1980年代以降プロデビューの刀剣漫画家・刀剣漫画原作者

岸本斉史

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【NARUTO-ナルト-】で知られる岸本斉史(きしもとまさし)。忍者を主人公とする同作では、忍術と剣技とを組み合わせた独自の技が多数描かれます。それは外伝【NARUTO-ナルト-外伝 ~七代目火影と緋色の花つ月~】でも受け継がれます。

岸本斉史の刀剣漫画を避けた忍者漫画

岸本斉史は、鳥山明【DRAGON BALL】と大友克洋【AKIRA】をきっかけに少年漫画と青年漫画の両方を好む学生時代を過ごします。また、西尾鉄也が作画を担当した桐山光侍【NINKU-忍空-】のアニメ版を見て少年漫画と青年漫画の中間表現を知ったと言います。

岸本は、のちのインタビューで大学の美術学部在学中に侍漫画を描くことを考えるも、当時登場してきた和月伸宏の読み切り【るろうに-明治剣客浪漫譚-】と沙村広明の読み切り【無限の住人】を読んで打ちのめされ、違うジャンルを目指したと明かしています。

投稿作のアクション漫画【カラクリ】で第132回ホップ☆ステップ賞・佳作を受賞後、岸本初の読み切り作品で少年忍者を描いた【NARUTO-ナルト-】(1997年〔週刊少年ジャンプ増刊 赤マルジャンプ 1997 SUMMER〕掲載)が同名で連載化されます(1999~2014年〔週刊少年ジャンプ〕連載)。同作は連載4年目にテレビアニメ化。連載8年目には舞台化。第7巻がアメリカの文学賞クイル・アワードのグラフィックノベル部門を受賞。連載終了の翌年には、芸術選奨文部科学大臣・新人賞(メディア芸術部門)も受賞しました。

成長する忍術&剣技

NARUTO-ナルト-では、忍五大国(火の国・風の国・土の国・水の国・雷の国)のひとつ、火の国・木ノ葉隠れの里を舞台に2部構成で物語が繰り広げられます。第1部では主人公が里1番の忍びの称号・火影(ほかげ)を目指し、忍者学校(アカデミー)で下忍(見習い忍者)から中忍へと成長していく様と抜け忍との争いを描きました。

そして第1部から2年余りあとの第2部では、主人公の体の秘密にかかわる忍五大国を巻き込んだ争いが描かれます。

上忍・中忍・下忍という表現は村山知義が【忍びの者】で描き、白土三平が【カムイ伝】で描いた抜け忍といった表現は、忍びの者の映像化や白土の【ワタリ】、【カムイ外伝】の映像化で1960年代に一気に広まります。それらの表現はNARUTO-ナルト-でも継承されました。

NARUTO-ナルト-の大きな特徴は、忍術をコントロールすることのできるチャクラ(身体と精神のエネルギー)です。チャクラは鍛錬によって成長し、忍術だけでなく剣技も成長させます。けれどもその使用量と体力の消耗は比例しているため、無限ではないという弱点も持ち合わせています。

岸本斉史の刀剣キャラ① 風遁・螺旋手裏剣を編み出したナルト

ナンバー332「シカマルの戦い!!」【NARUTO-ナルト-】より

ナンバー332「シカマルの戦い!!」
【NARUTO-ナルト-】より

NARUTO-ナルト-の主人公・うずまきナルトは、チャクラを扱えるようになると忍術・螺旋丸(らせんがん)を身に付けます。

それは手のひらに圧縮させて作った球体のチャクラを直接敵にぶつける術です。この技を受けた相手は螺旋状の傷を負います。螺旋丸はナルトの父で早くに亡くなった4代目火影・波風ミナトが考案しました。

ナルトは成長していく過程で螺旋丸を独自に発展させ、風遁・螺旋手裏剣(ふうとん・らせんしゅりけん)を編み出します。それは丸いチャクラの周囲を手裏剣状の風で覆い、敵に打撃することで細胞レベルまで傷付ける大技です。

岸本の刀剣キャラ② ドスを用いるガマブン太を出現させる口寄せの術を使う自来也

ナルトの父親代わりは、自来也(ジライヤ)が担います。ナルトの父・ミナトの師匠であり、螺旋丸は自来也がナルトに教えました。

自来也は、大蛇丸(オロチマル)と綱手(ツナデ)との3人で「伝説の三忍」として登場します。3者の設定は美図垣笑顔(みずがきえがお)の江戸時代後期の戯作【児雷也豪傑譚】から採り入れられています。

自来也は、ナルトにも伝授する口寄せの術を得意とします。それは血で契約した生き物を呼び寄せる術で、自来也は契約した蝦蟇(がま)一族を呼び寄せます。多彩な蝦蟇が登場する中で巨大蝦蟇のガマブン太はドスを用います。

  • ナンバー124「永遠なる闘い…!!」【NARUTO-ナルト-】より

    ナンバー124「永遠なる闘い…!!」
    【NARUTO-ナルト-】より

  • ナンバー124「永遠なる闘い…!!」【NARUTO-ナルト-】より

    ナンバー124「永遠なる闘い…!!」
    【NARUTO-ナルト-】より

岸本の刀剣キャラ③ 草薙の剣を口内の蛇から吐き出す大蛇丸

ナンバー168「もう一度だけ」【NARUTO-ナルト-】より

ナンバー168「もう一度だけ」
【NARUTO-ナルト-】より

伝説の三忍のひとり・大蛇丸は、夢見ていた4代目火影には選ばれず、また人体実験を必要とする禁術への取り組みの発覚から里を追われ、抜け忍となります。

そして故郷・木ノ葉隠れの里を壊滅させる「木の葉崩」という行動を取っていきます。

大蛇丸は草薙の剣を用います。ときに口の中の蛇からこの剣を吐き出すことで戦います。

岸本の刀剣キャラ④ 千鳥+草薙の剣=千鳥刀を編み出したうちはサスケ

ナルトの忍者学校の同級生・うちはサスケは、ナルトと同じ忍者学校の師・はたけカカシから忍術・千鳥を伝授してもらいます。それは手のひらに集めたチャクラを用い、高速移動して敵を突く技です。名称は技の発動時に、千もの鳥の鳴き声のような音が聞こえることに由来します。

