戦前生まれの刀剣漫画家・刀剣漫画原作者

モンキー・パンチ

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【ルパン三世】で知られるモンキー・パンチ。アメリカの映画と漫画に大きな影響を受けたモンキー・パンチは青年漫画雑誌を拠点に、西洋VS東洋の構図を描き続けます。ルパン三世では石川五右ェ門を通して描き、沖田総司を主人公とした【幕末ヤンキー】ではヤンキーとの対立構図を描きます。

モンキー・パンチの初期刀剣漫画

モンキー・パンチは幼少期に手塚治虫に憧れ、模写をする日々を過ごします。上京後、東京の貸本漫画に携わり、さいとう・たかを風の画を指示されて描きました。同時期、神田の古本屋で見つけたアメリカン・コミックスの影響も受けます。手塚が率いる虫プロダクションのアシスタント募集の試験も受けています。

ムタ永二の名義で4コマ漫画家として本格的にデビューしたあとは、アメリカン・コミックスの人気漫画家モート・ドラッカーのような作風を描くようにと指示され、【荒野の無用心棒】(1965年〔漫画ストーリー〕連載)を発表しました。

モンキー・パンチに改名後、日本初の週刊青年劇画雑誌の創刊号から【ルパン三世】(1967-1969年〔週刊漫画アクション〕連載)を発表します。「ヌーベルコミック劇画」が掲げられた掲載雑誌では、漫画で文学が目指されました。ルパン三世は、モーリス・ルブラン【アルセーヌ・ルパン】シリーズとイアン・フレミング【007】シリーズに着想が得られています。ルパン三世の仲間となる神出鬼没の謎の女・峰不二子は007シリーズに登場するボンドガールとアレクサンドル・デュマ【三銃士】の謎の女性・ミレディから着想したとのちに明かされています。

ルパン三世発表の翌年、モンキー・パンチは読み切り【ウエスタン侍】(1968年〔週刊漫画アクション〕掲載)を描きます。青年剣士・二天座鬼土(にてんざきど)がアメリカ西部の町で活躍します。モンキー・パンチは、黒澤明【七人の侍】のハリウッドでのリメイク映画【荒野の七人】や、勝新太郎主演の映画【座頭市】シリーズ(原作・子母澤寛)が好きだと述べています。ウエスタン侍以後、西部劇と時代劇、西洋と東洋、拳銃と刀剣の混在が描かれていきます。

モンキー・パンチの刀剣キャラ① 忍者+新選組・石川五右ェ門

「五右ェ門登場」【ルパン三世】より

「五右ェ門登場」
【ルパン三世】より

ルパン三世連載2 年目の年、百々地老人の弟子として石川五右ェ門が登場します。アメリカの漫画イベントに参加した際、日本的なキャラクターを求められたことが創案のきっかけでした。

モンキー・パンチは五右ェ門像を創るにあたり、村山知義【忍びの者】の映画版で市川雷蔵(8 代目)が演じた石川五右衛門像と、司馬遼太郎【燃えよ剣】のテレビドラマ版で島田順司が演じた沖田総司像を掛け合わせたと述べています。

五右ェ門はルパンと次元大介に初めて出会ったとき、飛んでくる斧や分銅鎖を斬るその剣技を披露します。モンキー・パンチはこのとき、セリフを廃して縦のコマ割りと見開き1ページを活かし、五右ェ門の剣技のすごさを見せました。

こうした描写は石森(石ノ森)章太郎(代表作【サイボーグ009】など)が得意とした手法です。石森(石ノ森)は当時、女性スパイを主人公とした【009ノ1】をルパン三世と同じ掲載紙の創刊号から描いています。

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流星を愛刀とする五右ェ門

「ルパン一家勢揃い」【新ルパン三世】より

「ルパン一家勢揃い」
【新ルパン三世】より

ルパン三世連載終了の8年後、【新ルパン三世】(1977-1981年〔週刊漫画アクション〕連載)が描かれます。前作から5年後と設定されたこのシリーズで五右ェ門は、ルパン三世の幼馴染で拳銃を得意とした次元大介とのバトルで登場しました。

