歴女に人気の城下町

岐阜県の城下町・岩村(恵那市)

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「岩村城」(いわむらじょう)は、岐阜県恵那市岩村町にある山城で、海抜717mに位置しており、諸藩の居城のなかでは、もっとも高い場所にあったと言われているお城です。1873年(明治6年)に解体され、現在は井戸や石垣が残されています。
高い場所にあったお城であること、また周囲には霧が多く発生することなどから岩村城は「東洋のマチュピチュ」とも呼ばれてきました。その大きさや広さに違いはありますが、山裾からは遺構が確認できないことや、解明されていない多くの謎があることも、岩村とマチュピチュの共通項。山の上にある秘密めいた城下町について語る場合、歴女なら真っ先に岩村城の悲劇を挙げるでしょう。
数多の歴史本にも繰り返し書かれてきた悲劇について、人は色々な想像を巡らし、自分のなかでそれをドラマのように描き、我がことのようにして悲劇をなぞります。ここでは、その悲劇とそれが起こった原因を今一度探りながら、山城と城下町が辿った運命を旅します。

別名・霧ヶ城、またの名を東洋のマチュピチュ

岩村城

岩村城

時は鎌倉時代に遡ります。「源頼朝」(みなもとのよりとも)の家臣「加藤景廉」(かとうかげかど)の長男「遠山景朝」(とおやまかげとも)が「岩村城」(いわむらじょう)を築きました。

もっとも、このときのお城は平坦な場所に築かれた砦のような存在であり、現在の岩村城とは違っていたと言われています。

鎌倉時代の終わりの書物に「美濃霧城」との記述が見つかっているため、「霧城」と呼ばれるお城が実在したことは確かですが、それが現在の岩村城か否かは解明されていません。

霧が多く発生するのは、今も同じ。朝もやの時間帯は、特に神秘的な風景となります。霧に包まれる岩村城の姿は、城下町の人々にとっても、そして旅人にとっても、もしかするとこのお城を狙う武将達にとっても、神秘そのものだったのかもしれません。そんな岩村の城下町は、歴女ならずとも、神秘的で魅力的な町だと言えます。

岩村城が多くの戦国武将に狙われた理由

戦国時代まで、岩村城の城主は「遠山氏」(とおやまし)がつとめ、遠山氏最後の城主は「遠山景任」(とおやまかげとう)でした。1570年(元亀元年)には、甲斐国(かいのくに:現在の山梨県)の「武田氏」(たけだし)の家臣「秋山虎繁」(あきやまとらしげ)が東濃(とうのう:現在の岐阜県南東部)に侵攻。徳川の本拠地である三河を攻めようとして進軍している途中でのことでした。

この背景には、非常に複雑な関係があります。「徳川家」(とくがわけ)からの人質として、「松平源三郎」(まつだいらげんざぶろう)が「武田家」(たけだけ)に送られていましたが、松平源三郎は、2年後に甲州(こうしゅう)を脱出。松平源三郎は、前述の武田家家臣である秋山虎繁の預かりの身だったため、秋山虎繁は武田軍として徳川家の領地である奥三河を攻めようとしたのです。岩村は、言わば戦に向かうための通り道でした。

遠山氏は、かつて武田氏の家臣でしたが、当時は「織田信長」(おだのぶなが)の叔母が岩村城主の妻となっていたため、織田方に与していました。さらに徳川方である奥三河の家臣が、武田方と内通。岩村には、複雑な臣従関係が渦巻いていたのです。

戦の結果は遠山氏の惨敗。ところが、遠山氏は「岐阜城」(ぎふじょう)にいる織田信長に、武田軍が美濃を攻めようとしていることを伝えていました。これを聞いた織田信長は、「明智光秀」(あけちみつひで)をはじめとした軍勢を送り、武田軍と交戦。3日間に及ぶ戦の末、武田軍は甲斐国に撤退しました。

岩村が戦国武将に狙われたのは、「織田氏」(おだし)・「徳川氏」(とくがわし)・武田氏の抗争が激しくなった時代。その紛争に巻き込まれる地理的な環境と、人間関係が構築されていたからだったとも言えます。

