でしょうか。それは、雨の中を「小走り」すること。軒下に入って「雨宿り」をすること。他人の傘に入れてもらい「相合傘」をすること。これらは武士の教育にはない、してはいけないことになっていました。

たとえ突然雨が降ってきたとしても小走りはせず、普段と変わりないように悠々と雨に濡れて歩くのが鉄則。武士たる者、雨ごときにうろたえてはいけません。

ただし、刀の柄だけは雨に濡れないように守る必要がありました。その理由は、柄をぬらすと柄を握ったときに滑って感触が悪くなるから。すると、非常事態が起きたときに、思わぬアクシデントを招く場合があったのです。

また柄に鮫革が巻いてある場合、雨に濡れると水分を吸って、ふやけてやわらかくなってしまうから。鮫革は乾燥しているときは、とても硬くて切れませんが、濡れるとやわらかくなり刃物で切れてしまうのです。

したがって、雨が降ってきたら武士は持っている「手ぬぐい」で柄を巻くか「左袖の袂」で柄を覆いました。

それでは、すでに出掛けるときから雨が降っている場合は、どうしたのでしょうか。正解は「柄袋」を柄にかぶせて出掛けたのです。柄袋には、舶来の「羅紗地」(らしゃじ)や「鹿革黒うるし掛け」の高級な物から「呉絽」(ごろ)や麻製の粗末な物まで様々な物がありました。

これを踏まえてテレビや映画のシーンに注目すると、突然雨が降ったときに手ぬぐいで柄を巻いたり、袂で柄を覆ったりすることは正しいですが、はじめから雨が降っているシーンで戦に挑むという場面では、柄袋をしていなければいけないと分かります。

時代劇での日本刀

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