「ルパン一家勢揃い」【新ルパン三世】より

「ルパン一家勢揃い」
【新ルパン三世】より

「ルパン一家勢揃い」【新ルパン三世】より

「ルパン一家勢揃い」
【新ルパン三世】より

「ルパン一家勢揃い」【新ルパン三世】より

「ルパン一家勢揃い」
【新ルパン三世】より

新ルパン三世から五右ェ門の愛刀は、流星(りゅうせい)という名称になります。西部劇映画でモンキー・パンチが観た、レンガに突き刺さる隕石でできた伝説のナイフをヒントに考えられました。

斬鉄剣と流星

ルパン三世は連載終了の2年後、テレビアニメ化(第1シリーズ)がなされます(作画監督に大塚康生、演出に高畑勲と宮崎駿ら)。アニメ化に併せて【ルパン三世 新冒険】(1971-1972年〔週刊漫画アクション〕連載)が描かれました。

【新冒険】連載終了の5年後には、テレビアニメの第2シリーズが始まります。ルパン三世が着るジャケットが緑から赤へと変わった第2シリーズは、前シリーズの再放送による人気から制作されました。この2度目のアニメ化に併せて新ルパン三世(1977-1981年〔週刊漫画アクション〕連載)が描かれました。

五右ェ門の愛刀は、テレビアニメの第1シリーズで斬鉄剣(ざんてつけん)の名称で登場します。その後、漫画版ではそれまで名称のなかった五右ェ門の愛刀が流星と名付けられるも、アニメ版の斬鉄剣の方が広く知られています。

モンキー・パンチの刀剣キャラ② ヤンキーと争う沖田総司

西洋と東洋の混在は、その後も何度も描かれます。読み切り【ミスター侍】(1975年〔週刊漫画アクション増刊〕掲載)では、東洋の侍・武三死(むさし)とダルタニヤンとが銃士隊の座を巡って争います。同作はアレクサンドル・デュマ【三銃士】から着想を得ています。

新ルパン三世連載時には、沖田総司を主人公にした【幕末ヤンキー】(1977年〔週刊漫画アクション〕連載)を発表します。沖田総司と拳銃を武器にしたアメリカ人との、ときに真剣にときにドタバタなやりとりを描きました。真剣な場面では、銃口の死角と漫画ならではのコマ割りやページめくりを活かした緊迫した描き方がなされます。

PART1「沖田VSヤンキー」【幕末ヤンキー】より

PART1
「沖田VSヤンキー」
【幕末ヤンキー】より

PART1「沖田VSヤンキー」【幕末ヤンキー】より

PART1
「沖田VSヤンキー」
【幕末ヤンキー】より

PART5「名刀、虎徹でござる」【幕末ヤンキー】より

PART5
「名刀、虎徹でござる」
【幕末ヤンキー】より

ドタバタの場面では、新撰組に入り込んだアメリカ人が新撰組局長・近藤勇の愛刀を無理に鞘に納めようとハンマーでぶっ叩いて沖田が焦るやりとりなどを描いています。

PART5「名刀、虎徹でござる」【幕末ヤンキー】より

PART5
「名刀、虎徹でござる」
【幕末ヤンキー】より

モンキー・パンチは代表作となったルパン三世について、主人公の盗賊・ルパン三世と銭形警部との逮捕劇の関係をアメリカのアニメ映画【トムとジェリー】を模したと述べ、その影響は他の自作でも随所に見られます。

モンキー・パンチはその後、手塚治虫と永井豪をアメリカの漫画イベントに同席してもらい、日本とアメリカの漫画家の交流を生み出す取り組みも行ないました。【忠臣蔵】の四十七士に外国人を入れる漫画も構想したと述べています。そんなモンキー・パンチの刀剣漫画には、西洋対東洋の図式が根底に流れ続けています。