サスケはやがて、成長著しいナルトへの劣等感やさらなる力を望んだことから大蛇丸と組んで里を去り、抜け忍となります。大蛇丸のもとで草薙の剣を手に入れたサスケは、千鳥と草薙の剣とを合わせた剣技・千鳥刀を編み出します。それは刀の斬れ味が増すと同時に、斬った敵を痺れさせる効果をもたらします。

  • ナンバー411「八尾VSサスケ!!」【NARUTO-ナルト-】より

    ナンバー411「八尾VSサスケ!!」
    【NARUTO-ナルト-】より

  • ナンバー411「八尾VSサスケ!!」【NARUTO-ナルト-】より

    ナンバー411「八尾VSサスケ!!」
    【NARUTO-ナルト-】より

岸本の刀剣キャラ⑤ 巨大な鎌を手にしたカマタリを口寄せの術で呼び出すテマリ

ナンバー224「いったん退いて…!!」【NARUTO-ナルト-】より

ナンバー224「いったん退いて…!!」
【NARUTO-ナルト-】より

火の国・木ノ葉隠れの里以外でも、忍術&剣技にまつわる登場人物が描かれます。

風の国・砂隠れの里には4代目風影の子、テマリ、カンクロウ、我愛羅(ガアラ)の三姉弟がいます。3人は中忍試験でナルト達と出会います。

長女のテマリは巨大な扇子で風を操り出す忍法・カマイタチが得意技です。その風で周囲を切り刻みます。

さらにその扇子を用いて口寄せの術・斬り斬り舞で、隻眼の鎌鼬・カマタリを呼び出します。カマタリは巨大な鎌を手にしています。

岸本の刀剣キャラ⑥ 愛刀は意志を持つ鮫肌・干柿鬼鮫

水の国・霧隠れの里には、かつて忍刀七人衆がいました。彼らは里に伝わる水にちなんだ7本の忍刀、断刀・首斬り包丁、大刀・鮫肌、双刀・ヒラメカレイ、鈍刀・兜割、長刀・縫い針、爆刀・飛沫、雷刀・牙を使いこなします。

忍刀七人衆は国の混乱からほとんどが抜け忍となりました。抜け忍のひとり・干柿鬼鮫(ほしがききさめ)は大刀・鮫肌を受け継ぎました。それは人を斬るのではなく、チャクラを削り喰う意志も持つ刀です。

  • ナンバー470「キラービーVS鬼鮫!!」【NARUTO-ナルト-】より

    ナンバー470「キラービーVS鬼鮫!!」
    【NARUTO-ナルト-】より

  • ナンバー470「キラービーVS鬼鮫!!」【NARUTO-ナルト-】より

    ナンバー470「キラービーVS鬼鮫!!」
    【NARUTO-ナルト-】より

岸本の刀剣キャラ⑦ 超ビブラート雷遁刀が得意技・七刀流のキラービー

雷の国・雲隠れの里には、4代目雷影の弟分で夜月一族の忍・キラービーがいます。7本の小刀を使いこなします。キラービーは超ビブラート雷遁刀(らいとんとう)を用います。それは、忍術の雷遁をチャクラモードでまとわせて高周波振動を起こして刀の貫通力を上げる剣技です。

  • ナンバー411「八尾VSサスケ!!」【NARUTO -ナルト-】より

    ナンバー411「八尾VSサスケ!!」
    【NARUTO -ナルト-】より

  • ナンバー470「キラービーVS鬼鮫!!」【NARUTO-ナルト-】より

    ナンバー470「キラービーVS鬼鮫!!」
    【NARUTO-ナルト-】より

岸本の刀剣キャラ⑧ 手裏剣を体の一部を組み合わせて生み出すうちはシン

岸本はNARUTO-ナルト-連載終了の翌年、【NARUTO-ナルト-外伝 ~七代目火影と緋色の花つ月~】(2015年〔週刊少年ジャンプ〕掲載)を発表します。本編終了後の世界から数十年後が描かれ、ナルトの息子・ボルト、サスケの子として育てられるサラダが主人公です。

「外伝」では、ボルトらの敵としてうちはシンが登場します。「うちは」の名字を名乗るも、その正体は大蛇丸の実験体の1体でした。シンは体を自由に作り変えて手裏剣を生み出します。

  • ナンバー700+9「私が守る」【NARUTO-ナルト-外伝 ~七代目火影と緋色の花つ月~】より

    ナンバー700+9「私が守る」
    【NARUTO-ナルト-外伝 ~七代目火影と緋色の花つ月~】より

  • ナンバー700+9「私が守る」【NARUTO-ナルト-外伝 ~七代目火影と緋色の花つ月~】より

    ナンバー700+9「私が守る」
    【NARUTO-ナルト-外伝 ~七代目火影と緋色の花つ月~】より

その後、岸本が原作・監修を務め【BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS】(2016年~〔週刊少年ジャンプ〕連載中)が描かれます。作画を岸本のアシスタント出身の池本幹雄が担当。脚本を小太刀右京が手がけます。ボルトを主人公に次世代が火影を目指します。

現在も受け継がれる岸本が生み出したNARUTO-ナルト-の世界。そこで描かれる刀剣は忍術と剣技の組み合わせが基本となっています。

著者名:三宅顕人

岸本斉史

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