1980年代以降プロデビューの刀剣漫画家・刀剣漫画原作者

CLAMP

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【カードキャプターさくら】で知られる漫画集団CLAMP。初期作【聖伝-RG VEDA-】や【X】では、神剣が物語の重要な役割を担う漫画を描いています。その2作で描かれる神剣には女性の登場人物が大きくかかわっています。

CLAMPの初期刀剣漫画

女性4人組のCLAMPは、ファンだった高河ゆん(代表作【アーシアン】など)の同人漫画活動をきっかけに結成されました。高河もファンだった小説家・菊地秀行(代表作【魔界都市】シリーズなど)を愛読し、菊地の【魔王伝】をモチーフにした同人漫画【新宿純愛物語】が初の CLAMP名義作となります。

他に、車田正美ら少年漫画(【孔雀王】、【聖闘士星矢】、【キャプテン翼】など)、SF・伝奇アクション小説(【銀河英雄伝説】、【創竜伝】など)、テレビアニメ(【鎧伝サムライトルーパー】、【天空戦記シュラト】など)をモチーフにした同人漫画を発表しました。

そして、「剣と魔法」を描いた【DERAYD 界境天秤の月】(1989年、新紀元社発行)で商業単行本デビュー(のち初期メンバー・秋山たまよ単独名義に)。既発同人漫画をもとに阿修羅刀が登場する【聖伝-RG VEDA-】(1989~1996年〔月刊ウィングス〕連載)を商業漫画雑誌で初連載しました。同作は連載3年目に販売やレンタルを主としたオリジナル・ビデオ・アニメーション(OVA)化がなされ、CLAMPの最初の代表作となりました。

同時期には他に、曲亭(滝沢)馬琴【南総里見八犬伝】をモチーフにした【破軍星戦記】(1989~1990年〔COMIC BOX増刊号 KID’s〕連載)や、連載3年目にOVA化された陰陽師を主人公にした【東京BABYLON】(1990~1993年〔月刊ウィングス〕連載)なども描きます。商業デビュー直後、メンバーが抜け現在の4名となりました。

CLAMPの刀剣キャラ① 体内から取り出す修羅刀が愛刀・阿修羅

聖伝-RG VEDA-は古代インド神話の阿修羅と帝釈天の対立に、【水滸伝】や南総里見八犬伝の印をもとにした仲間探しが組み合わされました。

300年前、雷神・帝釈天が、天界を治める天帝と天界の守護闘神・阿修羅王を殺したことで対立が始まります。

阿修羅王の子・主人公の阿修羅(あしゅら)は、自身を含む仲間の六星と出会い、彼らを危険視する帝釈天とその配下の四天王に立ち向かっていきます。

阿修羅は、阿修羅王のみが代々受け継ぐ修羅刀(しゅらとう)が愛刀です。性別不明の阿修羅は自身の体内を鞘とし、手から自由に刀剣を取り出します。

修羅刀は武器や仲間の六星を探す役割を担う他に、その最大の役割は、阿修羅に秘められた慈悲のない破壊と殺戮の力を封じ込めることでした。

修羅刀の封印を解き、破壊神となった阿修羅は「我が望みは一切の破壊!」、「この天界を血と炎で 赤く染め上げることだ!!」と叫ぶと、帝釈天の住む善見城が一撃で破壊するほどの力を発揮しました。

「氷城炎獄篇」【聖伝-RG VEDA-】より

「氷城炎獄篇」
【聖伝-RG VEDA-】より

「双城炎雷篇Ⅱ」【聖伝-RG VEDA-】より

「双城炎雷篇Ⅱ」
【聖伝-RG VEDA-】より

CLAMPの刀剣キャラ②③ 修羅刀の守人の迦羅・修羅刀の封印を完全に解くカギ舎脂

阿修羅は修羅刀を、修羅刀の守人を務める迦羅(カーラ)から継承します。迦羅は阿修羅の母・舎脂(しゃし)の双子の姉で、人間の神女(みこ)だった姉妹はその能力から阿修羅族に仕えていました。

阿修羅は、迦羅から額に埋め込まれた印を渡されると、修羅刀の鍔に埋め込んで封印を解き、修羅刀を手に入れました。

やがて阿修羅は破壊神となるべく、母・舎脂のもとを訪れます。舎脂は阿修羅王との間に阿修羅をもうけたものの、阿修羅王より帝釈天が強いことを知ると乗り換え、阿修羅を捨てました。

阿修羅は自身を忌み嫌う舎脂のもとを訪れると、母の額に埋め込まれた印を抜き取り、修羅刀の鍔に埋め込み自身の封印を完全に解きました。

「六星群嵐篇Ⅱ」【聖伝-RG VEDA-】より

「六星群嵐篇Ⅱ」
【聖伝-RG VEDA-】より


「双城炎雷篇Ⅰ」【聖伝-RG VEDA-】より

「双城炎雷篇Ⅰ」
【聖伝-RG VEDA-】より

阿修羅を守る六星の物語

性別不明の阿修羅以外の六星は男性2神、女性3神です。

男性神で、天界最強の武神とされる北の武将神・夜叉王(やしゃおう)はもうひとりの主人公です。阿修羅刀と共鳴する夜摩刀(やまとう)が愛刀です。

夜叉王は、四天王の1神・北方将軍の毘沙門天の配下の夜叉一族の若き王だったものの、森の古木の中に眠っていた阿修羅の封印を解いたことで毘沙門天軍に一族を滅ぼされ、帝釈天と対立します。衝撃波で相手を斬り裂く夜摩天狼剣(やまてんろうけん)などの剣技で帝釈天派に立ち向かいます。

