画期的展示で一門の多彩な活動を照射

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アーカイブ ※この記事は2021年1月15日に発行されたものです。

大阪歴史博物館において十月三十一日から十二月十四日まで、特別展「埋忠〈UMETADA〉桃山刀剣界の雄」が開催されました。

埋忠は桃山時代から江戸時代にかけて活躍した一門で、刀剣を鍛え、刀身彫刻を施し、鐔をも製作しました。実質的な流祖と呼ばれる埋忠明寿は、刀剣・刀身彫刻・鐔に長じ、その作品は刀剣界で高く評価されてきました。

埋忠一門は刀剣や鐔の製作にとどまらず、古い名刀の磨上げや折返銘・額銘などの仕立て直し、本阿弥家によって鑑定された極めや所持者の名を刻した金象嵌銘の嵌入作業、あるいは鎺などの金具の製作や名刀をめぐる幅広い彫金加工、名刀の記録作業などに従事していました。これらの作業は明寿を含む埋忠工房全体で行われていたと考えられています。

今回の展覧会は、従来、高く評価されている埋忠一門の刀剣・刀装具が紹介されると同時に、埋忠一門が手がけた仕立て直しや金具製作、名刀の記録といった活動にも注目し、当時の時代背景からその実像を探るものです。

埋忠一門のこれほど大規模な展示は、昭和四十二年に東京国立博物館において故小笠原信夫先生が特集陳列を企画されて以来、半世紀ぶりとなります。国宝七点、重要文化財一五点、重要美術品六点を含む、名刀・鐔・刀剣関連文書など約九〇点が展示され、桃山時代の京都で新しくみずみずしい造形を刀剣・刀装具にもたらした、埋忠一門の多彩な活動を振り返ることで、埋忠一門が現在に残した影響の大きさがあらためて評価されています。

埋忠一門の作品では、明寿の刀剣が重要文化財二振、重要美術品二振を含む十余振、刀装具では重要美術品一点を含む五点が展示され、ほかに一門が製作した刀剣や刀装具が数多く展示されました。

埋忠一門の刀剣の作品には、ほとんどのものに濃密な龍図や不動明王図の彫物が施されており、それが表裏に及びます。いくつかの作品は独立の展示ケースで、表裏を観察することが可能となっていました。ライティングも地鉄刃文と同時に、彫物が見やすいように調節されているようでした。刀装具も独立ケースや裏面に鏡が設置されて、両面を観察することができる画期的なものとなっていました。

埋忠刀譜に所載するものは、相州物の正宗貞宗江義弘則重・志津らをはじめとする享保名物を含む数多くの名刀が、その写しとともに展示されていました。

また埋忠一門により製作された鎺は、刀とともに、あるいは数個をまとめて独立ケースに展示されていました。埋忠鎺の薄手な肉置き、金色、縦横の鑢目、形状の柔らかさといった特徴や、台座、底部の針銘、棟内側に穿たれた丸鏨まで鏡や拡大鏡の設置が駆使されて、本来であれば手に取らなければ確認することができないような箇所までも観察することが可能なように、さまざまな工夫が施された展示方法となっており、埋忠作品を余すことなく見せるという担当の方の熱意が感じられました。

大阪会場限定で展示されたのは下記の十一振で、中には昭和期に展示されて以来の披露となる名刀もあって、話題となっていました。

太刀銘国行(来)(号明石国行)(国宝)
太刀 銘 国綱
太刀 銘 光忠(重美)
太刀 銘 備州長船住景光(重文)
太刀 銘 国行(当麻)(国宝)
太刀 銘 大和則長(重美)
刀 磨上銘 加祢ミツ/浮田左京介すり上つねにこれを
刀 銘 和泉守兼定作/大永二年二月吉日源親忠
太刀 銘 日州古屋之住国広山伏之時作之天正十二年彼岸/太刀 主日向国住飯田新七良藤原祐安(号山伏国広)(重文)
刀 銘 越後守藤原国儔
刀 銘 阿波守藤原在吉

※なお、特別展「埋忠〈UMETADA〉桃山刀剣界の雄」は会場を東京・両国の刀剣博物館に移し、二月二十一日まで開催されています。

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