春日大社に新たな国宝指定

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アーカイブ ※この記事は2016年5月15日に発行されたものです。

文化審議会(宮田亮平会長)は去る三月十一日、四件の美術工芸品を国宝に、四十六件を重要文化財に指定することにつき馳浩文部科学相に答申した。官報告示を経て正式指定される。

国宝のうち一件が、甲冑類では十九件目となる奈良県・春日大社所蔵の黒韋威胴丸(兜・大袖付)である。俗称として「二号胴丸」と呼ばれている。

春日大社には楠正成のゆかりとされる胴丸が三体あり、一から三の番号を呼称としており、一号は既に国宝に指定済みの希有な矢筈型の二山一体の小札形状の遺物。近世の当世具足群にも類似した札形状を見るが、関連性はないと思われている。三号は不幸にも火災に遭い、金属部分のみを残す残欠。

この二号は昭和二年に旧国宝に指定され、二十五年に重要文化財になっていたが、この度、国宝への指定となった。

胴丸としては、愛媛県大三島、大山祇神社にある大鎧との折衷形状の赤絲威胴丸鎧(源義経奉納とされ[八艘飛び]の異名を持つ)を加えると四体目の新国宝指定となるが、そのうちの一体である広島県・厳島神社の黒韋威胴丸と比べれば、小札の頭部を漆で盛り上げ、整然とした美観に重点を置くことなどを筆頭に、大袖の冠の板が強い湾曲を持って外側に張り出すなどの特徴から、室町期のものと鑑みるのが自然で、挟角に閉じた鍬形、その社伝等からか鎌倉時代末期とされていた昭和時代の見解からは、甲冑をよく知る者から見れば喜ばしい訂正がなされている。

また、手元の資料に乏しいのだが、最新の写真では大社内で発見されたものか、または細部の修繕と同時に再現されたものか、両肩の杏葉が付け加えられた様子も見える。

声を大にすべきは、一号胴丸・三号胴丸同様、楠正成の社伝を否定するとか封じ込める必要は全くなく、大社を訪れる参拝者の一人ひとりの心の中に花と咲かせるまた別なストーリーは色あせてはならない。

ともあれ、室町期の甲冑類は神社仏閣の蔵品、個人の所蔵を問わず数多く確認でき、全体底上げ的にその価値を見直されることも考えられ、この国宝指定は素晴らしいニュースであり大いに歓迎したい。

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