男性神のもう1神は、西の武将神の龍王(りゅうおう)です。四天王の1神・西方将軍の広目天の配下なものの自身が六星と知り、愛刀の大剣・龍牙刀(りゅうがとう)で帝釈天派に立ち向かいます。

女性神は、迦楼羅族の女王・迦楼羅王(かるらおう)、天帝の楽師の一族・蘇摩(そうま)、乾闥婆族の女王・乾闥婆王(けんだっぱおう)です。迦楼羅王は四天王の1神・南方将軍の増長天の配下で南の武将神なものの、妹を帝釈天に殺された復讐心から、蘇摩は命の恩人の乾闥婆王への想いから、それぞれ帝釈天派に立ち向かっていきます。迦楼羅王は鳥を操り、蘇摩は三日月型の小刀・双月の投げ技、双月葉を用います。

CLAMPの刀剣キャラ④ 琴の仕込み刀が愛刀・乾闥婆王

乾闥婆族の女王・乾闥婆王は、天界一の楽師です。けれどもその正体は四天王の1神、東方将軍の持国天でした。さらに東の武将神もかねた六星でもありました。六星にとって敵でもあり味方でもあるその立場が変化するように、乾闥婆王の琴は刀剣へと変化します。

「双城炎雷篇Ⅰ」【聖伝-RG VEDA-】より

「双城炎雷篇Ⅰ」
【聖伝-RG VEDA-】より

地球を救う継承者を巡る物語

CLAMP は聖伝-RG VEDA-と並行して【X】(1992 年~〔月刊ASUKA〕休載中)を連載します。現在の人類が暮らす地球を維持する「天の龍」と地球を人類以前の自然に戻そうとする「地の龍」とが争う物語です。

永井豪【デビルマン】以降連綿と続く、地球を舞台にした現人類と先住民との争いの系譜です。CLAMPはX連載の直前デビルマンをもとにした同人漫画も描いています。Xは、連載5年目にアニメ映画化、連載10年目にはテレビアニメ化、その翌年にはゲーム化されました。

天の龍を率いるのは主人公の高校生・司狼神威(しろうかむい)です。神威は、天の龍の 7人の能力者・7つの封印を従え、現人類維持のために結界を張り巡らせます。

対して地の龍を率いるのが、神威の幼馴染の高校生・桃生封真(ものうふうま)です。封真は神威が天の龍を選んだとき、地の龍として覚醒します。封真は神威と反対する運命、添え星としての役割を背負わされていました。封真は 7人の能力者・7つの御使いを従え、地球を守るために人類・文明を崩壊させるべく結界を破っていきます。

7人の能力者の由来となった北斗七星とその添え星・アルコルは、武論尊原作【北斗の拳】(原哲夫作画)やアニメ版・聖闘士星矢で登場し、Xに先行しています。

CLAMPの刀剣キャラ⑤⑥ 神剣を産み出す桃生紗鵺と真神時鼓

神威と封真は、地球を守る継承者の証としてそれぞれ神剣を手にします。2人が手にする2本存在する神剣は女性が産み出します。

1本目の神剣は、封真の母・紗鵺(さや)の体内から生まれます。紗鵺は神威の母・斗織(とおる)と高校の同級生でした。想いを寄せていた斗織の身替わりに、神剣を産む運命にあった刀隠神社の神主の桃生家に嫁ぎます。こうして紗鵺は神剣を産み、この世を去りました。

「七曜Ⅳ」【X】より

「七曜Ⅳ」
【X】より

2本目の神剣は、真神時鼓(まがみときこ)から産まれます。神威の通う高校の保険医で神威の叔母です。時鼓も神剣を産むとこの世を去りました。

「夢見5」【X】より

「夢見5」
【X】より

「七曜Ⅳ」【X】より

「七曜Ⅳ」
【X】より

CLAMPの刀剣キャラ⑦ 掌から刀を産み出す鬼咒嵐

多彩な能力を持つ天の龍の面々のうち、女性は刀剣を武器にします。そのひとり、伊勢神宮の隠し巫女・鬼咒嵐(きしゅうあらし)は、左の掌から剣を産み出します。

「嚆矢Ⅰ」【X】より

「嚆矢Ⅰ」
【X】より

CLAMPの刀剣キャラ⑧ 犬鬼を刀剣に変化させる猫衣譲刃

女子中学生の猫依護刃(ねこいゆずりは)も天の龍のひとりです。お犬さまを信仰する三峰神社の孫娘・護刃は、眷属神の犬鬼を従え、念によって犬鬼を刀剣に変化させます。

「七曜Ⅲ」【X】より

「七曜Ⅲ」
【X】より

その後のCLAMPの刀剣漫画

CLAMPは聖伝-RG VEDA-、Xと並行して、【魔法騎士レイアース】(1993~1995年〔なかよし〕連載)も発表します。剣道・フェンシング・弓道をそれぞれ得意とする現代を生きる3人の女子中学生が、東京から異世界に渡って刀剣を武器に活躍します。同作は、連載の直前に始まった竹内直子【コードネームはセーラー V】【美少女戦士セーラームーン】に続きました。魔法騎士レイアースは連載 2年目にテレビアニメ化されました。

続けて【魔法騎士レイアース2】(1995~1996年〔なかよし〕連載)と【カードキャプターさくら】(1996~2000年〔なかよし〕連載)を発表します。カードキャプターさくらは第32回星雲賞・コミック部門を受賞し、連載3年目にテレビアニメ化されました。同作では主要登場人物のひとり・李小狼(リシャオラン)が刀剣を武器に戦います。

菊地秀行、車田正美らの影響下で活動を始めたCLAMP。その活動初期には、女性が産み出す神剣という独自の世界観を生み出しました。

著者名:三宅顕人

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