著者名:三宅顕人

モンキー・パンチ

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【巨人の星】、【あしたのジョー】、【タイガーマスク】などで知られる漫画原作者・梶原一騎(かじわらいっき)。梶原は後発の劇画原作者・小池一夫が台頭してきた時期、小池の主戦場の時代劇漫画に挑戦しました。虚実混交を得意とする梶原は、青年向けでは宮本武蔵を取り上げた【斬殺者】を、少年向けでは男谷信友と榊原健吉を取り上げた【剣は道なり】を発表します。

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【銭ゲバ】、【アシュラ】など少年漫画で残酷描写の中に無情を描いた作風で知られるジョージ秋山。少年漫画を離れると青年漫画雑誌で連載44年に及んだ【浮浪雲】など、池波正太郎人気以降、時代劇漫画を数多く描いていきます。青年向けでは逆に残酷描写は抑えられるも無情さは変わらず描かれます。それは青年向けの時代劇漫画【女形気三郎】でも変わりません。

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小池一夫

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【子連れ狼】(小島剛夕作画)で知られる劇画原作者・小池一夫(こいけかずお)。歴史・時代小説家の山手樹一郎の弟子となり、山本周五郎にも教えを乞いました。その後さいとう・たかをのもとで漫画原作者となり、歴史・時代小説の魅力を漫画の世界に本格的にもたらしました。その影響は、子連れ狼だけでなく【修羅雪姫】(上村一夫作画)など、海外の有名映画にまで及んでいます。

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平田弘史

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【薩摩義士伝】で知られる平田弘史(ひらたひろし)。劇画を普及させたさいとう・たかをと同時期に貸本漫画で活動を始め、【名刀流転】などを描きます。平田は寡作になるほど時代考証や実証研究に徹底的にこだわります。【首代引受人】という独自の時代劇漫画も数行の歴史資料をもとに考え出します。

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石ノ森章太郎

石ノ森章太郎
【サイボーグ009】や【仮面ライダー】シリーズなどで知られる石ノ森章太郎(いしのもりしょうたろう)。それら代表作と同時期、青年漫画雑誌創刊ラッシュの中で少年漫画版を描き直した時代劇漫画【佐武と市捕物控】、【仮面ライダー】の時代劇版が目指された【変身忍者嵐】を描いています。石ノ森の連載に先駆けては、忍者や勝新太郎主演の映画【座頭市】シリーズがブームとなっていました。

石ノ森章太郎

さいとう・たかを

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【ゴルゴ13】で知られるさいとう・たかを。黒澤明の時代劇映画に夢中になる映画青年を経て漫画家に。手塚治虫に対抗して「劇画」という言葉を広めたさいとうは、【無用ノ介】で劇画の手法を少年漫画にもたらしました。続いて描いた週刊誌における日本初の劇画連載となった【影狩り】でさらに劇画を広めました。

さいとう・たかを

白土三平

白土三平
【忍者武芸帳 影丸伝】、【カムイ伝】などで知られる白土三平(しらとさんぺい)。それら2作や【カムイ外伝】では忍者を軸に描きます。カムイ伝を描くために自費で青年漫画雑誌を創刊した白土は、当時の学生運動の気運と相まって、それまでの子供向けだった漫画的表現にリアリズムをもたらします。剣技の描写も変化しました。

白土三平

横山光輝

横山光輝
【鉄人28号】、【バビル2世】などで知られる横山光輝(よこやまみつてる)。白土三平、山田風太郎らの人気で生じた忍者ブームを【伊賀の影丸】、【仮面の忍者 赤影】などで上手に取り入れました。青年漫画雑誌興隆の中で時代劇漫画が盛り上がった時期には、【闇の土鬼】で史実を押さえた手法に歩み出し、青年漫画的な骨太の少年漫画を生み出します。

横山光輝

小島剛夕

小島剛夕
白土三平【カムイ伝】、小池一夫原作【子連れ狼】の作画でも知られる小島剛夕(こじまごうせき)。抜け忍を描いた自作【土忍記】とその連作【孤剣の狼】を、青年漫画雑誌の創刊ラッシュの中で描きます。その後、柴田錬三郎の時代小説の漫画化や原作つきで数多くの作画を手がけていく小島は、青年漫画の興隆とともに時代劇漫画を大きく発展させます。

小島剛夕