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女城主・おつやの方の悲劇

おつやの方

おつやの方

岩村城の女城主として、今もなお岩村の人々に愛されているのは、通称「おつやの方」と呼ばれた女性です。

織田信長の祖父「織田信定」(おだのぶさだ)の娘。

つまり、織田信長の叔母にあたりますが、叔母とは言っても織田信長よりも年下であったという説もあります。

おつやの方は、岩村城主であった遠山景任に嫁ぎましたが、夫が病死してしまいます。夫婦は子宝に恵まれていなかったため、おつやの方の甥である織田信長は、自分の五男「御坊丸」(ごぼうまる)を養子として送り込みました。御坊丸は、城主になるにはまだ幼かったため、おつやの方が代わりに城主となって岩村を治めることとなります。

夫を早くに亡くしたこと、縁戚の子供を引き取って岩村を治めなくてはならなかったこと。これが、おつやの方にとっての悲劇の始まりでした。

そののち、秋山虎繁が再び岩村を攻めてきます。甲斐国の「武田信玄」(たけだしんげん)の命で、秋山虎繁を三河に向かわせ、武田信玄自身は遠江国(とおとうみのくに:現在の静岡県西部)に出陣。武力で「徳川家康」(とくがわいえやす)の領土を奪うことが目的でした。おつやの方と岩村は、2度までも同人物に攻められたのです。

おつやの方は、夫の死からわずか2ヵ月で女城主として家臣をまとめ、攻めてくる秋山虎繁から岩村を守らなければなりませんでした。戦いを生業としていた武将の家に生まれた女性であったとしても、過酷な運命だと感じる歴女も少なくないでしょう。

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婚姻を条件とした降伏劇

1572年(元亀3年)秋、秋山虎繁の軍勢が岩村城を取り囲みます。しかし、山城である岩村城は簡単には落ちません。領民達と共に、おつやの方は籠城し、戦はこう着状態に。このままでは、どちらも疲弊してしまうと考えた秋山虎繁は、おつやの方にある提案をします。

それは女性ならば受け入れがたい内容でした。和睦のために、秋山虎繁とおつやの方が結婚する案であり、すなわち御坊丸を養子にし、岩村城の城主は秋山虎繁になるということです。

領民と御坊丸を守るためとは言え、苦渋の決断であったことは想像に難くないのですが、それは甥である織田信長を裏切る行為でもあります。織田信長とおつやの方の関係性については定かではありませんが、この決断がこのあとに起きる、さらなる悲劇の幕開けとなったのです。

織田信長による報復

織田信長

織田信長

そののち、養子になるはずだった御坊丸は、人質として甲斐国へと送られてしまいました。

これに怒った織田信長は、岩村城に大軍で攻め入ります。

その際、叔母であるおつやの方がいるお城を焼き払うのは忍びないと言って助命を約束し、岩村城を手中に収めます。

ところがこれは織田信長の方便でした。

織田信長は、助けて貰ったことのお礼を言うために面会に訪れた秋山虎繁とおつやの方をその場で捕らえ、お城に控えていた兵を皆殺しにします。捕らえられた秋山虎繁夫妻は、長良川において、逆磔(さかさはりつけ)で処刑されました。

戦国武将の家に生まれ、何度もの政略結婚、さらには究極の決断を迫られ、最後は惨殺される悲劇。おつやの方の人生に同情するのは、歴女だけではないでしょう。

岩村の魅力

岐阜県には岐阜城をはじめとして、郡上八幡や飛騨高山など魅力的な観光地に注目が集まりますが、恵那市岩村町も他には負けない山城や、美しい景色、おいしい食べ物と見逃せない場所がたくさんあります。

また平成30年には、NHK連続テレビ小説のロケ地となり、さらに観光の魅力が増えました。ここでは、岩村の魅力的なスポットをご紹介します。

江戸時代の面影を残す城下町

岩村の町並み

岩村の町並み

重要伝統的建造物群保存地区に選定されている「岩村町本通り」(いわむらちょうほんどおり)は、江戸時代の城下町のイメージをそのままに残しています。

町家がずらりと建ち並び、その軒の先に目をやれば、陰影のある奥行きや土間。間口が狭い独特の建築は、江戸時代の姿そのままです。

平成30年度の前期NHK連続テレビ小説「半分、青い。」(はんぶん、あおい。)のロケが、西町商店街で行なわれたことでも有名になり、歴女をはじめ、多くの観光客が訪れています。

女性の名前が染め抜かれた暖簾

岩村町本通りに面した家々では、その多くが商売を営んでおり、軒先にはその家の奥さんや娘さんの名前を染め抜いた暖簾(のれん)がかかっているのです。屋号が染め抜かれている暖簾はどこの町にもありますが、岩村では必ず女性の名前。これは女城主の悲劇を今も忘れないために、そして女城主への思いを込めて、岩村の家々の約束事になっているようです。

土佐屋

「土佐屋」(とさや)は、染物商を営んでいた家でした。約260年前のことです。1996年(平成8年)から土佐屋の建物の復元工事が行なわれ、1999年(平成11年)には「工芸の館」(こうげいのやかた)としてオープン。昔ながらの藍染の工程が分かる染め工場や、土佐屋の土蔵の展示、庭にあった「天正疎水」(てんしょうそすい)など、江戸時代の商家を隅々まで見学でき、恵那市の指定文化財に指定されています。

岩村醸造株式会社

名酒が並ぶ直売スペース

名酒が並ぶ直売スペース

「岩村醸造株式会社」(いわむらじょうぞうかぶしきがいしゃ)は、1787年(天明7年)に創業したと伝えられている酒蔵です。

「岩村藩」(いわむらはん)の運送業を生業としていた家が、副業で酒蔵を運営。

明治時代になり、岩村藩が消滅したあとは、副業であった酒造業がメインとなり、味噌や醤油、みりん、焼酎なども醸造するようになりました。

昭和に入り、戦後には日本酒の専業メーカーとして、現在まで岩村の代名詞とも言えるまでに成長しています。

主力商品は、その名も「女城主」(おんなじょうしゅ)。岩村の歴史をそのまま表したようなお酒です。現在も、400年前に掘られた木曽川水系の天然水を仕込み水に使い、地元の酒造好適米「ひだほまれ」や兵庫県産「山田錦」(やまだにしき)を使って日本酒を作っています。

木村邸

木村邸

木村邸

「木村邸」(きむらてい)は、江戸時代中期から末期に栄えた問屋で、岩村藩をあらゆる面から支えた家として、岩村藩から特別な存在として大切にされてきた遺構です。

例えば、岩村藩の財政が困窮したときには、御用金を調達して助け、岩村藩主への忠誠心を誓いました。

岩村藩主も、その恩義に報いる気持ちがあり、木村邸を頻繁に訪れていたのです。藩主が出入りするための玄関も設けられ、この他、表通りに面した武者窓や上段の間、茶室など、江戸時代を代表する町家としての様式を備えています。これこそ城下町の風景と言えるでしょう。

ちなみに当時、藩主が一般領民の家を訪ねることは滅多にないことで、藩主が頻繁に訪れていた記録は全国的に見ても珍しい例。歴女にとっても、興味深い建造物だと言えます。

松浦軒本店

江戸時代の岩村藩御殿医である「神谷雲澤」(かみやうんたく)は、蘭学を学ぶために長崎に出かけていました。神谷雲澤は蘭学だけでなく、名物であるカステーラにも夢中になり、製法を勉強したと言われています。

そして、長崎から岩村に戻ったあと、当時から菓子店を営んでいた「松浦軒本店」(まつうらけんほんてん)でカステーラの作り方を伝授しました。江戸時代から大正時代までは、カステーラは銅板の小さな釜に入れて、1本ずつ炭火で焼き上げて作られていたと言われています。

当時のレシピを守り、今でも江戸時代と同じカステーラを製造販売している松浦軒本店は城下町の中心にあり、今でも多くの観光客がその懐かしい味を求めて並んでいるます。甘い物好きの歴女は、必訪スポットだと言えます。

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